金槐和歌集/卷之下
< 金槐和歌集
金 槐 和 歌 集 卷 之 下
雜 部
旅の心を | |||||
(五六二) | 類從本には「旅」の部にあり。 | ||||
(五六三) | 草枕旅にしあれば |
類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 | |||
(五六四) | 草枕旅にしあればかりごもの思ひみだれていこそ |
類從本には「旅」の部にあり。 | |||
(五六五) | 玉葉 旅衣 |
定家所傳本には結句「わが」とあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
(五六六) | 續古今 旅ねする伊勢の |
類從本には「旅」の部にありて「旅哥」と題せり。 眞淵は、「露といひて月かげをやどせし樣、後なり」と評せり。 | |||
(五六七) | 類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | ||||
旅 泊 |
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(五六八) | みなと風いたくな吹きそしながどり |
類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 | |||
(五六九) | やらのさき月影さむしおきつ鳥鴨といふ舟うきねすらしも | 眞淵この歌に○を附し、「やらの崎、筑紫なり。こは萬葉に、奧鳥鴨云舟のかへりこばやらの崎守はやく吿こそ、なほもあり、後の人のおもひもかけぬ地をとり出つらねられたるさまもをかし」と評せり。 類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 | |||
舟 |
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(五七〇) | 新勅撰 世の中はつねにもがもな |
眞淵この歌に○○を附し、「よにことなるけしき有る所を命を惜みし歌、萬葉にあるを思ひよりて、末はた彼のみちのくの歌のことばを用ひられしなど、いとおもしろし。いで巧をせんには、かく大きにこそあらめ」と評せり。 | |||
羇中夕露 |
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(五七一) | 露しげみならはぬ野邊のかり衣頃しもかなし秋の夕暮 | 類從本には「旅」の部にあり。 | |||
(五七二) | 野邊 |
類從本には「旅」の部にあり。 類從本・定家所傳本には初句「野邊わけぬ」とあり。 眞淵は「ただこの頃、後なり」と評せり。 | |||
(五七三) | 旅衣うらがなしかる夕ぐれのすそ野の露に秋風ぞふく | 類從本には「旅」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
羇 中 鹿 |
類從本には「旅」の部にあり。 | ||||
(五七四) | 旅衣すそ野の露にうら |
類從本・定家所傳本には第三句「うらぶれて」とあり。 眞淵はこの歌にづき、うらがれて、この語いかが、うらびれてか。ひも夕風に、衣といふよりかくいふは後なり。後世は、緣のことばを好むを、古意をよく知る時は、いとこそいやしげにきこゆれ」評したり。 | |||
(五七五) | 秋もはやすゑ野の原に鳴く鹿の聲きくときぞ旅は悲しき | 類從本には「旅」の部にあり。定家所傳本には第二句「すゑのはらのに」とあり。 | |||
(五七六) | 歌ひとりふす草の枕の |
類從本には「旅」の部にありて、第三句の「は」なし。 | |||
旅 宿 月 |
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(五七七) | 類從本には「旅」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | ||||
(五七八) | 岩がねの苔の枕に露おきていく夜み山の月に |
類從本には「旅」の部にあり。 | |||
旅宿時雨 |
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(五七九) | 旅の空なれぬ |
類從本には「旅」の部にあり。 定家所傳本には第三句「よるのとに」とあり。 | |||
旅 宿 霜 |
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(五八〇) | 類從本には「旅」の部にあり。 眞淵この歌につき、「袖枕後なり。さよの中山は、史に差益郡とありて、そこの山なれば、さやの中山といへり。後にさ夜とよみしは誤りなり」と評せり。 | ||||
(五八一) | しなが鳥ゐな野の原の |
類從本には「旅」の部にあり。 定家所傳本に第三句「ささまくら」とあり。猶ほ原本第四句「露や」とある誤なるべし。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
羇 中 雪 |
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(五八二) | 旅衣 |
類從本には「旅」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
