<聖書<文語訳旧約聖書

w:舊新約聖書 [文語]』w:日本聖書協会、1953年

w:明治元訳聖書

w:詩篇

第1篇

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惡きものの謀略にあゆまず つみびとの途にたたず 嘲るものの座にすわらぬ者はさいはひなり

かかる人はヱホバの法をよろこびて日も夜もこれをおもふ

かかる人は水流のほとりにうゑし樹の期にいたりて實をむすび 葉もまた凋まざるごとく その作ところ皆さかえん

あしき人はしからず 風のふきさる粃糠のごとし

然ばあしきものは審判にたへず罪人は義きものの會にたつことを得ざるなり

そはヱホバはただしきものの途をしりたまふ されど惡きものの途はほろびん

第2篇

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何なればもろもろの國人はさわぎたち諸民はむなしきことを謀るや

地のもろもろの王はたちかまへ群伯はともに議り ヱホバとその受膏者とにさからひていふ

われらその械をこぼち その繩をすてんと

天に坐するもの笑ひたまはん 主かれらを嘲りたまふべし

かくて主は忿恚をもてものいひ大なる怒をもてかれらを怖まどはしめて宣給ふ

しかれども我わが王をわがきよきシオンの山にたてたりと

われ詔命をのべんヱホバわれに宣まへり なんぢはわが子なり今日われなんぢを生り

われに求めよ さらば汝にもろもろの國を嗣業としてあたへ地の極をなんぢの有としてあたへん

汝くろがねの杖をもて彼等をうちやぶり陶工のうつはもののごとくに打碎かんと

されば汝等もろもろの王よ さとかれ地の審士輩をしへをうけよ

畏をもてヱホバにつかへ戦慄をもてよろこべ

子にくちつけせよ おそらくはかれ怒をはなちなんぢら途にほろびんその忿恚はすみやかに燃べければなり すべてかれに依頼むものは福ひなり

第3篇

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ダビデその子アブサロムを避しときのうた

ヱホバよ我にあたする者のいかに蔓延れるや 我にさからひて起りたつもの多し

わが霊魂をあげつらひて かれは神にすくはるることなしといふ者ぞおほきセラ

されどヱホバよ なんぢは我をかこめる盾わが榮わが首をもたげ給ふものなり

われ聲をあげてヱホバによばはればその聖山より我にこたへたまふセラ

われ臥していね また目さめたり ヱホバわれを支へたまへばなり

われをかこみて立かまへたる干萬の人をも我はおそれじ

ヱホバよねがはくは起たまへ わが神よわれを救ひたまへ なんぢ曩にわがすべての仇の頬骨をうち惡きものの歯ををりたまへり

救はヱホバにあり ねがはくは恩惠なんぢの民のうへに在んことをセラ

第4篇

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琴にあはせて伶長にうたはしめたるダビデの歌

わが義をまもりたまふ神よ ねがはくはわが呼るときに答へたまへ わがなやみたる時なんぢ我をくつろがせたまへり ねがはくは我をあはれみ わが祈をききたまへ

人の子よなんぢらわが榮をはぢしめて幾何時をへんとするか なんぢらむなしき事をこのみ虚偽をしたひていくそのときを經んとするかセラ

然どなんぢら知れ ヱホバは神をうやまふ人をわかちて己につかしめたまひしことを われヱホバによばはらば聴たまはん

なんぢら愼みをののきて罪ををかすなかれ 臥床にておのが心にかたりて黙せセラ

なんぢら義のそなへものを献てヱホバに依頼め

おほくの人はいふたれか嘉事をわれらに見するものあらんやと ヱホバよねがはくは聖顔の光をわれらの上にのぼらせたまへ

なんぢのわが心にあたへたまひし歓喜はかれらの穀物と酒との豊かなる時にまさりき

われ安然にして臥またねぶらん ヱホバよわれを獨にて坦然にをらしむるものは汝なり

第5篇

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簫にあはせて伶長にうたはしめたるダビデのうた

ヱホバよねがはくは我がことばに耳をかたむけ わが思にみこころを注たまへ

わが王よわが神よ わが號呼のこゑをききたまへ われ汝にいのればなり

ヱホバよ朝になんぢわが聲をききたまはん 我あしたになんぢの爲にそなへして俟望むべし

なんぢは惡きことをよろこびたまふ神にあらず 惡人はなんぢの賓客たるを得ざるなり

たかぶる者はなんぢの目前にたつをえず なんぢはずべて邪曲をおこなふものを憎みたまふ

なんぢは虚偽をいふ者をほろぼしたまふ 血をながすものと詭計をなすものとは ヱホバ憎みたまふなり

