成吉思 合罕チンギス カガンは、別ホカの事コトにて怒イカりて在イマせる閒アヒダに申マウしたる故ユヱに、成吉思 合罕チンギス カガンは、怒イカリの裏ウチに合撒兒カツサルに宣ノリタマはく「命イノチあるものに勝カたれざる[人ヒト]なりき、汝ナンヂ(明譯你ナンヂハ 平日ツネニ 說イヘリ㆓人ヒト 不ズト㆒㆑能アタハ㆑敵テキスル)。いかんぞ勝カたれたる、汝ナンヂ」と云イはれて、合撒兒カツサル 涙ナミダを墮オトし起タちて去サりて、合撒兒カツサル 憂ウレへて三日ミカ 來コざりき。
そこに帖卜騰格哩テブテンゲリは、成吉思 合罕チンギス カガンに白マウさく「長生トコヨの上帝アマツカミの勅ミコトにて罕カン[を定サダむる]神︀吿ミツゲを宣ノリタマへり。「一次ヒトタビは帖木眞テムヂン 國クニを取トれ」と宣ノリタマへり。「一次ヒトタビは合撒兒カツサルを」と宣ノリタマへり。合撒兒カツサルを圖ハカらずば、[事コト]知シられずあるぞ」と云イはれて、
成吉思 合罕チンギス カガンは、その夜ヨル 出馬シユツバして、合撒兒カツサルを拏トラへに往ユきたれば、古出グチユ 闊闊出ココチユ 二人フタリは「合撒兒カツサルを拏トラへに往ユきたり」と母ハヽに吿ツげけり。母ハヽ 知シると、夜ヨル 便スナハチ 續ツヾきて、白シロき駱駝ラクダに引ヒかせて黑クロき車クルマにて夜通ヨドオし行ユきて、日出ヒイづる頃コロ 到イタれば、成吉思 合罕チンギス カガンは、合撒兒カツサルの袖ソデを縛シバリりて、その帽帶バウオビを褫ハぎて、その言コトバを問トひ居ヲる處トコロに、
母ハヽに到イタられて、成吉思 合罕チンギス カガン 驚オドロきて母ハヽを畏オソれたり。母ハヽ 怒イカりて到イタりて車クルマより降オり、母ハヽ 自ミヅカラ 合撒兒カツサルの縛シバれる袖ソデを解トきて放ハナし、その帽帶バウオビを合撒兒カツサルに與アタへて、母ハヽ 怒イカりて氣キ(怒氣)を壓オサへかね、盤脚アグミ 坐ヰて兩フタツの乳チを出イダして兩フタツの膝ヒザの上ウヘにのせて言イはく「見ミたりや。汝ナンヂの乳チ(乳汁)を飮ノみたる乳チ(乳房)は、此コレなり。この尋タヅ合荅侖ね追オひて、胞衣エナ合兒必速を咬カ合札みたる、臍帶ホソノヲ灰亦を斷タちたる合撒兒カツサルは、