(五八三) | あふ阪の關の山みち越えわびぬきのふもけふも雪しつもれば | 類從本には「旅」の部にあり。 | |||
(五八四) | 雪ふりて跡ははかなく絕えむとも越の山みちやまず通はむ | 類從本には「旅」の部にあり。 | |||
屛風の繪に山中に雪ふれる所に旅人數多かける所を |
類從本には「雪降山の中に旅人ふしたる所」とあり。 類從本には「旅」の部にあり。 | ||||
(五八五) | かたしきの |
眞淵は「さえわびぬといへる句わろし」と評せり。 | |||
(五八六) | あかつきの夢の枕に雪つもりわがねざめ訪ふみねのまつ風 | 類從本には「旅」の部にあり。 眞淵は「夢の枕、後なり」と評せり。 | |||
屛風の繪に山家に松かけるところに旅人あまたあるをよめる |
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(五八七) | まれにきて聞くだにかなし山がつの苔のいほりの庭の松風 | 類從本には「旅」の部にあり。 | |||
(五八八) | まれに來て稀に宿かる人もあらじあはれとおもへ庭の松風 | 類從本には「旅」の部にあり。 | |||
相模川といふ川あり月さし出でてのち舟にのりてわたるとて |
類從本には「……よめる」とあり。 | ||||
(五八九) | 夕づく夜さすや |
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あさぼらけ八重のしほぢ霞み渡りて空も一つにみえ侍りしかば |
類從本には「……よめる」とあり。 | ||||
(五九〇) | 空や海 |
類從本には第二句「波や空とも」とあり。第三句、貞享本には「見えわかぬ」「えぞわかぬ」と二通りに記し、類從本・定家所傳本には「えぞわかぬ」と記せり。 | |||
箱根の山をうち出て見れば浪のよる小島あり、供の者に此うらの名は知るやと尋ねしかば、伊豆の海となむ申すと答へ侍りしをききて |
類從本には「供の者に此海の名」とあり。 | ||||
(五九一) | 續後撰 箱根路をわがこえくれば伊豆の海やおきの小島に波の寄るみゆ | 定家所傳本には「われこえくれば」とあり。 眞淵この歌に○を附し、「かくまではいかでよみたまふらんと常にめでられるめり。萬葉に、あふさかをけさこえくればあふみのみ白ゆふ花に浪たちわたる、てふをもてよみ給ひけん、それよりもまされり」と評したり。 | |||
二所へ詣でたりし |
類從本には「二所へまうでし下向に春雨いたく降しかば讀る」とあり。 | ||||
(五九二) | 春雨にうち |
類從本には「旅」の部にあり。 第二句イ「こぼちつつ」を眞淵は消し、「萬葉に、あし引のやまにゆきけん山人の心もしらず山人やたれ」と註せり。 | |||
(五九三) | 春雨はいたくな降りそ |
類從本には「旅」の部にあり。 | |||
同詣下向の後朝にさぶらひども見えざりしかばよめる |
類從本には「二所下向の後朝にさぶらひども見えざりしかば」とあり。 | ||||
(五九四) | 旅をゆきし跡のやどもりおれおれにわたくしあれや今朝は |
類從本及び貞享本には第三句「をれをれに」とあり。 類從本には別に「イをのをのに」と註せり。定家所傳本には「おのおのに」とあり。また貞享本には結句「今朝はまたこん」類從本・定家所傳本には「今朝はいまだこぬ」とあり。 | |||
ある人都の方へのぼり侍りしにたよりにつけてよみて遣はす |
類從本には「……つかはす歌」とあり。 | ||||
(五九五) | 夜を寒み獨り寢覺の床さえてわが衣手に露ぞおきける | 類從本・定家所傳本には結句「霜ぞ」とあり。 眞淵この歌に○を附し、「獨ねざめのこの句、いま少しふさはず」と評せり。 | |||
(五九六) | かかる |
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(五九七) | 都べに夢にもゆかむ |
原本初句「都人に」とあり。一本及び類從本によりて改む。 | |||
(五九八) | 都より吹き |
類從本には、第四句「忘るなとだにも」と八字音にしたり。眞淵この歌に○を附す。 | |||
(五九九) | 原本には初句「うちたへて」類從本には「打絕て」定家所傳本には「うちたえて」とあり。眞淵の說によりて改む。 | ||||
(六〇〇) | 岩根ふみいくへの峰を越えぬとも思ひも |
類從本・定家所傳本 | |||
五月の頃みちのくにへまかれりし人の許に扇など遣はし侍りし中に時鳥の書きたる扇にかきつけ侍りし |
類從本には「五月の頃陸奧へまかれりし人のもとにあふぎなどあまたつかはし侍し中に郭公かきたる扇にかきつけ侍りし歌」とあり。 | ||||
(六〇一) | たち別れいなばの山の時鳥まつとつげこせ歸りくるがに | 定家所傳本には結句「歸るくるがに」とあり。 | |||
近うつかふ女房遠き國に罷らむとて暇申し侍りしかば |
類從本には「ちかうめし | ||||
(六〇二) | 山遠み雲井に雁の越えていなば我のみひとりねにや |
原本結句「鳴なん」とあり。「鳴かなむ」「鳴きなむ」何れか明かならざれども、定家所傳本及び佐佐木博士の「校註金槐和歌集」によりて「鳴きなむ」とす。 | |||
遠き國へまかれりし人八月ばかりには歸り參るべきよしを申して九月までに見えざりしかば彼の人のもとにつかはし侍りし |
