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一四、夏の住家と其構造及建築法

 夏の家は通常間口三間乃至四間位廣きは四間四方高さ五尺位とし軒に達する四本の柱(俗に掘立家)を立てて各柱の間には大木を割り柱の長さ位の板となし、之を立て外部を木皮又は草にて圍ふ、何れも木釘を用ふ。

 上張の如きは斧にて巧みに造る、又斧の削り目を揃ふるを以て上手と云ふなり。

 斯くて家の外側が出來上り、次に屋根の骨組を地上で組立タルキ等を附ける。終りとなれば、村の人々參集し組立たる屋根を其儘持上げて、前の出來上りたる周圍に之を組合せる。斯くして一棟の家の骨組が出來れば屋根を葺くのである。其材料はエゾ松の最も大なるものゝ生木の皮を地上より、二丈乃至二丈五尺位の高さに剝ぎ取る。之を以て屋根を葺く、其上に草を掛ける。之れにも木釘を用ふ。斯くて家の外部は出來上る。

 今度は家の內部である。內部床の中央の左右には、床上高さ一尺位幅五尺長さ家の兩隅に達する位の場所を設ける、之れは寢臺用である。正面に小窓を設ける。之を神佛に捧げる、器物を出し入れする爲の