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五 祓除と貨幣の關係 一七八

たもの又は織らざる纖維其儘のものと麻との二品は私を以て見ますれば御幣ミテグラとして常に用ゐられたるが爲め、又後には貨幣としても用ゐられたのではあるまいかとの想像を逞しくして見たい氣が致すのであります。『ハラヘツモノ』として多く用ゐられた此の『ニギテ』は又 Zahlungsmittel 初めは皇室及其他所領の君主への獻貢に、後には一般に債務決濟(解除ハラヒ)に充て用ゐられたのではありますまいか。『カヂ』は後世布に織ること已み專ら紙を作るに用ゐられましたが、紙錢と云ふものがあつて、神へ獻ける用に供せられたことは其昔木綿ユフが和幣として、而して又仕拂要具として用ゐられたことゝ何等かの關係はないでありませうか。

參考 箋注和名抄曰。紙錢。加美勢邇。勢邇賀太。今伊勢神宮河原獻用錢切幣。佛家祭諸天亦用紙錢。
猶古史傳十の一神衣祭、神衣部に就ての記述を參考す可きか。
黑川眞賴氏 日本織物說云。『從來の草皮を用ゐて紡織するを常とせり、其徵をいはゞ古語拾遺に云々。是れ・・・・神前に供する所のものは麻布カヂ布なるを、是に至り更に其紡織並に精美を盡して獻進せしを見る可し』云々 國書刊行會本第三、三百八十八頁

以上申述ぶる所は極めて杜撰にして又甚だ獨斷的な考でありまして、專門歷史家から見られましたらば、唯一笑に附するの外値なきことであらうと存じます。