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はしがき

淺學無議の私が書を公にするなどは柄にないことであると自ら思つて居る。 實は明治三十九年より大正二年に至る滯米七年間に見聞し經驗したことを私の 最も親愛する骨肉や友達に話したいと思つて此稿を作つたのが動機で、先年或 人のすゝめによつて其一部を東京朝日新聞紙上に連載した。「米國物語」の表題 も此時に用ゐたものである。併し米國といつても廣いことであるから主として 私の第二の故鄕たる在米同胞社會の事柄を描き、其背景たる米國の事情を少し く加へたに過ぎぬ。物語といつても必ずしも物語るのみではなく時に議論あり 感想もあつて內容が十分書名に添はぬかも知れぬ。今回未だ發表されざるもの