近郊緑地保全計画を決定した件

首都圏近郊緑地保全法(昭和四十一年法律第百一号)第四条の規定に基づき、近郊緑地保全計画を次のように決定したので、首都圏整備法(昭和三十一年法律第八十三号)第二十二条第三項及び首都圏整備法施行規則(昭和三十三年首都圏整備委員会規則第一号)第一条第一項の規定により公表する。

平成十七年九月二十二日
国土交通大臣  北側  一雄

首都圏近郊緑地保全法(昭和四十一年法律第百一号、以下「法」という。)第四条の規定に基づき、小網代近郊緑地保全区域(以下「保全区域」という。)に係る近郊緑地保全計画を次のように定める。

保全区域は、宅地化等の都市的な土地利用に関する圧力がある三浦半島において、良質な自然環境をまとまりのある形で残している首都圏近郊の貴重な近郊緑地であり、地域住民等の環境保全活動を背景として、首都圏住民等により秩序ある自然観察が行われる場所ともなっている。

また、当該区域は、海辺と陸域の緑が一体となって形成された多様な自然環境を基盤として、森林、河川、湿地、干潟及び海が自然状態で連続的にまとまり、希少種を含む集水域生態系を形成する等、首都圏でも唯一と言うべき特色ある貴重な緑地である。

一  保全区域内における行為の規制その他当該近郊緑地の保全に関する事項

1  保全の基本方針

法第一条の目的を達成するため、保全区域においては、次に掲げる事項を基本方針として、良好な自然環境を保全するものとする。

当該保全区域を自然的特徴及び自然とのふれあい機能確保の観点から整理すると、通称浦の川下流の淡水湿原、河口の湿地、干潟及び小網代湾奥北に開く小規模な谷からなる「湿原・河口湿地・干潟ゾーン」、浦の川源流域及び中流域を含み県道二十六号線に接する「浦の川源流・上流域ゾーン」、浦の川上流域の南北に位置する「北の谷流域ゾーン」及び「南の谷流域ゾーン」に分けられる。

当該近郊緑地の状態を損なうおそれのある行為の規制その他保全については、集水域生態系の一体性を維持することを前提として、各ゾーンの特性に応じたものとする。

⑴  区域の自然的特徴及び自然とのふれあい活動を踏まえた緑地等の適切な保全

保全区域全体として、森林の減少又は分断を防止するのみならず、河川、湿地、干潟等を含めた総合的な自然状態を保全するものとする。

①  「湿原・河口湿地・干潟ゾーン」においては、貴重な河口の塩水湿地及び干潟の水系に影響を与える行為の規制を重視するものとする。また、環境学習等各種の活動が期待されるゾーンであるので、自然環境への過度な負荷がないよう、利用者への指導及び誘導、パトロール等を含めた総合的な保全に取り組むものとする。特に、浦の川下流においては、淡水湿原の状態を維持するための管理活動を図るものとする。なお、小網代湾奥北へ開く小規模な谷については、生息・生育域を回復させる場とする等の利活用を検討する。

②  「浦の川源流・上流域ゾーン」においては、生物多様性の保全及び保水力の向上のため、樹林をはじめとする多様な自然状態に影響を与える行為について、総合的な規制を図るものとする。また、浦の川に沿った自然観察等が期待される場であるので、安全管理及び自然環境への負荷を抑制する観点から、利用者を適切に誘導するルートの確保を図るものとする。

③  「北の谷流域ゾーン」及び「南の谷流域ゾーン」においては、保水力の向上及び浦の川流域等への給水力の向上を図り、特に樹林の質的な劣化、量的な減少等の防止のための規制を図るものとする。また、「南の谷流域ゾーン」は、生物多様性の保全・回復の場として、利用者の活動を最小限に留めるために配慮するものとする。また、恒常的に保全区域全域の自然状態を把握し、適切な緑地管理の措置を行うものとする。

⑵  近郊緑地保全に関する普及啓発及び多様な主体との協働

国及び関係地方公共団体は、地域住民、企業、利用者その他近郊緑地の保全に関係する者に対し、当該近郊緑地の保全について普及啓発すること等により、緑地保全に向けた意識の醸成 と向上に努めるものとする。

関係地方公共団体は、保全区域内の自然環境又は景観の保全及び価値の啓発並びに環境教育の推進のため、保全区域内の緑地について、保全区域内の自然環境を損なわないよう留意しつつ、自然とのふれあい活動の拠点として適切に利活用するものとする。

また、関係地方公共団体は、当該普及啓発及び利用者への指導及び誘導、区域内パトロール、自然環境の保全・維持・回復等の活動に当たり、環境保全を目的とするNPO、ボランティア 等多様な主体と協働して取り組むこととする。

2  行為の規制に関する事項

保全区域においては、近郊緑地の状態を損なうおそれのある行為を抑制するものとする。知事は、次表(イ)欄に掲げる行為については、同表(ロ)欄に掲げる事項に留意し、当該行為による自然環境への影響を最小限とするために必要な助言又は勧告を行うことができる。

なお、保全区域内の樹林で良好な状態にあるものの現状に変更をきたす行為については、当該樹林の形態、林相、地勢等の特性を踏まえ、当該行為の種類、規模等を勘案のうえ、当該近郊緑地の状態に影響がないよう規制することができる。

