手形金 編集

主文 編集

上告を棄却する。上告費用は,原告の負担とする。

理由 編集

手形発行人が手形の被詐取等を理由として支払銀行に事故届とともにその手形金の支払停止を依頼し預託する事故届担保金は,手形発行人である会社の出捐した財産であるとしても,銀行に預託された以上,その所有権は銀行に移転され,会社はソウル手形交換所規約又は事故届担保金処理に関する約定に定める条件が成就したときに限り銀行に対し事故届担保金返還請求権を有するに過ぎず,手形所持人の事故届担保金に対する権利を会社整理法上の整理担保権であると解することはできないのであるから,手形の正当なる所持人は,整理手続きによらず,支払銀行を相手方として事故届担保金の支払請求権を行使してその債権の満足を得ることができ,この場合,手形所持人は,右規約等の定めるところに従い手形発行人である整理会社の管理人を相手方として手形金債権に対する整理債権確定の訴えにおいて勝訴判決を受けその判決が確定されれば,支払銀行に事故届担保金の支払を請求することができるといえる(最高裁 1995. 1. 24. 言渡 94ダ40321 判決参照)。

一方,会社整理法第241条は,整理計画の認可のあるときは,計画の規定又は本法の規定により認められた権利を除き,会社は,すべての整理債権及び整理担保権についてその責任を免れる旨規定しているところ,ここでいう免責とは,債務自体は存続するが,会社に対して履行を強制することができないという意味であると解することが相当であるといえる。

原審は,整理債権の届出期間内に整理債権届をせずに整理計画の認可決定がなされることによって整理債権である約束手形金債権が失権され,従って,整理債権確定の訴えを提起することのできない手形所持人である原告が被告を相手方として訴外ハナ銀行狎鴎亭中央支店(以下「訴外銀行」という)が1998. 6. 15.訴外韓国チタニウム株式会社(以下「整理前会社」という)から預かり受けた4億圓の事故届担保金を原告に対し支払うことに同意せよとの1次予備的請求に対しては,手形発行人である整理前会社の同意義務を認めるに足る約定がなく,また,原告の被告に対する約束手形金債権は被告に対する関係において自然債務状態で残ることとなるのであるから,原告が本件事故届担保金の支払を求めることのできる本件約束手形の正当な権利者と解することはできず,被告に対し事故届担保金の支払に同意する実体法上の義務もないとの理由でこれを排斥し,右事故届担保金に対する支払請求権が原告にあることの確認を求める原告の2次予備的請求に対しては,手形所持人が事故届担保金に対する支払請求権を有するためにはソウル手形交換所規約が定める要件を備えなければならないが,原告がこのような要件を充足していると解すべき証拠がないとの理由でこれを排斥した。

先に見た法理及び記録に照らしてみると,原審の右のような判断は正当であり,そこに上告理由主張のような事故届担保金の法的性格,整理計画認可決定が事故届担保金処理約定に及ぶ効果,会社整理法第241条所定の免責の意味及びソウル手形交換所規約の適用等に関する法理誤解の違法はなく,原審の説示に多少及ばない点はあるものの,原審が原告の請求をすべて排斥した趣旨には原告が上告理由として扱う主張も排斥したものと解せられないものではないから,原審判決に上告理由主張のような判断遺脱の違法もない。

従って,上告を棄却し,上告費用は,敗訴者の負担にすることとし,関与裁判官の一致した意見で主文の通り判決する。

最高裁判所判事 パクチェユン(裁判長)ソソン ユジダム(主審) ペギウォン

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