で親シタシみ合アひて、その住スめる營盤イヘヰより一日ヒトヒ 起タたんと云イひ合アひて起タてるは、夏ナツの首ハジメの月ツキの第十六ダイジフロクの赤アカく照テる日ヒに起タちたり。帖木眞テムヂン、札木合ヂヤムカ 二人フタリ 共トモに車クルマの前マヘに步アユみて來キつるに、札木合ヂヤムカ 言イはく「帖木眞 安荅テムヂン アンダ、安荅アンダ。山ヤマ兀阿剌に挨ヨり下馬ゲバせん。我等ワレラの馬飼︀ウマカヒ阿都︀兀臣どもは、帳房チヤウバウ阿剌出黑に有附アリツかん。㵎タニ豁勒に挨ヨり下馬ゲバせん。我等ワレラの羊飼︀ヒツジカイ豁紐赤惕ども羔飼︀コヒツジカイ忽哩合赤惕どもは、喉ノド豁斡來(喉を養ふ食物)に有附アリツかん(明譯咱每ワレラ 如今イマ 挨ヨリ㆓著︀テ 山ヤマニ㆒下オリバ、放ハナツ㆑馬ウマヲ 的モノ 得エン㆓帳房住チヤウボウニスムヲ㆒。挨ヨリ㆓著︀テ 㵎タニヽ㆒下オリバ、放ハナツ㆑羊ヒツヂヲ 的モノ 放ハナツ㆓羔兒コヒツジヲ㆒的モノ 喉嚨裏ノドニ 得エン㆓喫的クフモノヲ㆒)」と云イへり。帖木眞テムヂンは、札木合ヂヤムカのこの言コトバを覺サトりかねて、默モダし立タちて後オクれて起タつ閒アヒダ、車クルマどもを待マちて起タたんとし、帖木眞テムヂンは、訶額侖 額客ホエルン エケに「札木合 安荅ヂヤムカ アンダは言イへり。「山ヤマ阿兀剌に挨ヨり下馬ゲバせん。我等ワレラの馬飼︀ウマカヒ阿都︀兀臣どもは、帳房チヤウバウ阿剌出黑にありつかん。㵎タニ豁勒に挨ヨり下馬ゲバせん。我等ワレラの羊飼︀ヒツジカヒ豁組赤惕ども羔飼︀コヒツジカヒ忽哩合赤惕どもは、喉ノド豁斡來にありつかん」と言イへり。我ワレは、彼カレのこの言コトバを覺サトりかねて、彼カレへの答コタヘを何ナニとも言イはざりき、我ワレ。母ハヽに問トはんとて來キぬ、我ワレ」と云イへり。
孛兒帖 兀眞ボルテ ウヂンの穎悟エイゴ
訶額侖 額客ホエルン エケの聲コヱせざるに、孛兒帖 兀眞ボルテ ウヂン 言イはく「札木合 安荅ヂヤムカ アンダは、厭アき易ヤスしと云イはるゝなりき。今イマ 我等ワレラを厭アく時トキとなれり。只今タヾイマの札木合 安荅ヂヤムカ アンダの語カタれる語コトバは我等ワレラを便スナハち圖ハカらんとする言コトバならん。我等ワレラは勿ナ 下馬ゲバせそ。この動ウゴきたるに依ヨり爽サワヤかに離ハナれ、夜通ヨドホし掛カけて動ウゴかん便スナハち」と云イへり。