鉄道唱歌/中央線鉄道唱歌 (春江堂)
< 鉄道唱歌
中央線鉄道唱歌
汽 笛一聲 吾 汽 車 は はや離 れたり飯 田 町 牛込市 ヶ谷 堀 の端 四ツ谷出 づれば信 濃 町 千 駄 ヶ谷代々木 新 宿 中仙道 は前 を行 き南 は品川東海道 北 は赤羽奧 羽 線 大 久保 躑躅 の花盛 り柏 木 中 野 に兵營 を見 るや荻窪吉 祥 寺 境 を過 ぐれば國分 寺 立川 越 えて多摩 川 や日野 に豐 田 や八王 子 織物 業 で名 も高 く中 央線 の起 點 なり淺川 行 けば小 佛 ぞ澤 井 澤 をば早渡 り與瀨 上 野 原鳥澤 や谷 間 に架 けしは猿橋 か甲斐 絹 の産 地 で知 られたる郡内 地 方 は此 あたり山 の中 なる大月 に水 力 電 氣 の事 業 あり- こゝは
名 に負 う笹 子 嶺 「トンネル」一万五千尺 徒步 にて越 しは十 年前 居 ながら通 る氣 樂 さよ 初 鹿 野 鹽山向嶽 寺 溫泉 効驗 いと多 く差 出 の磯 の日下 部 と螢 で名 高 き石 和 町 次 は甲 府 の城 の跡 山岳 四 面 に重疊 し甲州 一 の大 都 會 山梨縣 廳 此處 に在 り龍 王韮崎 日野 春 は八 ヶ 岳 をば右 に見 て小 淵澤 より富士見 臺 海拔 三千百餘 尺 靑柳 茅野 に上 諏訪 よ左 は諏訪湖 冬 ならば吾 も「スケート」試 みん右 には溫泉 諏訪 神社 下 諏訪 岡 谷 は製 絲 業 煙筒繋 きは國 の富 天 龍 川 は此處 に出 て遠 州 灘 に注 ぎ入 る辰 野小野 も通 り過 ぎ伊那 谷涉 りて鹽尻 は茫 たる平 野 に「ステーション」篠 ノ井 線 の分 岐 點 桔梗 ヶ原 の古 戰 塲 滿目荒 涼 風寒 く北信萬峰 巍々 として深 志 の城 は目 に近 し道 は再 び中仙道 遠 く連 る越 の道 是 より西 は木曾路 にて洗馬 や贄川 奈良井 宿 本州 中 部 の分水嶺 鳥 居 峠 の「トンネル」は基 面 の高 さ日 本一 峠 を越 ゆれば木曾 の谷 眼界一轉 うっそうと茂 るは御 料 の林 なり広袤 三十五万町 伐 り出 す木材 無 盡藏 藪原通 りて宮 ノ越 旭將 軍義仲 が旗 を掲 げしは此邊 り晩 鐘 響 く德音 寺 折 しも左 の畑中 に高 く立 ちたる記 念 の碑 東 と西 より進 みたる中 央線 の接續點 木曾 の都 の福島 は御嶽詣 での登 り口 山腹高 く棧 を過 ぐればやがて上松 よ空 に聳 ゆる駒 ヶ 岳 寢 覺 の床 に臨川 寺 小野 瀧 越 えて定勝 寺 景 色秀 れて眺 め好 し須 原 野 尻 で橫 に見 る碧潭 渦 中 の木 流 しと錦 織 りなす紅葉 は木曾 の旅 路 のうさはらし三留野 を出 でゝ木曾 川 を渡 る鐵 橋 五十間 賤 母 の風景釣越 は昔 の道 中 忍 ばるゝ坂下 よりは飛彈 街道 木曾路 を後 に中 津 驛 左 に恵那 山右 大 井 電車 に乘 れば岩村 町 釜 戸 瑞浪 打 過 ぎて土岐津多治見 兩町 の名 髙 き産物 陶 器磁器 これぞ日 本 の輸 出 品 彼 處 に見 ゆるは虎 溪山 土岐 川淸 く山高 し 十四の「トンネル」絶 間 なく高藏 寺 勝川夢 うつゝ大 曾根千 種 も早 過 ぎて鶴舞公園 目 のあたり身支 度 整 ふ程 もなく汽 車 は名古屋 に着 きにけり待 ちに待 ちたる中 央 の鐵 路 もこゝに全通 し國運 ます/\隆 盛 に榮 ゆる御代 ぞめでたけれ