然どわれは豊かなる仁慈によりてなんぢの家にいらん われ汝をおそれつつ聖宮にむかひて拝まん

ヱホバよ願くはわが仇のゆゑになんぢの義をもて我をみちびき なんぢの途をわが前になほくしたまへ

かれらの口には眞實なく その衷はよこしま その喉はあばける墓 その舌はへつらひをいへばなり

神よねがはくはかれらを刑なひ その謀略によりてみづから仆れしめ その愆のおほきによりて之をおひいだしたまへ かれらは汝にそむきたればなり

されど凡てなんぢに依頼む者をよろこばせ永遠によろこびよばはらせたまへ なんぢ斯る人をまもりたまふなり 名をいつくしむ者にもなんぢによりて歓喜をえしめたまへ

ヱホバよなんぢに義者にさいはひし盾のごとく恩惠をもて之をかこみたまはん

第6篇

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八音ある琴にあはせて伶長にうたはしめたるダビデのうた

ヱホバよねがはくは忿恚をもて我をせめ烈しき怒をもて我をこらしめたまふなかれ

ヱホバよわれを憐みたまへ われ萎みおとろふなり ヱホバよ我を醫したまへ わが骨わななきふるふ

わが霊魂さへも甚くふるひわななく ヱホバよかくて幾何時をへたまふや

ヱホバよ歸りたまへ わがたましひを救ひたまへ なんぢの仁慈の故をもて我をたすけたまへ

そは死にありては汝をおもひいづることなし 陰府にありては誰かなんぢに感謝せん

われ歎息にてつかれたり 我よなよな床をただよはせ涙をもてわが衾をひたせり

わが目うれへによりておとろへ もろもろの仇ゆゑに老ぬ

なんぢら邪曲をおこなふ者ことごとく我をはなれよ ヱホバはわが泣こゑをききたまひたり

ヱホバわが懇求をききたまへり ヱホバわが祈をうけたまはん

わがもろもろの仇ははぢて大におぢまどひ あわただしく恥てしりぞきぬ

第7篇

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ベニヤミンの人クシの言につきダビデ、ヱホバに對ひてうたへるシガヨンの歌

わが神ヱホバよわれ汝によりたのむ 願くはすべての逐せまるものより我をすくひ我をたすけたまへ

おそらくはかれ獅の如くわが霊魂をかきやぶり援るものなき間にさきてずたずたに爲ん

わが神ヱホバよ もしわれ此事をなししならんには わが手によこしまの纏りをらんには

故なく仇ずるものをさへ助けしに禍害をもてわが友にむくいしならんには

よし仇人わがたましひを逐とらへ わが生命をつちにふみにじりわが榮を塵におくとも その作にまかせよセラ

ヱホバよなんぢの怒をもて起わが仇のいきどほりにむかひて立たまへ わがために目をさましたまへ なんぢは審判をおほせ出したまへり

もろもろの國人の會がなんぢのまはりに集はしめ 其上なる高座にかへりたまヘ

ヱホバはもろもろの民にさばきを行ひたまふ ヱホバよわが正義とわが衷なる完全とにしたがひて我をさばきたまへ

ねがはくは惡きものの曲事をたちて義しきものを堅くしたまへ ただしき神は人のこころと腎とをさぐり知たまふ

わが盾をとるものは心のなほきものをすくふ神なり

神はただしき審士ひごとに忿恚をおこしたまふ神なり

人もしかへらずば神はその劍をとぎ その弓をはりてかまヘ

これに死の器をそなへ その矢に火をそへたまはん

視よその人はよこしまを産んとしてくるしむ 殘害をはらみ虚偽をうむなり

また坑をほりてふかくし己がつくれるその溝におちいれり

その殘害はおのが首にかへり その強暴はおのが頭上にくだらん

われその義によりてヱホバに感謝し いとたかきヱホバの名をほめうたはん

第8篇

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ギデトの琴にあはせて伶長にうたはしめたるダビデの歌

われらの主ヱホバよなんぢの名は地にあまねくして尊きかな その榮光を天におきたまへり

なんぢは嬰兒ちのみごの口により力の基をおきて敵にそなへたまへり こは仇人とうらみを報るものを鎭静めんがためなり

我なんぢの指のわざなる天を観なんぢの設けたまへる月と星とをみるに

世人はいかなるものなればこれを聖念にとめたまふや 人の子はいかなるものなればこれを顧みたまふや

只すこしく人を神よりも卑つくりて榮と尊貴とをかうぶらせ

またこれに手のわざを治めしめ萬物をその足下におきたまへり

すべての羊うしまた野の獣

そらの鳥うみの魚もろもろの海路をかよふものをまで皆しかなせり

われらの主ヱホバよなんぢの名は地にあまねくして尊きかな

第9篇

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ムツラベン(調子の名)にあはせて伶長にうたはしめたるダビデのうた