類從本には「……見えざりしかば人の許につかはし侍しうた」とあり。 | ||||
(六〇三) | こむとしもたのめぬうはの空にだに秋風ふけば雁は來にけり | 類從本には「戀」の部にありて、初句を「こぬとしも」とあり。 | |||
(六〇四) | 今 |
類從本には「戀」の部にあり。 | |||
素暹法師物へまかり侍りけるにつかはしける |
類從本には「侍り」の語なし。 | ||||
(六〇五) | 續拾遺 沖つ波 |
類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 | |||
返 し | |||||
續拾遺 濱千鳥八十島かけてかよふともすみこし浦をいかが忘れむ | 類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 | ||||
秋の頃いひなれたる人の物へまかりしに便につけて書など遣はすとて |
類從本には「秋のころいひなれにし人のもとへまかりしに便につけて文などつかはすとて」とあり | ||||
(六〇六) | うはの空に見し面影を思ひ出でて月になれにし秋ぞこひしき | 類從本には「戀」の部にあり。 | |||
(六〇七) | 思ひいでよ見し世はよそになりぬともありし |
類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。なほ「秋の | |||
忍びていひわたる人ありき遙なるかたへゆかむといひ侍りしかば |
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(六〇八) | ゆひそめて馴れしたぶさの |
類從本・定家所傳本には第四句「今に」とあり。 | |||
遠き國へまかれりし人のもとより見せばや袖のなど申しおこせたりし返事に |
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(六〇九) | われゆゑにぬるるにはあらじ |
類從本・定家所傳本には結句「露にぞありけん」とあり。眞淵は「から衣はかり衣か」と評せり。 | |||
法眼定忍[5]にあひて侍りし時大峯山の物語などをしいへるを聞きて後によめる |
類從本には「……物語などせし聞きて後よめる」とあり。 | ||||
(六一〇) | おく山の苔の |
類從本には「神祇」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
(六一一) | すずかけの苔おりぎぬの |
類從本には「神祇」の部にあり。 類從本には第四句「いく木の本に」とあり。 定家所傳本には第三四句「ふる衣をてもこのもに」とあり。 | |||
(六一二) | いくかへり |
類從本には「神祇」の部にあり。 眞淵は「そみかくだは蘇民書札なり」と註せり。 | |||
伊勢御遷宮の年の歌 |
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(六一三) | 神風やあさひの宮の |
類從本には「神祇」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
建保六年十一月素暹法師 于時 胤行 下總國に侍りし比のぼるべきよし申し遣はすとて |
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(六一四) | 戀しともおもはでいかが久かたのあまてる神も空に知るらむ | 類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。吾妻鏡には第二句「いはば」とあり。 | |||
神祇の歌の中に |
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(六一五) | いにしへの神代のかげぞのこりける天の岩戶のあけがたの月 | 以下三首、類從本には「神祇」と題し、「神祇」の部にあり。 定家所傳本には第四句「天のいはせの」とあり。 | |||
(六一六) | 月さゆるみもすそ川の底きよみいづれの代にか澄みはじめけむ | ||||
(六一七) | 原本結句「きし高くして」とあり 類從本・定家所傳本には「きゝ高くして」とあり。 | ||||
(六一八) | 類從本には「賀」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | ||||
寄松祝といふ事を |
類從本には「松によする祝といふ事をよめる」とあり。 | ||||
(六一九) | 八幡山 |
類從本には「賀」の部にあり。 定家所傳本には第三句「たねしあらば」とあり。 | |||
鶴岡別當僧都の許に雪のふれりしあしたよみて遣はす |
類從本には「……雪のふりし朝よみてつかはすうた」とあり。 | ||||
(六二〇) | 鶴が岡あふぎて見れば嶺の松こずゑはるかに雪ぞつもれる | 類從本には「冬」の部にあり。 定家所傳本には初句「つるのおか」とあり。 | |||
(六二一) | 八幡山 |
類從本には「冬」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
河 邊 月 |
類從本には「賀」の部にあり。眞淵はこの歌の初句につき「千早振てふ事は惡しき神の事なり。すべての神に冠らするは誤なり。まして伊勢の皇神をや」と評せり。 | ||||
