貴族院令
原文
編集朕󠄁大日本帝國憲󠄁法ノ明文󠄁ニ依リ樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ貴族院令ヲ發布ス此ノ勅令ヲ實施スルノ時期ハ朕󠄁カ更󠄁ニ命スル所󠄁ニ依ルヘシ
御名御璽
明治二十二年二月十一日
內閣總理大臣 | 伯爵󠄂 | 黑田淸隆 |
樞密院議長 | 伯爵󠄂 | 伊藤博󠄁文󠄁 |
外務大臣 | 伯爵󠄂 | 大隈重信 |
海軍大臣 | 伯爵󠄂 | 西鄕從道󠄁 |
農商務大臣 | 伯爵󠄂 | 井上 馨 |
司法大臣 | 伯爵󠄂 | 山田顯義 |
大藏大臣兼內務大臣 | 伯爵󠄂 | 松󠄁方正義 |
陸軍大臣 | 伯爵󠄂 | 大山 巖 |
文󠄁部大臣 | 子爵󠄂 | 森 有禮 |
遞信大臣 | 子爵󠄂 | 榎本武揚 |
勅令第十一號
- 貴族院令
- 第一條
- 貴族院ハ左ノ議員ヲ以テ組織ス
- 一 皇族
- 二 公󠄁侯爵󠄂
- 三 伯子男爵󠄂各〻其ノ同爵󠄂中ヨリ選󠄁擧セラレタル者
- 四 國家ニ勳勞アリ又ハ學識アル者ヨリ特ニ勅任セラレタル者
- 五 各府縣ニ於テ土地或ハ工業商業ニ付多額ノ直接國稅ヲ納󠄁ムル者ノ中ヨリ一人ヲ互選󠄁シテ勅任セラレタル者
- 第二條
- 皇族ノ男子成年ニ達󠄁シタルトキハ議席ニ列ス
- 第三條
- 公󠄁侯爵󠄂ヲ有スル者滿二十五歲ニ達󠄁シタルトキハ議員タルヘシ
- 第四條
- 伯子男爵󠄂ヲ有スル者ニシテ滿二十五歲ニ達󠄁シ各〻其ノ同爵󠄂ノ選󠄁ニ當リタル者ハ七箇年ノ任期ヲ以テ議員タルヘシ其ノ選󠄁擧ニ關ル規則ハ別ニ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
- 前󠄁項議員ノ數ハ伯子男爵󠄂各〻總數ノ五分󠄁ノ一ヲ超過󠄁スヘカラス
- 第五條
- 國家ニ勳勞アリ又ハ學識アル滿三十歲以上ノ男子ニシテ勅任セラレタル者ハ終身議員タルヘシ
- 第六條
- 各府縣ニ於テ滿三十歲以上ノ男子ニシテ土地或ハ工業商業ニ付多額ノ直接國稅ヲ納󠄁ムル者十五人ノ中ヨリ一人ヲ互選󠄁シ其ノ選󠄁ニ當リ勅任セラレタル者ハ七箇年ノ任期ヲ以テ議員タルヘシ其ノ選󠄁擧ニ關ル規則ハ別ニ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
- 第七條
- 國家ニ勳勞アリ又ハ學識アル者及各府縣ニ於テ土地或ハ工業商業ニ付多額ノ直接國稅ヲ納󠄁ムル者ヨリ勅任セラレタル議員ハ有爵󠄂議員ノ數ニ超過󠄁スルコトヲ得ス
- 第八條
- 貴族院ハ天皇ノ諮詢ニ應ヘ華族ノ特權ニ關ル條規ヲ議決ス
- 第九條
- 貴族院ハ其ノ議員ノ資󠄁格及選󠄁擧ニ關ル爭訟󠄁ヲ判󠄁決ス其ノ判󠄁決ニ關ル規則ハ貴族院ニ於テ之ヲ議定シ上奏シテ裁可ヲ請󠄁フヘシ
- 第十條
- 議員ニシテ禁錮以上ノ刑ニ處セラレ又ハ身代限ノ處分󠄁ヲ受ケタル者アルトキハ勅命ヲ以テ之ヲ除名スヘシ
- 貴族院ニ於テ懲罰ニ由リ除名スヘキ者ハ議長ヨリ上奏シテ勅裁ヲ請󠄁フヘシ
- 除名セラレタル議員ハ更󠄁ニ勅許アルニ非サレハ再ヒ議員トナルコトヲ得ス
- 第十一條
- 議長副議長ハ議員中ヨリ七箇年ノ任期ヲ以テ勅任セラルヘシ
- 被選󠄁議員ニシテ議長又ハ副議長ノ任命ヲ受ケタルトキハ議員ノ任期間其ノ職ニ就クヘシ