われ心をつくしてヱホバに感謝し そのもろもろの奇しき事迹をのべつたへん

われ汝によりてたのしみ且よろこばん 至上者よなんぢの名をほめうたはん

わが仇しりぞくとき躓きたふれて御前にほろぶ

なんぢわが義とわが訟とをまもりたまへばなり なんぢはだしき審判をしつつ寳座にすわりたまへり

またもろもろの國をせめ惡きものをほろぼし 世々かぎりなくかれらが名をけしたまへり

仇はたえはてて世々あれすたれたり 汝のくつがへしたまへるもろもろの邑はうせてその跡だにもなし

ヱホバはとこしへに聖位にすわりたまふ 審判のためにその寳座をまうけたまひたり

ヱホバは公義をもて世をさばき 直をもてもろもろの民に審判をおこなひたまはん

ヱホバは虐げらるるものの城また難みのときの城なり

聖名をしるものはなんぢに依頼ん そはヱホバよなんぢを尋るものの棄られしこと断てなければなり

シオンに住たまふヱホバに對ひてほめうたへ その事迹をもろもろの民のなかにのべつたへよ

血を問糺したまふものは苦しむものを心にとめてその號呼をわすれたまはず

ヱホバよ我をあはれみたまへ われを死の門よりすくひいだしたまへる者よ ねがはくは仇人のわれを難むるを視たまへ

さらば我なんぢのすべての頌美をのぶるを得またシオンのむすめの門にてなんぢの救をよろこばん

もろもろの國民はおのがつくれる阱におちいり そのかくしまうけたる網におのが足をとらへらる

ヱホバは己をしらしめ審判をおこなひたまへり あしき人はおのが手のわざなる羂にかかれり ヒガイオン セラ

あしき人は陰府にかへるべし 神をわするるもろもろの國民もまたしからん

貧者はつねに忘らるるにあらず苦しむものの望はとこしへに滅ぶるにあらず

ヱホバよ起たまへ ねがはくは勝を人にえしめたまふなかれ御前にてもろもろのくにびとに審判をうけしめたまヘ

ヱホバよ願くはかれらに懼をおこさしめたまへ もろもろの國民におのれただ人なることを知しめたまヘセラ

第10篇

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ああヱホバよ何ぞはるかに立たまふや なんぞ患難のときに匿れたまふや