(六二二) | 千はやぶるみたらし川の底 |
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屛風に賀茂へまうでたる所 |
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(六二三) | たちよればころもですずしみたらしや影みる岸の春の川なみ | 類從本には結句「松の川波」とあり。眞淵は「見たらしやのや、いかが。影見る岸、是も後なり」と評せり。 | |||
同じ社をよめる |
類從本には「加茂祭歌」と題して、「神祇」の部にあり。 | ||||
(六二四) | あふひ草かづらにかけて千はやぶる賀茂の祭りを |
類從本・定家所傳本には結句「ねるや」とあり。 猶ほ眞淵この歌に○を附す。 | |||
(六二五) | 何しおはばその神山のあふひ草かけて昔を思ひいでなむ | 類從本には「戀」の部にあり。 | |||
社 頭 霜 |
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(六二六) | さよふけていなりの |
類從本にては「冬」の部にあり。定家所傳本には第二句「宮の」類從本には第三句「杉の上に」とあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
屛風にかきつけ侍りし |
類從本には「屛風の歌」とあり。 | ||||
(六二七) | 住 |
類從本・定家所傳本には初句「住の江の」とあり。 | |||
社 頭 月 |
類從本には「神祇」の部にあり。 | ||||
(六二八) | 月のすむ北野の宮の小松原いく世を經てか神さびにけむ | ||||
松 間 雪 |
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(六二九) | 雪つもる和歌の松原ふりにけりいく世へぬらむ |
類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 眞淵は「此浦を和歌と書きて歌の事とするは笑ふにたへぬひがごとなり」と評せり。 | |||
月前千鳥 |
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(六三〇) | 玉津島和歌の松原夢にだにまだ見ぬ月に千鳥なくなり | 眞淵は「四三句後なり」と評せり。 | |||
社頭夏月 |
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(六三一) | ながむれば吹く風凉し |
類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 眞淵は「ながむるは、心に思ひあるとき默然として物をまもりをるをいへり。ただ見ることにあらず」と評せり。 | |||
三輪社を |
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(六三二) | 今つくる三輪の |
類從本には「神祇」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
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(六三三) | 年つもる |
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(六三四) | み熊野の |
類從本には「冬」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
社頭時鳥 |
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(六三五) | 五月雨を |
類從本には「夏」の部にあり。 | |||
法眼定忍[5]にあひて侍りしに那智の山の瀧のありさまを語れりしかば |
類從本には「那智瀧の有さまかたりしを」とあり。 | ||||
(六三六) | みくま野のなちのお山に引くしめのうちはへてのみおつる瀧かな | 類從本には「神祇」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
屛風に同じ山をかきたる所 |
類從本には「屛風になちのみ山書たる所」とあり。 | ||||
(六三七) | 冬ごもり那智の嵐の寒ければ苔の衣のうすくやあるらむ | 類從本には「冬ごもる」とあり。 | |||
走湯山參詣の時 |
類從本には「走湯山に參詣の時歌」とあり。 | ||||
(六三八) | 定家所傳本には初句「わたつうみの」とあり。原本及び類從本には結句の「うべ」を「むべ」に作れども眞淵の訂正に從へり。 眞淵はこの歌に○を附し、「わたつみは海津持にて、海神の名なるを、たゞ海のことにもいへり。わだつうみといふは俗のひがごとぞ」と註せり。 | ||||
(六三九) | 類從本・定家所傳本には初句「はしるゆの」とあり。類從本の「むべ」の訂正同前。 眞淵この歌に○を附す。 | ||||
(六四〇) | 玉葉 伊豆の國や山の南に出づる湯のはやきは神の |
類從本には初句「伊の國」とあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
