は、帖卜騰格哩テブテンゲリの處トコロに去サりき。斡惕赤斤 那顏オツチギン ノヤンは、去サりたる民タミを索モトめに莎豁兒シヨゴルと云イふ使ツカヒを遣ヤりき。帖卜騰格哩テブテンゲリは、莎豁兒 使シヨゴル ツカヒに言イへらく「斡惕赤斤オツチギン、汝等ナンヂラ 二女フタリ 使ツカヒとなりき」と云イひて、(この言、意 通せず。二女とは、莎豁見と馬とを云ひ、莎豁兒を馬に比べ女に比べて辱めたるならんか。)莎豁兒 使シヨゴル ツカヒを打ウちて、步アユませてその鞍クラを負オはせて回カヘらしめき。斡惕赤斤オツチギンは、莎豁兒 使シヨゴル ツカヒを打ウちて步アユませ致オコせられて、明朝アスノアサ 斡惕赤斤オツチギン〈[#「斡惕赤斤」は底本では「斡惕兒斤」。昭和18年復刻版に倣い修正]〉自ミヅカラ 帖卜騰格哩テブテンゲリの處トコロに往ユきて言イはく「莎豁兒 使シヨゴル ツカヒを遣ヤりたれば、打ウちて步アユませ致オコせき。今イマ 我ワレ 民タミを索モトめに來キつ」と云イはれて、七人ナヽタリの晃豁壇コンゴタンは、斡惕赤斤オツチギンをここよりそこより圍カコみて「莎豁兒 使シヨゴル ツカヒを汝ナンヂの致オコせたるは、善ヨく有アり」と云イひて、(明譯你ナンヂ 如何イカンゾ 敢アヘテ差ツカハシテ㆑人ヒトヲ來取キテトル㆓百姓タミヲ㆒とあれば、原文には打消の副詞 脫ちたるならん。)拏トラへんと打ウたんと做ナさるゝに懼オソれて、斡惕赤斤 那顏オツチギン ノヤン 言イはく「使ツカヒを我ワが致オコせたるは、善ヨからず」と云イひき。七人ナヽタリの晃豁壇コンゴタン 言イはく「善ヨからずあらば、懺悔︀サンゲして跪ヒザマヅけ」と云イひて、帖卜騰格哩テブテンゲリの後シリヘより跪ヒザマヅかせけり。民タミをも與アタへられずして、
斡惕赤斤オツチギンは、明朝アスノアサ 早ハヤく成吉思 合罕チンギス カガンに、起オきざるに寢床ネドコの內ウチに在イマす處トコロに入イりて、哭ナき跪ヒザマヅきて申マウさく「九種コヽノイロの方言クニコトバある民タミは、帖卜騰格哩テブテンゲリの處トコロに聚アツマられて、我ワレに屬シタガへる民タミを帖卜騰格哩テブテンゲリより索モトめに莎豁兒シヨゴルと云イふ使ツカヒを遣ヤりたるに、我ワが莎豁兒 使シヨゴル ツカヒを打ウちて步アユませ鞍クラを負オはせて致オコせられて、我ワレ 自ミヅカラ