あしき人はたかぶりて苦しむものを甚だしくせむ かれらをそのくはだての謀略にとらはれしめたまヘ

あしきひとは己がこころの欲望をほこり貪るものを祝してヱホバをかろしむ

あしき人はほこりかにいふ 神はさぐりもとむることをせざるなりと 凡てそのおもひに神なしとせり

かれの途はつねに堅く なんぢの審判はその眼よりはなれてたかし 彼はそのもろもろの敵をくちさきらにて吹く

かくて己がこころの中にいふ 我うごかさるることなく世々われに禍害なかるべしと

その口にはのろひと虚偽としへたげとみち その舌のしたには殘害とよこしまとあり

かれは村里のかくれたる處にをり隠やかなるところにて罪なきものをころす その眼はひそかに倚仗なきものをうかがひ

窟にをる獅のごとく潜みまち苦しむものをとらへんために伏ねらひ 貧しきものをその網にひきいれてとらふ

また身をかがめて蹲まるその強勁によりて依仗なきものは仆る

かれ心のうちにいふ 神はわすれたり神はその面をかくせり神はみることなかるべしと

ヱホバよ起たまへ 神よ手をあげたまへ 苦しむものを忘れたまふなかれ

いかなれば惡きもの神をいやしめて心中になんぢ探求むることをせじといふや

なんぢは鍳たまへりその殘害と怨恨とを見てこれに手をくだしたまへり 倚仗なきものは身をなんぢに委ぬ なんぢは昔しより孤子をたすけたまふ者なり

ねがはくは惡きものの臂ををりたまへあしきものの惡事を一つだにのこらぬまでに探究したまヘ

ヱホバはいやとほながに王なり もろもろの國民はほろびて神の國より跡をたちたり

ヱホバよ汝はくるしむものの懇求をききたまへり その心をかたくしたまはん なんぢは耳をかたぶけてきき

孤子と虐げらる者とのために審判をなし地につける人にふたたび恐嚇をもちひざらしめ給はん

第11篇

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うたのかみに謳はしめたるダビデのうた

われヱホバに依頼めり なんぢら何ぞわが霊魂にむかひて鳥のごとくなんぢの山にのがれよといふや

視よあしきものは暗處にかくれ心なほきものを射んとて弓をはり絃に矢をつがふ

基みなやぶれたらんには義者なにをなさんや

ヱホバはその聖宮にいます ヱホバの寳座は天にありその目はひとのこを鑒 その眼瞼はかれらをこころみたまふ

ヱホバは義者をこころむ そのみこころは惡きものと強暴をこのむ者とをにくみ

羂をあしきもののうへに降したまはん火と硫磺ともゆる風とはかれらの酒杯にうくべきものなり

ヱホバはただしき者にして義きことを愛したまへばなり 直きものはその聖顔をあふぎみん

第12篇

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八音にあはせて伶長にうたはしめたるダビデのうた

ああヱホバよ助けたまへ そは神をうやまふ人はたえ誠あるものは人の子のなかより消失るなり

人はみな虚偽をもてその隣とあひかたり滑なるくちびると貳心とをもてものいふ

ヱホバはすべての滑なるくちびると大なる言をかたる舌とをほろぼし給はん

かれらはいふ われら舌をもて勝をえん この口唇はわがものなり誰かわれらに主たらんやと

ヱホバのたまはく 苦しむもの掠められ貧しきもの歎くがゆゑに我いま起てこれをその慕ひもとむる平安におかん

ヱホバの言はきよきことばなり 地にまうけたる爐にてねり七次きよめたる白銀のごとし

ヱホバよ汝はかれらをまもり之をたすけてとこしへにこの類より免れしめたまはん

人の子のなかに穢しきことの崇めらるるときは惡者ここやかしこにあるくなり

第13篇

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伶長にうたはしめたるダビデのうた

ああヱホバよ かくて幾何時をへたまふや 汝とこしへに我をわすれたまふや 聖顔をかくしていくそのときを歴たまふや

われ心のうちに終日かなしみをいだき籌畫をたましひに用ひて幾何時をふべきか わが仇はわがうへに崇められて幾何時をふべきか

わが神ヱホバよ我をかへりみて答をなしたまへ わが目をあきらかにしたまへ 恐らくはわれ死の睡につかん

おそらくはわが仇いはん 我かれに勝りと おそらくはわが敵わがうごかさるるによりて喜ばん

されど我はなんぢの憐憫によりたのみ わが心はなんぢの救によりてよろこばん

ヱホバはゆたかに我をあしらひたまひたれば われヱホバに對ひてうたはん

第14篇

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うたのかみに謳はしめたるダビデのうた

愚なるものは心のうちに神なしといへり かれらは腐れたり かれらは憎むべき事をなせり 善をおこなふ者なし

ヱホバ天より人の子をのぞみみて悟るもの神をたづぬる者ありやと見たまひしに

みな逆きいでてことごとく腐れたり 善をなすものなし一人だになし

不義をおこなふ者はみな智覺なきか かれらは物くふごとくわが民をくらひ またヱホバをよぶことをせざるなり

視よかかる時かれらは大におそれたり 神はただしきものの類のなかに在せばなり

なんぢらは苦しめるものの謀略をあなどり辱かしむ されどヱホバはその避所なり

ねがはくはシオンよりイスラエルの救のいでんことを ヱホバその民のとらはれたるを返したまふときヤコブはよろこびイスラエルは樂まん

第15篇

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ダビデのうた

ヱホバよなんぢの帷幄のうちにやどらん者はたれぞ なんぢの聖山にすまはんものは誰ぞ

直くあゆみ義をおこなひ そのこころに眞實をいふものぞその人なる

かかる人は舌をもてそしらず その友をそこなはず またその隣をはぢしむる言をあげもちひず

惡にしづめるものを見ていとひかろしめ ヱホバをおそるるものをたふとび 誓ひしことはおのれに禍害となるも變ることなし

貨をかして過たる利をむさぼらず 賄賂をいれて無辜をそこなはざるなり 斯ることどもを行ふものは永遠にうごかさるることなかるべし

第16篇

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ダビデがミクタムの歌

神よねがはくは我を護りたまへ 我なんぢに依頼む

われヱホバにいへらくなんぢはわが主なり なんぢのほかにわが福祉はなしと

地にある聖徒はわが極めてよろこぶ勝れしものなり

ヱホバにかへて他神をとるものの悲哀はいやまさん 我かれらがささぐる血の御酒をそそがず その名を口にとなふることをせじ

ヱホバはわが嗣業またわが酒杯にうくべき有なり なんぢはわが所領をまもりたまはん

準繩はわがために樂しき地におちたり 宜われよき嗣業をえたるかな

われは訓諭をさづけたまふヱホバをほめまつらん 夜はわが心われををしふ

われ常にヱホバをわが前におけり ヱホバわが右にいませばわれ動かさるることなかるべし

このゆゑにわが心はたのしみ わが榮はよろこぶ わが身もまた平安にをらん

そは汝わがたましひを陰府にすておきたまはず なんぢの聖者を墓のなかに朽しめたまはざる可ればなり

なんぢ生命の道をわれに示したまはん なんぢの前には充足るよろこびあり なんぢの右にはもろもろの快樂とこしへにあり

第17篇

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ダビデの祈祷

ああヱホバよ公義をききたまへ わが哭聲にみこころをとめたまへ いつはりなき口唇よりいづる我がいのりに耳をかたぶけたまへ

ねがはくはわが宣告みまへよりいでてなんぢの目公平をみたまはんことを

なんぢわが心をこころみ また夜われにのぞみたまへり 斯てわれを糺したまへど我になにの惡念あるをも見出たまはざりき わが口はつみを犯すことなからん

人の行爲のことをいはば我なんぢのくちびるの言によりて暴るものの途をさけたり

わが歩はかたくなんぢの途にたちわが足はよろめくことなかりき

神よなんぢ我にこたへたまふ 我なんぢをよべり ねがはくは汝の耳をかたぶけてわが陳るところをききたまへ

なんぢに依頼むものを右手をもて仇するものより救ひたまふ者よ ねがはくはなんぢの妙なる仁慈をあらはしたまへ

願くはわれを瞳のごとくにまもり汝のつばさの蔭にかくし

我をなやむるあしき者また我をかこみてわが命をそこなはんとする仇よりのがれしめ給へ

かれらはおのが心をふさぎ その口をもて誇かにものいへり

いづこにまれ往ところにてわれらを打圍み われらを地にたふさんと目をとむ

かれは抓裂んといらだつ獅のごとく隠やかなるところに潜みまつ壮獅のごとし

ヱホバよ起たまへ ねがはくはかれに立對ひてこれをたふし御劍をもて惡きものよりわが霊魂をすくひたまヘ

ヱホバよ手をもて人より我をたすけいだしたまへ おのがうくべき有をこの世にてうけ 汝のたからにてその腹をみたさるる世人より我をたすけいだし給へ かれらはおほくの子にあきたり その富ををさなごに遺す