二所詣し侍りしに |
類從本には「二所詣し侍し時」とあり。 | ||||
(六四一) | 續後撰 ちはやぶる伊豆のお山の玉椿やほよろづ代も色はかはらじ | 類從本には「賀」の部にあり。 | |||
社頭松風 |
類從本には「神祇」の部にあり。 | ||||
(六四二) | |||||
故鄕を神祇によせて詠みける |
類從本には「故鄕の心を」とあり。 | ||||
(六四三) | いそのかみふるき都 |
類從本・定家所傳本には第四句「たたるにしあれや」とあり。 | |||
神祇の歌數多よみ侍りしに |
類從本には「神祇」の部にあり。 | ||||
(六四四) | かみつけの |
定家所傳本には第三句「からやしろ」とあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
(六四五) | さとみこがみ湯たて笹のそよそよになびきおきふしよしや世の中 | 類從本には「神祇」の部にあり。 | |||
(六四六) | 新後撰 みづがきの久しき世よりふゆだすきかけし心は神ぞしるらむ | 類從本には「神祇」の部にあり。 | |||
得功徳歌 |
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(六四七) | 定家所傳本には初句の「の」なし。 | ||||
懺 悔 歌 |
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(六四八) | 塔をくみ堂をつくるも人なげき |
定家所傳本には第三句「ひとのなげき」とあり。 | |||
思罪業歌 |
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(六四九) | 初句、貞享本、類從本及び定家所傳本みな「ほのほのみ」なるに、眞淵校訂の際に「ほのぼのと」と訂正せり。 | ||||
大乘作中道觀歌 |
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(六五〇) | 世の中は鏡にうつる影にあれやあるにもあらずなきにもあらず | 眞淵この歌に○を附す。 | |||
心の心をよめる |
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(六五一) | 神といひ |
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祝の心を |
類從本には「賀」の部にあり。結句貞享本、類從本共に「年老いにけり」とあり。誤か。猶ほ貞享本には第四句「千とせふとも」とあり。 | ||||
(六五二) | 姬島の小松がうれにゐるたづの |
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(六五三) | 類從本には「賀」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | ||||
寄松祝といふ事を |
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(六五四) | 田鶴のゐる |
類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
(六五五) | 君が世はなほしも盡きじ |
類從本には「松によする祝といふ事を」と題して「賀」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
(六五六) | 續後撰 |
類從本には「賀」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
(六五七) | 住の江に |
類從本には「賀」の部にあり。 定家所傳本には初句「すみよしの」とあり。 | |||
(六五八) | 類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 | ||||
(六五九) | くらゐ山 |
類從本には「賀」の部にあり。 | |||
障子の繪に岩に松の生ひたる所 |
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(六六〇) | 岩の上におふる小松の年も經ぬいく千代までと契りおきけむ | 類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 | |||
寄 竹 祝 |
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(六六一) | 竹の葉にふりおほふ雪のうれを重み下にも |
類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
(六六二) | なよ竹の |
類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
(六六三) | なよ竹のちぢのさ枝のはは枝のそのふしぶしによよはこもれり | 類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 | |||
