電車唱歌/東京地理教育電車唱歌
< 電車唱歌
玉 の宮居 は丸 の内 近 き日比谷 に集 まれる電車 の道 は十文字 まづ上野 へと遊 ばんか左 に宮城 をがみつつ東京府廳 を右 に見 て馬場先門 や和田倉門 大手町 には内務省 渡 るも早 し神田橋 錦町 より小川町 乗 りかへしげき須田町 や昌平橋 をわたりゆく神田神社 の廣前 を すぎて本郷大通 り右 にまがりて切通 し仰 ぐ湯島 の天満宮 - いつしか
上野広小路 さて公園 に見 るものは西郷翁 の銅像 よ東照宮 のみたまやよ 博物館 に動物園 パノラマ美術展覧會 不忍池畔 の弁財天 四季 の眺 めもあかぬかな浅草行 に乘 り行 かば左 に上野 ステーション走 るもはやし車坂 清島町 をうちすぎて- はや
目 の前 に十二階 雷門 より降 り立 てば ここ浅草 の観世音 詣 づる人 は肩 を摩 る 五重 の塔 よ仁王門 水族館 よ花 やしき をどり玉 のり珍世界 奥山 あたりのにぎやかさ- さて
浅草 より上野 へと還 る電車 の道 すがら甍 の空 に聳 ゆるは名 だかき東本願寺 電車 は三橋 のたもとより行 くては昔 の御成道 萬世橋 をうちわたり内神田 へと入りぬれば須田町 鍛冶町 うち通 り今川橋 よ本石町 室町 すぎて日本橋 さても都 の大通 り商家 は櫛 の齒 を竝 べ ガス燈電燈夜 をてらし通 り三丁 四丁目 や つづく中橋広小路 京橋 わたれば更 に又 光 まばゆき銀座街 路 には煉瓦 をしきならべ なみ木 の柳 風 すずし銀行 會社 商館 の ならべる大厦高楼 は いずれも石造煉瓦造 目 を驚 かすばかりなり新橋 わたりて左 には同 じ名 のあるステーション線路 はおなじ大通 り芝 の區々走 り行 く大門町 の左 には電車鐵道會社 あり ほどなく高輪泉岳寺 四十七士 のあとも訪 へ- さて
品川 につきぬれば横濱 川嵜 羽根田 へと通 ふ電車 も開 けたり げにも便利 のよき事 や - なほ
電鐵 には日本橋 本銀町 を右 に折 れ浅草橋 をうち渡 り蔵前 すぎて雷門 - もとの
線路 を引 きかへし浅草橋 より道 かへて横山町 をとほりすぎ本町 さして還 るあり 街鐵線 は三田 よりぞ芝園橋 をうちわたり左 に見 て行 く公園 は徳川氏 の廟所 にて松風 すずしく園 きよく東宮殿下御慶事 の記念燈 あり丸山 に伊能忠敬 の碑 も建 てり愛宕 の塔 を見 あげつつ幸橋 をわたるまに いつか日比谷 につきにけり いで公園 を見 てゆかん- さても
日比谷 の公園 は池 あり丘 あり廣場 あり四季 の草木 を植 ゑこみて市民上下 の遊歩場 新宿行 に乘 るやすぐ櫻田門 より下 りたたば二重橋 より宮城 を ほのかに拜 みまつるべし櫻田門 をすぐる頃 左 に見 ゆる建物 は大審院 よ司法省 なほもつづける海軍省 - はやも
參謀本部前 たてる馬上 の銅像 は ながれも清 き有栖川 熾仁殿下 の俤 ぞ 電車 はいつか三宅坂 陸軍省 のそば近 く右 の御濠 に宮城 の みどりの松 の影深 し青山行 は乘 りかへて赤坂見附 一 つ木 を すぎて東宮御所 の前 電車 は行 くなり四丁目 へ青山墓地 へは三丁目 澁谷氷川 の病院 を訪 はんとならば四丁目 に おりてゆくべし左 へと新宿行 は更 になほ衞戍病院前 をすぎ半藏門 の前 よりぞ左 に折 れて麹町 十町 すぎて四ツ谷門 見附 を出 でて大横町 傳馬町 より鹽町 よ新宿 さしていそぎゆく新宿驛 より甲武線 四ツ谷 市ヶ谷 牛込 や飯田町 をばうち過 ぎて その名 も清 きお茶 の水 - その
道 すがら右左 目 にいるものは青山 の練兵場 や學習院 士官學校 八幡宮 外濠線 は四ツ谷 より市ヶ谷見附 神樂坂 砲兵工廠前 をすぎ お茶 の水橋 駿河臺 小川町 より錦町 鎌倉河岸 より常盤橋 左 に高 き建物 は日本 三井 の兩銀行 呉服橋 より鍜治橋 と すぎ行 く道 は八重洲河岸 帝國 ホテルを對岸 に見 つつ土橋 の停留所 右 に曲 がりて程 もなく内幸町 とほりつつ なほ行 く先 は虎 の門 議事堂近 く建 てるなり赤坂區 へと入 りぬれば溜池 田町 忽 ちに弁慶橋 もうちすぎて四ツ谷見附 に至 るなり- また
日比谷 より街鐵 は數寄屋橋 より尾張町 三原橋 をば渡 りすぎ木挽町 には歌舞伎座 よ 新富町 には新富座 芝居見物 するもよし ここは築地 よ名 も高 き西本願寺 のあるところ北島町 や坂本町 茅場町 より乗 りかへて深川行 は靈岸町 すぐればやがて永代 よ橋 を渡 りて深川區 龜住町 にゐたるなり ここに名高 き富 が岡 八幡宮 を拜 むべし茅場町 より蠣殻町 水天宮 の前 をすぎ人形町 よ住吉町 濱町河岸 の景色 よさ- はや
兩國 の停留所 橋 をわたれば本所區 左 に折 れて總武線 高架鐵道十文字 又 も左 に折 れ曲 がり厩橋 をばわたりすぎ黒船町 よ小島町 行 くや上野 の広小路 兩國 よりは更 になほ柳原河岸 とほりすぎ また須田町 に來 て見 れば實 にや八達四通 の地 小川町 より九段行 靖國神社 に詣 でんと東明館 の前 を過 ぎ俎板橋 にゐたるなり坂 をのぼれば左 には西南役 の記念碑 や右陸軍 の偕行社 見 わたし廣 し景色 よし靖國神社 の廣前 に大村 川上兩雄 の いさをも高 き銅像 は千代 も朽 ちせぬ世 の鑑 遊就館 に入 り見 れば古今 の武器 や戰利品 國 に尽 ししますらをの肖像 たかく掲 げらる靖國神社 に詣 づれば大君 のため國 のため身 をつくしたる武夫 の御靈 ぞ代々 を護 るなる
この著作物は、1922年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)70年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。
この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。