されどわれは義にありて聖顔をみ目さむるとき容光をもて飽足ることをえん

第18篇

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伶長にうたはしめたるヱホバの僕ダビデの歌、このうたの詞はもろもろの仇およびサウルの手より救れしときヱホバに對ひてうたへるなり 云く

ヱホバわれの力よ われ切になんぢを愛しむ

ヱホバはわが巌 わが城 われをすくふ者 わがよりたのむ神 わが堅固なるいはほ わが盾 わがすくひの角 わがたかき櫓なり

われ讃稱ふべきヱホバをよびて仇人よりすくはるることをえん

死のつな我をめぐり惡のみなぎる流われをおそれしめたり

陰間のなは我をかこみ死のわな我にたちむかへり

われ窮苦のうちにありてヱホバをよび又わが神にさけびたり ヱホバはその宮よりわが聲をききたまふ その前にてわがよびし聲はその耳にいれり

このときヱホバ怒りたまひたれば地はふるひうごき山の基はゆるぎうごきたり

烟その鼻よりたち火その口よりいでてやきつくし炭はこれがために燃あがれり

ヱホバは天をたれて臨りたまふ その足の下はくらきこと甚だし

かくてケルブに乗りてとび風のつばさにて翔り

闇をおほひとなし水のくらきとそらの密雲とをそのまはりの幕となしたまへり

そのみまへの光輝よりくろくもをへて雹ともえたる炭とふりきたれり

ヱホバは天に雷鳴をとどろかせたまへり 至上者のこゑいでて雹ともえたる炭とふりきたり

ヱホバ矢をとばせてかれらを打ちらし數しげき電光をはなちてかれらをうち敗りたまへり

ヱホバよ斯るときになんぢの叱咤となんぢの鼻のいぶきとによりて水の底みえ地の基あらはれいでたり

ヱホバはたかきより手をのべ我をとりて大水よりひきあげ

わがつよき仇とわれを憎むものとより我をたすけいだしたまへり かれらは我にまさりて最強かりき

かれらはわが災害の日にせまりきたれり 然どヱホバはわが支柱となりたまひき

ヱホバはわれを悦びたまふがゆゑにわれをたづさへ廣處にだして助けたまへり

ヱホバはわが正義にしたがひて恩賜をたまひ わが手のきよきにしたがひて報賞をたれたまへり

われヱホバの道をまもり惡をなしてわが神よりはなれしことなければなり

そのすべての審判はわがまへにありて われその律法をすてしことなければなり

われ神にむかひて缺るところなく己をまもりて不義をはなれたり

この故にヱホバはわがただしきとその目前にわが手のきよきとにしたがひて我にむくいをなし給へり

なんぢ憐憫あるものには憐みあるものとなり完全ものには全きものとなり

きよきものには潔きものとなり僻むものにはひがむ者となりたまふ

そは汝くるしめる民をすくひたまへど高ぶる目をひくくしたまふ可ればなり

なんぢわが燈火をともし給ふべければなり わが神ヱホバわが暗をてらしたまはん

我なんぢによりて軍の中をはせとほり わが神によりて垣ををどりこゆ

神はしもその途またくヱホバの言はきよし ヱホバはすべて依頼むものの盾なり

そはヱホバのほかに神はたれぞや われらの神のほかに巌はたれぞや

神はちからをわれに帯しめ わが途を全きものとなしたまふ

神はわが足を麀のあしのごとくし我をわが高處にたたせたまふ

神はわが手をたたかひにならはせてわが臂に銅弓をひくことを得しめたまふ

又なんぢの救の盾をわれにあたへたまへり なんぢの右手われをささへなんぢの謙卑われを大ならしめたまへり

なんぢわが歩むところを寛濶ならしめたまひたれば わが足ふるはざりき

われ仇をおひてこれに追及かれらのほろぶるまでは歸ることをせじ

われかれらを撃てたつことを得ざらしめん かれらはわが足の下にたふるべし

そはなんぢ戦争のために力をわれに帯しめ われにさからひておこりたつ者をわが下にかがませたまひたればなり

我をにくむ者をわが滅しえんがために汝またわが仇の背をわれにむけしめ給へり

かれら叫びたれども救ふものなく ヱホバに對ひてさけびたれども答へたまはざりき

我かれらを風のまへの塵のごとくに搗碎き ちまたの坭のごとくに打棄たり

なんぢわれを民のあらそひより助けいだし我をたててもろもろの國の長となしたまへり わがしらざる民われにつかへん

かれらわが事をききて立刻われにしたがひ異邦人はきたりて佞りつかへん

ことくにびとは衰へてその城よりをののきいでん

ヱホバは活ていませり わが磐はほむべきかな わがすくひの神はあがむべきかな

わがために讎をむくい異邦人をわれに服はせたまふはこの神なり

神はわれを仇よりすくひたまふ實になんぢは我にさからひて起りたつ者のうへに我をあげ あらぶる人より我をたすけいだし給ふ

