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第一章 總論

第一節󠄁 原價計算の企業的性格

 原價計算は十九世紀末葉から二十世紀初頭に懸けて工業界に勃興し始めた。而して工業家が、その製品に就て原價計算をなす動機は素より營利意識であつた。卽ち利潤追󠄁求の觀念から出發したことは否めないのである。當時は云ふ迄もなく歐米に於ては自由主義經濟時代が漸く華かさを加へつつあり、工業は小規模生產から大規模生產へと、また勞働生產から機械生產へと進󠄁展しつつある時代であつた。斯やうにして生產組織の變化󠄁につれて、自由競爭を根幹とする資󠄁本主義、個人主義の經濟社會は適󠄁者󠄁生存の原理に從つて競爭に打勝󠄁つものが產業界に殘るのみとなつた。云ふ迄もなく飽󠄁くなき競爭は必然的に利潤の低下を導󠄁く。而してこの利潤限界の低減に對應して、それを食ひ

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