(イ)規制の対象となる行為 (ロ)助言または勧告の基準及び配慮すべき事項
法第七条第一項第一号及び第二号に規定する行為

・当該行為を行う位置、工法等の変更により自然環境の改変を抑制するものとする。

・当該行為を行う土地の区域及び周辺区域の自然環境の改変の抑制に資する代替措置を実施するものとする。

法第七条第一項第三号に規定する行為

・原則として伐採を行わないものとする。

法第七条第一項第四号に規定する行為

・原則として水面の埋立て又は干拓を行わないものとする。

法第七条第一項第五号に規定する行為

・堆積の高さは一・五メートル以下とするものとする。

・堆積による周囲の自然環境への影響を最小限に留めるものとする。

・堆積の行われる土地及び周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和とならないものとする。

その他当該近郊緑地の保全に著しい支障を及ぼすおそれがある行為について、知事は、保全の基本方針を踏まえ、適切な助言または勧告を行うことができる。

3  その他当該近郊緑地の保全に関する事項

⑴  国及び関係地方公共団体は、保全区域及びその周辺における公共事業等の実施等においては、保全区域内の自然環境への影響に十分配慮する等、当該近郊緑地の保全に資するよう努めることとする。

⑵  関係地方公共団体は、保全区域内の自然環境の保全状況の把握に努め、届出なしに行われる行為又は虚偽の行為の届出を認めた場合は、これを是正する措置を行うものとする。

⑶  以上に掲げるもののほか、関係地方公共団体は、必要に応じ保全区域内の良好な自然環境を維持するための病害虫予防措置その他の保全措置を講ずるものとする。

二  保全区域内において当該近郊緑地の保全に関連して必要とされる施設の整備に関する事項

1  保全措置に関連して必要とされる施設について

保全区域内においては、次に掲げるもののうち、当該近郊緑地の適正な保全のために必要なものの整備を行うものとする。

⑴  当該近郊緑地の保全、適正な利活用又は普及啓発のための道路、散策路、広場、休憩所、解説板その他の施設又は設備

⑵  立入防止柵、標識等の管理施設

⑶  土砂崩壊防止施設

⑷  公衆便所

⑸  防火施設

⑹  自然景観の保持のための植栽

⑺  環境学習等の活動のためのビオトープ(生息・生育域)その他

2  施設整備計画に関する事項

⑴  施設整備の基本方針

保全措置に関連して必要とされる施設については、自然環境への影響を最小限としつつ、各ゾーンの特性に応じた効果的な整備を行うものとする。

①  「湿原・河口湿地・干潟ゾーン」においては、当該緑地の利活用及び保全活動を支える施設の整備、ビオトープをはじめとする生息・生育域の保全・維持・回復に向けた環境整備等を検討する。

②  「浦の川源流・上流域ゾーン」においては、浦の川に沿って利用者を安全に誘導するための適切な散策ルートを設ける。

③  「北の谷流域ゾーン」及び「南の谷流域ゾーン」において施設整備を検討する際には、樹林地としての特性に十分配慮するものとする。

⑵  多様な主体からの意見を反映した整備計画の策定等関係地方公共団体は、保全区域内における施設の整備及びその維持管理に関する具体的な計画を策定するに当たっては、学識経験者、環境保全を目的とするNPO、ボランティア等多様 な主体からの意見を踏まえるものとする。

三  近郊緑地特別保全地区の指定の基準に関する事項

1  指定の方針

保全区域内において、近郊緑地の保全の効果が特に著しい、又は特に良好な自然環境を有している重要な緑地については、これを近郊緑地特別保全地区に指定し、これを永続的に保全する。

2  指定の基準

近郊緑地特別保全地区は、保全区域の枢要な部分を構成している土地の区域とし、次に掲げる基準に該当するものについて指定するものとする。

⑴  首都及びその周辺の地域の住民の健全な心身の保持及び増進又はこれらの地域における公害若しくは災害の防止の効果が特に著しく、かつ特に良好な自然環境を有すること。

この基準の適合の確認にあたっては、以下の点に留意するものとする。

・保全区域内及びその周辺の土地利用の状況等に鑑み、公害又は災害の防止に必要な位置、規模及び形態を有するものであること。 ・地域の自然特性を顕著に示していること。 ・自然植生、豊かな野生生物の生息地等の良好な自然環境を有するものであること。

⑵  保全区域内における近郊緑地の効果的な保全のため、特に保全対策を講ずる必要があること。

この基準の適合の確認にあたっては、以下の点に留意するものとする。

・当該近郊緑地を保全するため、当該区域における樹木の伐採、建築物の増改築、土地の形質の変更等の規制その他の保全対策を特に講ずる必要がある区域であること。

3  指定にあたって特に配慮すべき事項

近郊緑地特別保全地区の指定にあたっては、近郊緑地の保全に資する他の地域地区等の指定状況を踏まえ、より高い緑地保全の効果が得られるよう配慮するものとする。

四  近郊緑地特別保全地区内における土地の買入れに関する事項

都市緑地法(昭和四十八年法律第七十二号)第十七条の規定による土地の買入れは、私人が所有し、かつ、建築物その他の工作物の新築、土地の造成等の行為について、同法第十四条第一項の許可を得ることができないため、その土地の利用に著しい支障をきたすこととなるものについて、当該土地の所有者から当該土地を神奈川県において買い入れるべき旨の申し出があった場合において行うものとする。

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