白文 書き下し文 訳文
仙曹舊賜文房友 せん ふるたま文房ぶんぼう[1]とも 仙人たちが、その昔、賜い下さった文房の友[2]
奉寄秋閨玩景餘 秋閨しゅうけい[3]たてまつ玩景がんけい 秋の夜長の女部屋に差し上げよう、風景を玩ぶ暇に
應向梧桐描月色 まさ梧桐ごどうかって月色げっしょくえが さあ、梧桐に向かって月影つきかげ[4]のもよおいを描写し
肯隨燈火注蟲魚 あえ灯火とうかしたがって虫魚ちゅうぎょちゅうするべし[5] 進んで灯火ともしびに付き従って虫や魚の様子も点出てんしゅつしなさい


注釈

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  1. 文の部屋、つまり書斎。
  2. 文房具のこと。特に筆・硯・墨など。文人には必須の道具を、書斎の友と洒落ていう。
  3. 「閨」は閨房(女部屋)。「秋閨」で、秋の夜長に無聊をかこつ女部屋の意。
  4. 月の光のこと。
  5. 灯火の燃える様子やそこに群がる虫や魚の様子を、上句で述べた月夜の光とそれに照らされた梧桐の木を大枠にして描き出した詩文に、注釈を入れるように点綴てんてつして書き加えよ、という意味。


 

この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。