Page:樺太アイヌ叢話.pdf/35

このページは検証済みです

三、オロツコ人の風俗と其生活狀態

 オロツコ人は「トナカイ」馴鹿を使役すると共に其牧畜を盛んにす、又山間の狩獵川海の漁類獸類を捕獲し日常の食用に供す、彼等は「トナカイ」を放牧し居る關係上其餌の豐富なる箇所を選み天幕(魚の皮にて縫ひ造りたる)を張り住家となし暫時其所に住す。而して附近の「トナカイ」餌を取りつくせば又他方面へ轉住するを年中行事として、生活を營むを以て一定の場所に居住する事なく又其捕獵する獸皮等をサンタ人又は露人及び邦人の漁業家等に賣却して日常の生活の費に當てるのである。

 又彼等技能としては製革と狩獵である。而して彼等の容貌は一見支那人に類似し至つて薄毛である。頭髮は男性散髮に婦女子は長く編み背に下げてゐる。服裝の上衣は支那人の着用する服の如きものを着し「ズボン」も又同樣にしてトナカイの皮を以て縫ひ作りを以て縫ひ作りたるものを着用す。性格は至つて溫順であり又彼等の往時は耕作する事なきも露領時代は麥粉類を露人の栽培したる馬齡薯等を買求めて食用となせり、或は邦人の經營する漁業に使役され米煙草等を給せられる事あり。

ニクブン人の風俗と生活狀態