- 第十二條
- 此ノ勅令ニ定ムルモノヽ外ハ總テ議院法ノ條規ニ依ル
- 第十三條
- 將來此ノ勅令ノ條項ヲ改正シ又ハ增補スルトキハ貴族院ノ議決ヲ經ヘシ
新字体・平仮名版
編集朕大日本帝国憲法の明文に依り枢密顧問の諮詢を経て貴族院令を発布す此の勅令を実施するの時期は朕が更に命ずる所に依るべし
御名御璽
明治二十二年二月十一日
内閣総理大臣 | 伯爵 | 黒田清隆 |
枢密院議長 | 伯爵 | 伊藤博文 |
外務大臣 | 伯爵 | 大隈重信 |
海軍大臣 | 伯爵 | 西郷従道 |
農商務大臣 | 伯爵 | 井上 馨 |
司法大臣 | 伯爵 | 山田顕義 |
大蔵大臣兼内務大臣 | 伯爵 | 松方正義 |
陸軍大臣 | 伯爵 | 大山 巌 |
文部大臣 | 子爵 | 森 有礼 |
逓信大臣 | 子爵 | 榎本武揚 |
勅令第十一号
- 貴族院令
- 第一条
- 貴族院は左の議員を以て組織す
- 一 皇族
- 二 公侯爵
- 三 伯子男爵各々其の同爵中より選挙せられたる者
- 四 国家に勲労あり又は学識ある者より特に勅任せられたる者
- 五 各府県に於て土地或は工業商業に付多額の直接国税を納むる者の中より一人を互選して勅任せられたる者
- 第二条
- 皇族の男子成年に達したるときは議席に列す
- 第三条
- 公侯爵を有する者満二十五歳に達したるときは議員たるべし
- 第四条
- 伯子男爵を有する者にして満二十五歳に達し各々其の同爵の選に当りたる者は七箇年の任期を以て議員たるべし其の選挙に関る規則は別に勅令を以て之を定む
- 前項議員の数は伯子男爵各々総数の五分の一を超過すべからず
- 第五条
- 国家に勲労あり又は学識ある満三十歳以上の男子にして勅任せられたる者は終身議員たるべし
- 第六条
- 各府県に於て満三十歳以上の男子にして土地或は工業商業に付多額の直接国税を納むる者十五人の中より一人を互選し其の選に当り勅任せられたる者は七箇年の任期を以て議員たるべし其の選挙に関る規則は別に勅令を以て之を定む
- 第七条
- 国家に勲労あり又は学識ある者及各府県に於て土地或は工業商業に付多額の直接国税を納むる者より勅任せられたる議員は有爵議員の数に超過することを得ず
- 第八条
- 貴族院は天皇の諮詢に応へ華族の特権に関る条規を議決す
- 第九条
- 貴族院は其の議員の資格及選挙に関る争訟を判決す其の判決に関る規則は貴族院に於て之を議定し上奏して裁可を請ふべし
- 第十条
- 議員にして禁錮以上の刑に処せられ又は身代限の処分を受けたる者あるときは勅命を以て之を除名すべし
- 貴族院に於て懲罰に由り除名すべき者は議長より上奏して勅裁を請ふべし
- 除名せられたる議員は更に勅許あるに非ざれば再び議員となることを得ず
- 第十一条
- 議長副議長は議員中より七箇年の任期を以て勅任せらるべし
- 被選議員にして議長又は副議長の任命を受けたるときは議員の任期間其の職に就くべし
- 第十二条
- 此の勅令に定むるものの外は総て議院法の条規に依る
- 第十三条
- 将来此の勅令の条項を改正し又は増補するときは貴族院の議決を経べし