- 底本:『假象の創造 青木繁全文集(増補版)』中央公論美術出版、2003年、978-4-80-550444-4
- 註: 異体字セレクタに対応したブラウザ及びフォントを利用することで、以下のリストのとおり原文に近い字体を表現することができます。対応していない場合は、基底となる文字がそのまま表示されます。
- 房→房󠄀(U+623F U+E0100)
- 寒→寒󠄁(U+5BD2 U+E0101)
- 猶→猶󠄁(U+7336 U+E0101)
- 乳→乳󠄁(U+4E73 U+E0101)
- 註: 原文中、以下の文字についてはunicodeにない異体字が使用されている。
- 底本では「髪」の字として、「友」の右上に「丶」を加えた字を用いている。
- 底本では「〇」の箇所の字に、「逬」の2点しんにょうを除いた字を用いている。
雜 詠
こほろぎに更くる夜ごとをつづれさす
旅に五とせ今二十一
眞日まてり磯の岩床燒け赫けて
底鳴る潮呻吟に似たり
房󠄁州布良に旅︀せる日
髪ぬけてししむらただれそれは夢ぞ
まくら邊の御手ほにあたたかき (扇面)河村龍夫氏藏による
うこそへてさてわ弦よき戰よ
兜の星を南におくる (扇面「勝鬨圖」〇に短歌)
さちやいかにいまだわがせはかへりこぬ
おきや大島 波の音しぬ (福田たね氏往時の記憶による)
稍寒󠄁の浴の宿をたつ星明かり
浴の宿や片眼は惜しき杢が嫁
溫泉の村や落葉の六里八ツ下り
溫泉の香や落葉一村三十戶
落葉朽葉峯の磯部のか浴湯ところ
それきずの秋くれむとして猶猶󠄁療えず
秋三歲乳󠄁房󠄁の疵のうらみかな
暮るゝ秋を 髪 かみきりし夜もすがら
剃刀にされど淚の夜寒󠄁かな
この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。
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