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が二ケ所斗りあつた。

(七)生業及其生活

 生業として一般に農業と牧畜業である。然して樺太にての農作物としては第一麥類である。麥は大麥、小麥、裸麥、燕麥等である。併して平素食用とするのは小麥と裸麥とである。現大泊、榮濱鐵道沿線は露人の農村である。此部落の大抵の處には製粉所があり、夏期收穫したる麥類を冬期之を製粉するのである。之は多く自家用に供するのである。

 又飼養したる牛馬及び自家用の外の麥粉は大抵官廳に於て買上るのである。麥類に次ぎては馬鈴薯である。魚類としては鮭鱒の外は餘り望まない、鰈の如きは當時は絕對に食べない、又カジカも絕對にアイヌは食べないのである。故に生活は至つて簡易である。肉類、魚類は主に鹽付又鹽煮である。又肉を正午より煮、長時間能く煮焚するを以て非常に和かになる故に食べやすい。又煮る時は他の物と混じて煮ない、肉は肉ばかり煮、其汁を以て他の物例へば馬鈴薯とかを煮込み、之を(スウプ)ソツプとして食パンと共に食す、而して後に肉と食パンとを食す。食事終れば茶と白パンと(茶に砂糖を混ぜて)食す。併して肉類は冬季にのみ食す。平素は主として黑パンと馬鈴薯及魚類鹽漬又牛乳等を食用とす