電車唱歌/箕面有馬電車唱歌
< 電車唱歌
- 東風ふく春に魁けて 開く梅田の東口 往來う汽車を下に見て 北野に渡る跨線橋
- 業平塚や萩の寺 新淀川の春の風 十三堤の野遊びに 摘むやたんぽゝ五形花
- 菜種の花の道ゆけば 眼にも三國の發電所 煙の空をあとに見て 牛立三屋服部の
- 天神宮へ初詣 鳥居を出でゝ東には 住吉神社の森深く 天竺川の松涼し
- 名も高臺の岡山に 芦田ヶ池の水鏡 霞の中に岡町を 過ぎて若葉の麻田山
- 歌に名高き玉阪や 待兼山も窓近く その一聲のほとゝぎす わたる石橋分岐點
- 右にわかれて箕面路に 秦野のつゝじ櫻井の 藥師淸水の八重櫻 散りし瀬川の古戦場
- ラケット形の終點に 止まる電車をあとにして 行くや公園一の橋 渡る溪間の水淸く
- 溯り行く源の 靑葉の雲に霧こめて 夏尚寒く雪と散る 瀧の高さは二百尺
- 紅葉の中の辨天や 札所の一の勝尾寺 遙に拜し奉り 再び戻る分岐點
- 尊鉢才田右に見て 池田の町の新市街 呉服神社に五月山 麓をながる猪名川や
- 能勢の妙見伏し拜み 錢屋五兵衛の塚近く 南に開く山の影 新たに植えし花屋敷
- 木部平井や山本に 四季もゝくさの花畑 長閑に響く夕暮の 鐘は中山観世音
- 紫雲棚曵く山の端に 梅の香の米谷や 清荒神かみさびて 武庫川千鳥走りゆく
- 早き電車の終點に 集まり來る都人 土産も重き寶塚 樂み多きゆきゝ哉