貞明皇后斂葬の儀・葬場殿の儀の御誄
御誄
- 裕仁敬ミテ
- 皇妣ノ靈前ニ白ス
- 皇考ノ喪ヲ服シテヨリ二十有五年慈恩ヲ仰キ奉養ニ勉メ樂ヲ盡スノ一日モ長カラムコトヲ願ヘルニ俄ニ大故ニ遭フ驚愕悲痛追慕止ムナシ櫬殿ニ殯宮ニ親祭スルコト三十餘日茲ニ禮ヲ具ヘ儀ヲ擧ケ將ニ多摩
- 皇考山陵ノ次ニ斂葬セムトス靈車停メ難ク幽明永ヘニ違フ鳴呼哀シイカナ
誄
- 内閣總理大臣正三位勳一等吉田茂謹ミテ
- 貞明皇后ノ御前ニ白ス
- 伏シテ惟ミルニ
- 皇后ハ五攝ノ家ニ生マレタマヒ夙ニ東宮ニ配シテ克ク孝克ク順位ヲ后宮ニ正サルルヤ惟レ貞惟レ靜皇子ヲ薫陶シテ範ヲ教育ニ垂レ蠶室ニ親臨シテ意ヲ婦功ニ用ヰタマフ中外内助ヲ稱ヘ天下母儀ヲ仰ク
- 先帝ノ不豫身心ヲ看護ニ勞セラレ崩御ノ後ハ西宮ニ深居シテ神靈ニ事ヘタマフコト二十五年一日ノ如シ聰明能ク下情ヲ察シ仁慈博ク窮民ニ及フ用ヲ省キテ燈臺守ヲ勞リ資ヲ賜ヒテ癩患者ヲ濟ヒ孤獨幽愁ノ人ヲシテ普ク光明ニ浴セシメタマフ上下齊シク感激シ福壽ノ無量ナラムコトヲ祈リマツリシニ旻天弔マス俄ニ大故ニ遇フ日月光ヲ失ヒ山河憂ヲ含ミ億兆哀痛措ク所ヲ知ルナシ今葬場殿ニ至リ靈柩ニ咫尺シテ進謁ノ再シ難キヲ悲ミ追慕ノ極リナキヲ傷ム茂國民ニ代リ恭シク敬悼ノ誠ヲ捧ケタテマツル
この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。
- 法律命令及官公󠄁文󠄁書
- 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
- 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁
この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。