この故にヱホバよ われもろもろの國人のなかにてなんぢに感謝し なんぢの名をほめうたはん

ヱホバはおほいなる救をその王にあたへ その受膏者ダビデとその裔とに世々かぎりなく憐憫をたれたまふ

第19篇

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うたのかみに謳はしめたるダビデのうた

もろもろの天は神のえいくわうをあらはし 穹蒼はその手のわざをしめす

この日ことばをかの日につたへこのよ知識をかの夜におくる

語らずいはずその聲きこえざるに

そのひびきは全地にあまねく そのことばは地のはてにまでおよぶ 神はかしこに帷幄を日のためにまうけたまへり

日は新婿がいはひの殿をいづるごとく勇士がきそひはしるをよろこぶに似たり

そのいでたつや天の涯よりし その運りゆくや天のはてにいたる 物としてその和喣をかうぶらざるはなし

ヱホバの法はまたくして霊魂をいきかへらしめ ヱホバの證詞はかたくして愚なるものを智からしむ

ヱホバの訓諭はなほくして心をよろこばしめ ヱホバの誡命はきよくして眼をあきらかならしむ

ヱホバを惶みおそるる道はきよくして世々にたゆることなく ヱホバのさばきは眞實にしてことごとく正し

これを黄金にくらぶるもおほくの純精金にくらぶるも 彌増りてしたふべく これを蜜にくらぶるも蜂のすの滴瀝にくらぶるもいやまさりて甘し

なんぢの僕はこれらによりて儆戒をうく これらをまもらば大なる報賞あらん

たれかおのれの過失をしりえんや ねがはくは我をかくれたる愆より解放ちたまへ

願くはなんぢの僕をひきとめて故意なる罪ををかさしめず それをわが主たらしめ給ふなかれ さればわれ玷なきものとなりて大なる愆をまぬかるるをえん

ヱホバわが磐わが贖主よ わがくちの言わがこころの思念なんぢのまへに悦ばるることを得しめたまへ

第20篇

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伶長にうたはしめたるダビデのうた

ねがはくはヱホバなやみの日になんぢにこたヘヤユブのかみの名なんぢを高にあげ

聖所より援助をなんぢにおくりシオンより能力をなんぢにあたへ

汝のもろもろの献物をみこころにとめ なんぢの燔祭をうけたまはんことをセラ

ねがはくはなんちがこころの願望をゆるし なんぢの謀略をことごとく遂しめたまはんことを

我儕なんぢの救によりて歓びうたひ われらの神の名によりて旗をたてん ねがはくはヱホバ汝のもろもろの求をとげしめたまはんことを

われ今ヱホバその受膏者をすくひたまふを知る ヱホバそのきよき天より右手なるすくひの力にてかれに應へたまはん

あるひは車をたのみあるひは馬をたのみとする者あり されどわれらはわが神ヱホバの名をとなへん

かれらは屈みまた仆るわれらは起てかたくたてり

ヱホバよ王をすくひたまへ われらがよぶとき應へたまへ

第21篇

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伶長にうたはしめたるダビデのうた

ヱホバよ王はなんぢの力によりてたのしみ汝のすくひによりて奈何におほいなる歓喜をなさん

なんぢ彼がこころの願望をゆるし そのくちびるの求をいなみ給はざりきセラ

そはよきたまものの惠をもてかれを迎へ まじりなきこがねの冕弁をもてかれの首にいただかせ給ひたり

かれ生命をもとめしに汝これをあたへてその齢の日を世々かぎりなからしめ給へり

なんぢの救によりてその榮光おほいなり なんぢは尊貴と稜威とをかれに衣せたまふ

そは之をとこしへに福ひなるものとなし聖顔のまへの歓喜をもて樂しませたまへばなり

王はヱホバに依頼み いとたかき者のいつくしみを蒙るがゆゑに動かさるることなからん

なんぢの手はそのもろもろの仇をたづねいだし 汝のみぎの手はおのれを憎むものを探ねいだすべし

なんぢ怒るときは彼等をもゆる爐のごとくにせんヱホバはげしき怒によりてかれらを呑たまはん 火はかれらを食つくさん

汝かれらの裔を地よりほろぼし かれらの種を人の子のなかよりほろぼさん

かれらは汝にむかひて惡事をくはだて遂がたき謀略をおもひまはせばなり

汝かれらをして背をむけしめ その面にむかひて弓絃をひかん

ヱホバよ能力をあらはしてみづからを高くしたまへ 我儕はなんぢの稜威をうたひ且ほめたたへん

第22篇

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あけぼのの鹿の調にあはせて伶長にうたはしめたるダビデの歌

