Page:死霊解脱物語聞書.pdf/49

このページは校正済みです

だうす。ときに方丈はうぢやうふでとり給ひ。妙林めうりんをあらため。 理屋枩貞をくせうていとかいみやうしせうくやうをとげられつゐ に。羽生村はにふむら法蔵寺ほうざうじの庭にたてて。前代未聞ぜんだいみもんのしやう ぜきのこす。ながのしるし是なり。奇哉きなるかな此物かたり あるひは現在げんざいのゐんくわをあらはし。あるひは當來とうらい苦樂くらくをしらせ。あるいひは誦經じゆきやう念佛の利益りやくを あらそひ。あるひは四恩報謝しおんほうしや分斉ぶんざいをたゞす。かくの ごとく段〻だんの事有て。つい智恵ちゑ慈悲じひ方便はうべん。三じゆ 菩提ほたいもんに入り。能所のうじよ相應さうわうして。機法きほうがう全躰ぜんたい 立地たちどころ生死しやうじ囚獄しうこく出離しゆつりし。直に涅槃ねはん浄刹じやうせつ往詣わうげいする事。まつたく是。他力難思善巧たりきなんじのぜんぎやう本願ほんぐわん ぐうの方便也。しかりといへとも願力ぐわんりき不思現證げんしやうあらは す事。かつ恐は導師だうし决定心けつぢやうしん發得ほつとくによるものなる をや。しからば此决定けつぢやう信心しんの人。いづれをかもとめんと ならば。単直仰信たんじきこうしん称名念佛しやうみやうねんぶつ行者ぎやうじやこれ其人也 此人におゐていか成とくあるぞやとならば。随順佛願ずいじゆんぶつぐわんずい 順佛教じゆんぶつけう。随順佛意ぶつい。是其とく也。かくのごとく心得こゝろうる時 は道俗貴賎たうそくきせん老若男女らうにやくなんによによらす。たゞ一向いつかうに信心称名 せば。現當げんとう利益りやく是よりあらはれんか

右此かさねが怨霊おんれう得脱とくだつ物語ものかたり世間せけん流布るふして人の口に在といへとも前後次第こゝろことば色〻にみだれ其事慥かならす爰に〔某申〕かの死灵しれう