Page:成沢玲川『米国物語』.djvu/85

最も下（くだ）らない見本である。

タコマは田（た）駒（こま）又は多（た）駒（こま）とも書くが、意味から云へば土人語の大山（レーニヤ 又はタコマ山、海拔一萬四千五百呎）に當（あた）るといふから、支那人が桑港（サンフランシスコ）を 金（きん）山（ざん）と書いて金（きん）鑛（くわう）發（はつ）見（けん）當（たう）時（じ）を起想せしめるやうに之を『高（たこう）摩（ま）』と書いたら、名（めい） 實（じつ）相（あい）伴（ともな）ふのみならず、アクセントから云つてもタは輕（かる）く、コーが强（つよ）いのだから 其まゝ、高（コー）摩（マ）と讀んでも差（さし）支（つかへ）はない。

ポートランドは牛津（オツクスフオード）式にやれば港（ポート）地（ランド）、葡萄牙（ポルトガル）式に行けば葡萄蘭とでも 書くべきだが、波（ポー）蘭（ラン）土（ド）の例にならつて波（ポー）土（ト）蘭（ラン）土（ド）も長過ぎる所から、支那人の砵（ポート） 崙（ランド）を其のまゝ借用してポ市とも云ふが、字（じ）が六ケし過（す）ぎて一寸（ちよつと）分（わか）り憎（にく）い。

意味を取つて鹽（ソート）湖（レーキ）式にやれば出來るのは加州及華洲の新（ニウ）城（カツスル）、加州の密柑〔ママ〕村（オレンヂ） 河（リバー）畔（サイド）。愛州の黑足村（ブラツク・フート）、糖市（シユガー・シテー）、華州の昌泉（クリスタル・スプリング）、央州の帽河（フード・リバー）などがあ