取立金

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主文

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原審判決を破棄する。

第1審判決を取り消し,本件訴えを却下する。

訴訟総費用は,原告が負担する。

理由

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上告理由を判断する。

1. 上告理由第1点に関して

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イ. 送達は,原則的に送達を受ける者の住所・居所・営業所又は事務所において受送達者本人に交付する交付送達が原則であるが(民事訴訟法第178条第1項,第183条第1項),送達機関が右のような場所において受送達者に出会わないときは,その事務員,被用者又は同居人であって,事理を分別する知能のある者にする補充送達によることもできる(同法第186条第1項)。

補充送達制度は,本人でないその事務員,被用者又は同居人,即ち受領代行人が書類を受領しても,その知能及び客観的な地位,本人との関係等に照らし社会通念上,本人にその書類を伝達するであろう合理的な期待を前提とする。ところで,本人と受領代行人の間に,当該訴訟に関して利害の対立ないし相反する利害関係のあるときは,受領代行人が訴訟書類を本人に伝達するであろうと合理的に期待しがたく,利害が対立する受領代行人が本人に代わって訴訟書類の送達を受けることは,双方代理禁止の原則にも反するから,本人との間に当該訴訟に関して利害の対立ないし相反する利害関係のある受領代行人に対しては,補充送達をすることができないと解すべきである。

ロ. 原審判決理由によれば,原告は,2008. 9. 10. 仁川地方裁判所2008타債11989号で,債務者を訴外人,第3債務者を被告,請求金額を6,000万圓とし,訴外人の被告に対する賃金及び退職金債権に対して債権差押え及び取立命令(以下「本件債権差押え及び取立命令」という)を受けた事実,右裁判所は,本件債権差押え及び取立命令決定正本を被告の本店所在地に送達し,本件債権差押え及び取立命令の債務者かつ被告の事務員である訴外人が右場所においてこれを受領したが,被告の代表理事に対し伝達しなかった事実,原告は,本件債権差押え及び取立命令を根拠として,2013. 5. 8.被告を相手方として本件取立金請求の訴えを提起した事実,第1審裁判所は,被告の本店所在地に訴状副本等を送達し,訴外人が2013. 5. 16.被告の事務員として右場所において右訴訟書類を受領した事実,第1審裁判所は,被告が訴状副本送達日から30日以内に答弁書を提出せず,弁論なく原告勝訴判決を言い渡し,被告の本店所在地に第1審判決正本を送達し,右判決正本も訴外人が2013. 7. 22.被告の事務員としてこれを受領した事実,一方訴外人は,右のとおり受領した訴訟書類及び第1審判決正本を被告の代表理事に対し伝達しなかった事実,被告の代表理事は,2013. 8. 30.本件第1審記録を閲覧し,2013. 9. 3.追完控訴状を第1審裁判所に提出した事実が認められる。

原審は,右事実を土台とし,その判示のとおりの理由を挙げ,訴外人は,本件債権差押え及び取立命令の債務者として,第3債務者である被告と利害関係を異にする当事者であって,関連訴訟において受領した書類を本人である被告に対し伝達するであろう合理的な期待をし難いから,右のような場合においては,仮に訴外人が被告の事務員として訴訟書類を受領したとしても,被告に対する補充送達としての効力を認めることはできず,従って,第1審裁判所が訴訟書類及び判決正本を訴外人に対し補充送達の方法により送達したことは,不適法であり,これにより控訴期間は進行しないから,被告の本件追完控訴は,被告に対し責任を負い得ない事由があるか否かと関係なく,適法であると判断した。

原審判決理由を先に見た法理及び記録に照らして見ると,原審の右のような判断は,正当である。ここに上告理由の主張のように民事訴訟法第186条第1項に規定する補充送達に関する法理を誤解した誤りはない。

2. 上告理由第2点に関して

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取立命令は,第3債務者及び債務者に送達しなければならず,取立命令が第3債務者に送達されることにより,その効力が生ずる(民事執行法第229条第4項,第227条第2項,第3項)。

原審は,その判示のとおり,本件債権差押え及び取立命令決定正本が被告の事務員である訴外人に対し補充送達の方法で送達された事実は認められるが,訴外人は,本件債権差押え及び取立命令の債務者であって,被告と利害関係を異にする当事者であるから,訴外人に対してした補充送達は,不適法であり,別途本件債権差押え及び取立命令決定正本が第3債務者である被告に対して送達された点を認めるいかなる証拠もないから,本件債権差押え及び取立命令は,効力が生じていないと判断した。

原審判決理由を先に見た法理に照らして見ると,原審の右のような判断は,正当であり,ここに上告理由の主張のように民事訴訟法第186条第1項において規定する補充送達に関する法理を誤解した誤りはない。

3. 職権判断

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先に見たとおり,本件債権差押え及び取立命令決定正本が第3債務者である被告に対して適法に送達されず,本件債権差押え及び取立命令の効力が生じなかった以上,債権者である原告には,被告を相手方として直接本件取立金請求の訴えを提起すべき権能がない。そうすると,本件訴えは,当事者資格のないものによって提起されたものであって,不適法であるから,却下されなければならない。

それにも拘らず,原審は,取立権能の存否が単純に請求の当否に関する事項に過ぎないものと見て,原告の請求を棄却したから,原審のこのような判断には,当事者適格に関する法理を誤解し,判決に影響を及ぼす誤りがある。

4. 結論

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従って,職権で原審判決を破棄するが,本件は,本裁判所が直接裁判するのに十分であるから,民事訴訟法第437条により裁判をすることとし,第1審判決を取消し,本件訴えを却下し,訴訟総費用は,敗訴者である原告が負担するものとし,関与裁判官の一致した意見で主文のとおり判決する。

最高裁判所判事 パクピョンデ(裁判長) パクポヨン クォンスニル(主審) キムジェヒョン

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