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是ぞ因果（いんぐわ）をあらはす證拠（せうこ）よと見る時は。与右衛門ごときのあく人も。一念其心を改（あらた）め。善心におもむかば。一念発（いちねんほつ）起（き）菩提心（ぼだいしん）勝於造立百千塔（せうおざうりうひやくせんとう）豈是（あにこれ）天下（てんか）の重寶（てうほう）ならずや。しからば国主（こくしゆ）の大報恩（だいほうおん）。是（これ）に過（すぎ）たる事あらし。さはいへどかゝる廣大無邊（くわうだいむへん）なる。佛法（ぶつほう）の深意（じんい）は。各〻（おの〳〵）こときの小智（せうち）小見（せうけん）にては。聞（きひ）ても中〻其理（ことはり）を信（しん）する事あたわじさあらばたち帰て當前（たうぜん）の利（り）を見よ。すでに此かさね親（おや）のゆづりを得て。持（もち）來る田畑（でんばく）七石目（こくめ）あり。此たはたは村中一番（ばん）の上田なりし所に。与右衛門一念のあく心によつて。われを害（がい）せし故。先度も云ことく廿六年以來（このかた）不作（さく）して。いま朝夕を送（おく）るにまづしく。餘寒（よかん）甚しき春（はる）の空に。只一人なるむすめのわづらふにすら。くされかたびら一重（ゑ）のていたらく。是見たまへ一念（ねん）の悪心（あくしん）にて。ながく飢寒（きかん）のうれひをかふむるにあらずや。さて又菊（きく）に不孝（ふかう）の罪（つみ）をあたふると云事。是猶（なを）与右衛門が自業自得（じごふじとく）のむくひなれば。あながち菊が不孝（ふかう）にあらず。そのうへ与右衛門が當來（たうらい）のおもき業（こふ）を。今此現世（げんぜ）に苦（く）をうけて。少もつくなふものならは。轉重輕受（てんぢうきやうじゆ）のいわれゆへ。菊はかへつて親の苦（く）をすくふ孝〻（かう〳〵）の子（こ）なるべし。又各〻（おの〳〵）も子（し）孫（そん）のためをおぼしめさば。當分（たうぶん）の苦労（くろう）をかへり見ず。はや〳〵我が願（ねが）ひにまかせ。石佛（せきぶつ）をたてゝたび候へといゝければ。庄右衛門がいふやうは。汝がいふ所の道理（だうり）。詞（ことば）は