Page:成沢玲川『米国物語』.djvu/78

名を一々片假名で記（しる）すのは其（その）繁（はん）に堪（た）えぬのみならず、記（き）臆（おく）にも少なからぬ不便 があるので、未だ公式（オフヰシヤリー）には用ひられないが、一般的に邦字を當（あ）て嵌（は）めて用ひ られて居るものが澤（たく）山（さん）にある。

外國地名を邦（はう）語（ご）に當て嵌（は）めるのに發音によるものと、意（い）味（み）によるものとある。 英、佛、露、獨を始（はじ）め倫敦、伯林、巴里などは前者で、聖彼得堡（セントピータースブルグ）、牛津（オツクスフオード）、 鹽湖（ソートレーキ）等は後者の實例である。葡萄牙（ポルトガル）や劍橋（ケンブリツヂ）に至つては和洋折衷の重（ぢう）箱（ばこ）、湯（ゆ） 桶（とう）式（しき）で、前者は洋服に袴（はかま）、後者は和服にズボンを穿（は）いた形であらう。

太平洋沿岸諸州の中（うち）で加州の加（カ）利（リ）保（フ）爾（オル）仁（ニ）亞（ヤ）たることは誰でも知つて居るが、 海外移民の重（ぢう）鎭（ちん）たる加州は加賀百萬石の格式は確（たし）かであるから滿（まん）更（ざら）緣（えん）のない名 稱でもない。華盛頓（ワシントン）州（しう）の華（くわ）州（しう）は建國偉人の名から來たのだが、之をワ州と讀（よ）ま ずしてクワ州と訓（よ）むから、發音上加州と紛（まぎ）らはしい。オレゴン州の央（わう）州（しう）は^難読