(六六四) | あひおひの袖のふれにし宿の竹よよは經にけりわが友として | 類從本には「一本及印本所載歌」の 眞淵はこの歌の初句につき「あひおいは相老の意なるを後人あやまれり」と評せり。 | |||
寄苔祝といふ事を |
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(六六五) | 岩にむす苔のみどりの深き色をいく |
類從本には「賀」の部にあり。 | |||
梅花を瓶にさせるをよめる |
類從本には「梅の花をかめにさせるをみてよめる」とありて、「賀」の部にあり。 眞淵は「萬葉に、玉だれの小簾と書しは、皆をすとよむ證あり。この玉だれのこがめも、をがめを後に誤りてこがめとかきしものなり」と評せり。 | ||||
(六六六) | 玉だれのこがめにさせる梅の花萬代ふべきかざしなりけり | ||||
櫻花さけるを見て |
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(六六七) | 類從本には「はなの咲るを見て」とありて、「賀」の部にあり。 | ||||
慶賀の歌 |
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(六六八) | 玉葉 ちぢの春 |
類從本には「賀」の部にあり。定家所傳本には第四句「花と月とを」とあり。眞淵は「月と花とを、後なり」と評せり。 | |||
(六六九) | 君が代に猶ながらへて月きよみ秋のみ空のかげを待たなむ | 類從本には「述懷」の部にあり。 | |||
(六七〇) | 萬代に見るともあかじ長月の |
類從本には「賀」の部にあり、特に「月によする祝」と題せり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
(六七一) | 朝にありてわが代はつきじ天の戶や |
類從本には、この歌と次の歌とに「いはひのうた」と題して「賀」の部にあり。 | |||
(六七二) | 續古今 君が代もわが世もつきじ石川やせみの小川のたえじとおもへば | ||||
(六七三) | 續古今 宮柱ふとしきたてて |
類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
大嘗會の年の歌に |
類從本には「賀」の部に入れ、「大嘗會の年の歌」(にナシ)と題し、結句「あらなむ」とあり。猶ほ原本結句「有なむ」とあり。 眞淵この歌に○を附す。 | ||||
(六七四) | |||||
(六七五) | 今つくる黑木の |
類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。第二句の「もろ」を「むろ」に作る。眞淵この歌に○を附す。 | |||
太上天皇御書下預時歌 |
この歌と次の二首、類從本にては「述懷」の部にあり。 | ||||
(六七六) | おほ君の |
貞享本には第三句「ちゝわくに」とありて「わく」の右には「はは」と註せり。定家所傳本にも「ちちわくに」とあり。 | |||
(六七七) | 新勅撰 山はさけ海はあせなむ世なりとも君にふた心 |
貞享本及び定家所傳本には結句「わがあらめやも」類從本には「我あらめやも」とあり。齋藤茂吉氏の「新訂金槐和歌集」[8]には「しばらくわれと讀むべし」と註せり。 眞淵この歌に○○を附し、「ををしさ、まことに大人の誓言ぞ」と評せり。 | |||
(六七八) | ひむがしの國に |
貞享本には第二句「わがをれば」と明かに記し、類從本には「我をれば」とあり。 | |||
相州の土屋といふ所に年九十にあまれるくち法師ありおのづからきたり昔語などせしついでに身のたちゐにたへずなむなりぬる事をなくなく申して出でぬ時に老といふ事を人々に仰せてつかうまつらせしついでによみ侍りし |
眞淵は「相州」の語につき「某州と書くことはこの國にはなし。相模の國とあるべし」といへり。 | ||||
類從本には「……よみ侍る歌」とあり。 | |||||
(六七九) | 定家所傳本には第三句「おもひいでつ」とあり。 | ||||
(六八〇) | 新勅撰 思ひ出でて |
眞淵この歌に○を附す。 | |||
(六八一) | 貞享本には第三四句「わすれなくなにと昔を」とあれど、傍註及び類從本・定家所傳本によりて改む。 | ||||
(六八二) | 道とほし腰はふたへにかがまれり杖にすがりて |
定家所傳本には第四句「杖にすがりてぞ」とあり。類從本には第五句「そこまでも」とあり。 | |||
(六八三) | さりともと思ふものから日を經てはしだいしだいに弱る悲し |
類從本・定家所傳本には結句「悲しさ」とあり。 | |||
雜の歌の中に |
類從本には「雜歌」と題せり。 | ||||
(六八四) | 新勅撰 世にふればうきことの葉のかず |
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(六八五) | 歎きわび世を |
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(六八六) | いづくにて世をばつくさむ |
眞淵この歌に○を附す。 | |||
(六八七) | 春秋はかはりゆ |
類從本・定家所傳本には第二句「ゆけども」結句「まつぞ久しき」とあり。猶ほ定家所傳本にては第三句を「わたつうみの」と六音にせり。 | |||
屛風の歌 |
