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分科的研究なるをもって、単に経済学もしくは倫理学のごとき局部のものをもって社会主義の論述に足れりとすべからず。ことに本書は煩瑣なる多くの章節項目のごとき規矩を設けず、議論の貫徹と説明の詳細を主として放縦に筆を奔らしたるがゆえに一の問題につきても全部を通読したる後ならずしては完き判定を下し得ざるもの多し。もとより一千ページにわたる大冊を捧げてかかる要求をあえてする著者の罪は深く謝するところなりといえども、全世界の前に提出せられたる大問題の攻究として多少の労力は避けざるべきなり。

 著者は弁護を天職とするいわゆる学者らにあらず、また万事を否認することをもって任務とする革命家というものにあらず。ただ、学理の導きにしたがいて維持すべきは維持すべきを説