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五 祓除と貨幣の關係 一七六


さて祓具と云ふ語の外にニギテと云ふ語とミテグラと云ふ語とあります。二者共に天照太神天石屋戶に隱れ玉へる條に出でゝ居ります。即ち古事記に『於下枝取垂シラニギテ靑丹寸手而。此種種物者。布刀玉命フトミテグラ登取持而』とあり。書紀には『下枝懸靑和幣〈和幣。此云尼抧底〉白和幣。相與致其祈禱焉』とあるのであります。本居氏說に〈記傳八卷四十三葉〉ミテグラは何物にまれ神に獻る物の總名なり、諸の祝詞などを見て知るべし。名の義はまづ古へ神に獻る物及人に贈りなどする物を、凡てクラと云りと見ゆ〈後世の語に人に物を與るをクルと云も是より出たることなるべし〉とあります。彼の素盞嗚尊が科せられたるチクラオキドの『クラ』も其意なるべしとも論じてあります。而て『凡てミテグラを取持ことは此時の例の隨に後の御代々々まで忌部氏の職業なり』〈四十四葉〉とありまして、古語拾遺に廣成は此事を詳く記して忌部家の古の盛況を追懷してあります。此によりて想像を旋して見ますに、忌部氏は始祖太玉命が御幣を執持つ役を爲して以來、代々祓具及一般の獻貢物を司る役目を世襲して居つたことかと思ひます。其獻貢は始めは專ら祓除即ち贖罪の Opfer たる祓具(祓柱)に就き、後には一般に神へ獻る凡ての御幣を收納するので、即ち一の Kirchenfiskus を司つて居たものが、後に御幣は神に獻るのみでなく、皇室に獻るもの即ちグリム氏の第三に揭げたる〉 abgabe 調『みつぎ』の事