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(六八八) | とよ国のきくの濱松おいにけり知らずいく世の年か經にけむ | 定家所傳本には第二句「きくのそままつ」とあり。 | |||
(六八九) | 年ふれば老 |
類從本には「老にたふれて」とあり。 | |||
屛風の繪に野中に松三本おひたる所をきぬかづける女一人とほりたり |
類從本には「……きぬかぶれる女人とをりたる」とあり。 | ||||
(六九〇) | おのづから |
眞淵この歌に○を附す。 | |||
三崎といふ所へまかれりし道に磯邊の松としふりにけるを見てよめる |
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(六九一) | 玉葉 磯の松いくひささにかなりぬらむいたく |
眞淵この歌に○を附し、「二句いくひさひさを略せしなり」と評せり。 | |||
ものまうでし侍りし時磯のほとりに松ひと本ありしを見てよめる |
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(六九二) | 梓弓いそべにたてるひとつ松あなつれづれげ友なしにして | 眞淵は「あなつれ〳〵げは、萬葉のあなたづ〳〵しをなほせしなれど、あしし」と評せり。 | |||
あら磯に浪のよるを見てよめる |
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(六九三) | 大海の磯もとどろに |
類從本には第三句「よる浪の」として「イよする波」と註せり。 | |||
又のとし二所へまゐりたりし時箱根の水海を見てよみ侍る歌 |
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(六九四) | 玉くしげ箱根の海はけけれあれや |
類從本には「玉くしげ箱根のみうみ(イ海は)けけれあれや | |||
民のかまどより烟のたつを見てよめる |
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(六九五) | みちのくにここにやいづくしほがまの浦とはなしにけぶり立つ見ゆ | 類從本には第二句「爰やいづく」とありて「に」を脫せり。 | |||
濱へ出でたりしに海士のたく藻しほ火をを見てよめる |
類從本には「たく」「よめる」の語を脫せり。 | ||||
(六九六) | いつもかくさびしきものか |
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山の端に日の入るを見てよみ侍りける |
類從本には「……見てよめる」とあり。 | ||||
(六九七) | 貞享本に第二句「ちしほのまつり」とあるは誤なるべし。 | ||||
二所詣下向に濱邊の宿のまへに前川といふ川ありなが雨ふりて水まさりしかば日暮れて渡り侍りし時よめる |
類從本には「……水まさりにしかば……」とあり。 | ||||
(六九八) | 濱べなるまへの川せを行く水の早くも今日のくれにけるかな | ||||
かち人の橋わたりたる所 |
類從本には「……わたる所」とあり。 | ||||
(六九九) | かち人のわたればゆるぐかつしかのままの |
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故鄕の心を |
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(七〇〇) | いにしへを忍ぶとなしに |
貞享本には第二句「なくに」とあり。類從本による。 | |||
まないたといふ物の上にかりをあらぬさまにして置きたるを見て |
類從本には「……見てよめる」とあり。 | ||||
(七〇一) | あはれなり雲井のよそに行く雁もかかるすがたになりぬと思へば | 類從本には初句「あはれなる」第三句「行雁の」とあり。 | |||
黑 |
定家所傳本には初句「うばたまや」とあり。貞享本結句「鳴なり」は誤なるべし。 眞淵この歌に○を附す。 | ||||
(七〇二) | ぬば玉のやみのくらきにあま雲のやへ雲がくれ雁ぞ鳴くなる | ||||
鶴 |
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(七〇三) | 澤邊より雲井にかよふあしたづも |
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千 鳥 |
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(七〇四) | 朝ぼらけ跡なき浪に鳴く千鳥あなことごとしあはれいつまで | ||||
櫻 |
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(七〇五) | |||||
(七〇六) | いにしへの |
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蘆 |
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(七〇七) | 難波がたうきふししげき |
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無 常 を |
