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 ニクブン人はオロツコ人と少しく類似の點あれ共口髭少しく濃く頭髮は男女共に長く編み背部へ垂れ下す、山丹人(サンタ人)に似て服裝は膝に達する滿洲人の着物とトナカイ皮製の股引を穿く。其股の脇部より「マキリ」小刀を下げる。其小刀の鞘は皮類にて作りたるものなり、又毛革を以て作りたる靴を穿き彼等はオロツコ人の如き生活と共にトナカイ又は犬を使役する。又狩獵し得たる獸皮を賣却し又は使用し肉食を重んずるはオロツコ人と同じである。


四、アイヌ人の風俗と生活狀態

 往昔のアイヌ人はニクブン人オロツコ人に比し多毛性にして男性的勇猛の觀あるも性格は至つて溫順である。然れ共一朝事に望めば如何なるものに對しても恐怖を感ぜないものゝ如く猛擊するなれど又非常に服從心の强いものである。オツカヨ(男子)は頭の左右兩耳を標凖として上部に向け直線に前面全部を剃り後部耳の下より後部の周圍全部を長く刈る。又揉上の處を縱一寸巾五分位に短い髮を殘して置く。そして揉上をレツケマと云ふ、「犬皮にて作りたる外套」(セタルシ)、セタオボンベ(犬皮にて縫ひ作りたる股引)多く白犬の皮を用ゐる。セタマトメレ(犬の皮の手袋)イカムハツカ(狐