わが神わが神なんぞ我をすてたまふや 何なれば遠くはなれて我をすくはず わが歎きのこゑをきき給はざるか

ああわが神われ晝よばはれども汝こたへたまはず 夜よばはれどもわれ平安をえず

然はあれイスラエルの讃美のなかに住たまふものよ汝はきよし

われらの列祖はなんぢに依頼めり かれら依頼みたればこれを助けたまへり

かれら汝をよびて援をえ汝によりたのみて恥をおへることなかりき

然はあれどわれは蟲にして人にあらず 世にそしられ民にいやしめらる

すべてわれを見るものはわれをあざみわらひ 口唇をそらし首をふりていふ

かれはヱホバによりたのめりヱホバ助くべし ヱホバかれを悦びたまふが故にたすくべしと

されど汝はわれを胎内よりいだし給へるものなり わが母のふところにありしとき既になんぢに依頼ましめたまへり

我うまれいでしより汝にゆだねられたり わが母われを生しときより汝はわが神なり

われに遠ざかりたまふなかれ 患難ちかづき又すくふものなければなり

おほくの牡牛われをめぐりバサンの力つよき牡牛われをかこめり

かれらは口をあけて我にむかひ物をかきさき吼うだく獅のごとし

われ水のごとくそそぎいだされ わがもろもろの骨ははづれ わが心は蝋のごとくなりて腹のうちに鎔たり

わが力はかわきて陶器のくだけのごとく わが舌は齶にひたつけり なんぢわれを死の塵にふさせたまへり

そは犬われをめぐり惡きものの群われをかこみてわが手およびわが足をさしつらぬけり

わが骨はことごとく數ふるばかりになりぬ 惡きものの目をとめて我をみる

かれらたがひにわが衣をわかち我がしたぎを鬮にす

ヱホバよ遠くはなれ居たまふなかれ わが力よねがはくは速きたりてわれを授けたまへ

わがたましひを劍より助けいだし わが生命を犬のたけきいきほひより脱れしめたまへ

われを獅の口また野牛のつのより救ひいだしたまへ なんぢ我にこたへたまへり

われなんぢの名をわが兄弟にのべつたへ なんぢを會のなかにて讃たたへん

ヱホバを懼るるものよヱホバをほめたたへよ ヤコブのもろもろの裔よヱホバをあがめよ イスラエルのもろもろのすゑよヱホバを畏め

ヱホバはなやむものの辛苦をかろしめ棄たまはず これに聖顔をおほふことなくしてその叫ぶときにききたまへばなり

大なる會のなかにてわが汝をほめたたふるは汝よりいづるなり わが誓ひしことはヱホバをおそるる者のまへにてことごとく償はん

謙遜者はくらひて飽ことをえ ヱホバをたづねもとむるものはヱホバをほめたたへん 願くはなんぢらの心とこしへに生んことを

地のはては皆おもひいだしてヱホバに歸りもろもろの國の族はみな前にふしをがむべし

國はヱホバのものなればなり ヱホバはもろもろの國人をすべをさめたまふ

地のこえたるものは皆くらひてヱホバををがみ塵にくだるものと己がたましひを存ふること能はざるものと皆そのみまへに拝跪かん

たみの裔のうちにヱホバにつかる者あらん 主のことは代々にかたりつたへらるべし

かれら來りて此はヱホバの行爲なりとてその義を後にうまるる民にのべつたへん

第23篇

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ダビデのうた

ヱホバは我が牧者なり われ乏しきことあらじ

ヱホバは我をみどりの野にふさせ いこひの水濱にともなひたまふ

ヱホバはわが霊魂をいかし名のゆゑをもて我をただしき路にみちびき給ふ

たとひわれ死のかげの谷をあゆむとも禍害をおそれじ なんぢ我とともに在せばなり なんぢの笞なんぢの杖われを慰む

なんぢわが仇のまへに我がために筵をまうけ わが首にあぶらをそそぎたまふ わが酒杯はあふるるなり

わが世にあらん限りはかならず恩惠と憐憫とわれにそひきたらん 我はとこしへにヱホバの宮にすまん

第24篇

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ダビデのうた

地とそれに充るもの世界とその中にすむものとは皆ヱホバのものなり

ヱホバはそのもとゐを大海のうへに置これを大川のうへに定めたまへり

ヱホバの山にのぼるべきものは誰ぞ その聖所にたつべき者はたれぞ

手きよく心いさぎよき者そのたましひ虚きことを仰ぎのぞまず偽りの誓をせざるものぞ その人なる

かかる人はヱホバより福祉をうけ そのすくひの神より義をうけん

斯のごとき者は神をしたふものの族類なり ヤコブの神よなんぢの聖顔をもとむる者なりセラ

門よなんぢらの首をあげよ とこしへの戸よあがれ 榮光の王いりたまはん

えいくわうの王はたれなるか ちからをもちたまふ猛きヱホバなり 戦闘にたけきヱホバなり

門よなんぢらの首をあげよ とこしへの戸よあがれ 榮光の王いりたまはん

この榮光の王はたれなるか 萬軍のヱホバ是ぞえいくわうの王なるセラ

第25篇

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ダビデのうた

ああヱホバよ わがたましひは汝をあふぎ望む

わが神よわれなんぢに依頼めり ねがはくはわれに愧をおはしめたまふなかれ わが仇のわれに勝誇ることなからしめたまへ

實になんぢを俟望むものははぢしめられず 故なくして信をうしなふものは愧をうけん

ヱホバよなんぢの大路をわれにしめし なんぢの徑をわれにをしへたまへ

我をなんぢの眞理にみちびき我ををしへたまへ 汝はわがすくひの神なり われ終日なんぢを俟望む