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(七〇八) | かくてのみありてはかなき世の中をうしとやいはむ |
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(七〇九) | |||||
わび人の世にたちめぐるを見て |
類從本には「……見てよめる」とあり。 | ||||
(七一〇) | とにかくに |
類從本には第二句「哀有ける」とあり。 | |||
人心不常といふ事を |
類從本には「……ことをよめる」とあり。 | ||||
(七一一) | とにかくにあなさだめな |
類從本には第二句「さだめなの」第四句「喜ぶものあらば」とあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |||
世間つねならずといふことを人のもとによみて遣はし侍りし |
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(七一二) | 世の中にかしこきことも |
類從本・定家所傳本には第三句「はかなきも」とあり。 眞淵は「思ひしとけば、後なり」と評せり。 | |||
類從本には「……はかなくなりにけると聞きて……」とあり。 | |||||
(七一三) | 聞きてしも驚くべきにあらねどもはかなき夢の世にこそありけれ | ||||
道のほとりに幼き童の母を尋ねていたく泣くを其あたりの人に尋ねしかば父母なむ身まかりにしと答へ侍りしを聞きて |
類從本には「……よめる」とあり。 | ||||
(七一四) | いとほしや見るに淚もとどまらず親もなき子の母を尋ぬる | 眞淵この歌に○を附す。 | |||
慈悲の心を |
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(七一五) | 物いはぬ |
類從本・定家所傳本には第四句「あはれなるかなや」とあり。 眞淵はこの歌の第三句につき「すらか、だにか、一つこそいへ」と評せり。 | |||
建曆元年七月洪水漫レ天土民愁歎きせん事を思ひて一人奉レ向二本尊一聊致レ念と云 |
類從本には「建曆元年七月洪水漫レ天一氏土民愁歎せむことをおもひて一人奉レ向二本尊一聊致二祈念一」とあり。 | ||||
(七一六) | 時により |
眞淵この歌に○を附す。 |
右之一帖者鎌倉右大臣家集京極中納言 定家卿 門弟此道之達者 云々 然最初雖部類在不審尙之間重而改之畢尤可爲證本類乎
柳 營 亞 槐 判
△鎌倉右大臣實朝卿 | 右大將賴朝卿之二男 |
母平時政之女二位尼政子 |
⛬義家 | 八幡太郞 | 爲義 | 六條判官 | 義朝 | 左馬頭 | 賴朝 | 征夷將軍 |
實朝 | 右大臣正三位征夷大將軍 |
承久元年爲公曉之被討行年二十八歲治世十六年 |
右府 常磐井相國 衣笠內府 | 此三人定家卿門弟之內殊に上手 |
公卿補任云
從三位源實朝四月十日敍五月二十六日吏任右中將
故前大納言賴朝卿二男母二位尼
建仁三年九月七日敍從五位下任征夷大將軍同十月二十四日任右兵衞佐元久元年正月五日敍從五位上臨時三月六日任右少將同二年正月五日正五下同廿九日兼加賀介轉權中將建永元年二月廿二日敍從四位下承元元年正月五日敍從四位上同二年十二月九日敍正四位下同四年 庚午 右中將建曆二年 壬申 十二月十一日從二位同三年二月廿七日非參議正二位造閑院賞左中將美濃權守 中納言中將位第一之例也 建保四年六月二十日任右中將七月廿日轉左同五年 丁丑 權中納言正二位左中將同六年 戊寅 右大臣正二位十二月二日任左大將如元內大臣正二位十月九日任元權大納言左大將如元十二月二日轉右正月十三日任三月六日兼左大將同日爲左馬寮監十月八日任內大臣權中納言正二位左將正月十三日任權大納言同七年右大臣正二位右大將征夷大將軍正月廿七日誅初參八幡別當同於社頭被誅之
貞享四丁卯歲仲夏上浣
二條通寺町入
大 森 太 右 衛 門 刊 行
[入力者補足]
編集- ↑ 底本ママ。齋藤茂吉の『新訂 金槐和歌集』(昭和7年の増補版)では「けかう」となっている。
- ↑ 底本ママ。「こむ(込む/來む)」か? 齋藤茂吉は、『新訂 金槐和歌集』(昭和7年の増補版)では「こむ」とし、日本古典全書『金槐和歌集』(昭和25年)では「
來 む」としている。 - ↑ 底本“。(句点)”欠。
- ↑ 誤植か? 正しくは「つかふ」である。
- ↑ 5.0 5.1 これらの詞書によって、熊野の大峯山、および那智の滝について詠んだという点からして、中級の修験者であろうと推察される人物だが未詳。この人物について論文有り - 犬井, 善壽「『閑月和歌集』所載実朝歌一首の本文 : 『金槐和歌集』の本文流伝との関連において」 (pdf) 、『筑波大学平家部会論集』第9巻、筑波大学平家部会、つくば市筑波大学、2002年6月30日、 30-36頁、2020年9月18日閲覧。
- ↑ 底本“。(句点)”脱。代わりに手前の「り」に傍点(圏点)あり。
- ↑ 底本ママ。誤植か? 齋藤茂吉の『新訂 金槐和歌集』(昭和7年の増補版)でも日本古典全書『金槐和歌集』(昭和25年)でも「虛空」となっている。
- ↑ 冒頭の序にある「齋藤茂吉氏の『新訂金槐和歌集』」(昭和4年刊行の昭和7年増補版)のことである。
- ↑
藐姑射 は神仙の住む神話上の仙山だが、太上天皇(上皇)の地位を指す唐名でもある。