なんぢのあはれみと仁慈とはいにしへより絶ずあり ヱホバよこれを思ひいだしたまへ

わがわかきときの罪とわが愆とはおもひいでたまふなかれ ヱホバよ汝のめぐみの故になんぢの仁慈にしたがひて我をおもひいでたまヘ

ヱホバはめぐみ深くして直くましませり 斯るがゆゑに道をつみびとにをしへ

謙だるものを正義にみちびきたまはん その道をへりくだる者にしめしたまはん

ヱホバのもろもろの道はそのけいやくと證詞とをまもるものには仁慈なり眞理なり

わが不義はおほいなり ヱホバよ名のために之をゆるしたまヘ

ヱホバをおそるる者はたれなるか 之にそのえらぶべき道をしめしたまはん

かかる人のたましひは平安にすまひ その裔はくにをつぐべし

ヱホバの親愛はヱホバをおそるる者とともにあり ヱホバはその契約をかれらに示したまはん

わが目はつねにヱホバにむかふ ヱホバわがあしを網よりとりいだしたまふ可ればなり

ねがはくは歸りきたりて我をあはれみたまへ われ獨わびしくまた苦しみをるなり

願くはわが心のうれへをゆるめ我をわざはひより脱かれしめたまへ

わが患難わが辛苦をかへりみ わがすべての罪をゆるしたまへ

わが仇をみたまへ かれらの數はおほし情なき憾をもてわれをにくめり

わがたましひをまもり我をたすけたまへ われに愧をおはしめたまふなかれ 我なんぢに依頼めばなり

われなんぢを挨望むねがはくは完全と正直とわれをまもれかし

神よすべての憂よりイスラエルを贖ひいだしたまへ

第26篇

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ダビデの歌

ヱホバよねがはくはわれを鞫きたまへわれわが完全によりてあゆみたり 然のみならず我たゆたはずヱホバに依頼めり

ヱホバよわれを糺しまた試みたまへ わが腎とこころとを錬きよめたまへ

そは汝のいつくしみわが眼前にあり 我はなんぢの眞理によりてあゆめり

われは虚しき人とともに座らざりき 惡をいつはりかざる者とともにはゆかじ

惡をなすものの會をにくみ惡者とともにすわることをせじ

われ手をあらひて罪なきをあらはす ヱホバよ斯てなんぢの祭壇をめぐり

感謝のこゑを聞えしめ すべてなんぢの奇しき事をのべつたへん

ヱホバよ我なんぢのまします家となんぢが榮光のとどまる處とをいつくしむ

願くはわがたましひを罪人とともに わが生命を血をながす者とともに取收めたまふなかれ

かかる人の手にはあしきくはだてあり その右の手は賄賂にてみつ

されどわれはわが完全によりてあゆまん願くはわれをあがなひ我をあはれみたまへ

わがあしは平坦なるところにたつ われもろもろの會のなかにてヱホバを讃まつらん

第27篇

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ダビデの歌

ヱホバはわが光わが救なり われ誰をかおそれん ヱホバはわが生命のちからなり わが懼るべきものはたれぞや

われの敵われの仇なるあしきもの襲ひきたりてわが肉をくらはんとせしが蹶きかつ仆れたり

縦ひいくさびと營をつらねて我をせむるともわが心おそれじ たとひ戦ひおこりて我をせむるとも我になほ恃あり

われ一事をヱホバにこへり我これをもとむ われヱホバの美しきを仰ぎその宮をみんがためにわが世にあらん限りはヱホバの家にすまんとこそ願ふなれ

ヱホバはなやみの日にその行宮のうちに我をひそませその幕屋のおくにわれをかくし巌のうへに我をたかく置たまふべければなり

今わが首はわれをめぐれる仇のうへに高くあげらるべし この故にわれヱホバのまくやにて歓喜のそなへものを献ん われうたひてヱホバをほめたたへん

わが聲をあげてさけぶときヱホバよきき給へ また憐みてわれに應へたまへ

なんぢらわが面をたづねもとめよと(斯る聖言のありしとき)わが心なんぢにむかひてヱホバよ我なんぢの聖顔をたづねんといへり

ねがはくは聖顔をかくしたまふなかれ 怒りてなんぢの僕をとほざけたまふなかれ汝はわれの助なり 噫わがすくひの神よ われをおひいだし我をすてたまふなかれ

わが父母われをすつるともヱホバわれを迎へたまはん

ヱホバよなんぢの途をわれにをしへ わが仇のゆゑに我をたひらかなる途にみちびきたまへ

いつはりの證をなすもの暴厲を吐もの我にさからひて起りたてり 願くはわれを仇にわたしてその心のままに爲しめたまふなかれ

われもしヱホバの恩寵をいけるものの地にて見るの侍なからましかば奈何ぞや

ヱホバを俟望ぞめ雄々しかれ汝のこころを堅うせよ 必ずやヱホバをまちのぞめ

第28篇

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ダビデの歌

ああヱホバよわれ汝をよばん わが磐よねがはくは我にむかひて暗唖となりたまふなかれ なんぢ黙したまはば恐らくはわれ墓にいるものとひとしからん

われ汝にむかひてさけび聖所の奥にむかひて手をあぐるときわが懇求のこゑをききたまへ

あしき人また邪曲をおこなふ者とともに我をとらへてひきゆき給ふなかれ かれらはその隣にやはらぎをかたれども心には殘害をいだけり

その事にしたがひそのなす惡にしたがひて彼等にあたへ その手の行爲にしたがひて與ヘこれにその受べきものを報いたまへ

かれらはヱホバのもろもろの事とその手のなしわざとをかへりみず この故にヱホバかれらを毀ちて建たまふことなからん

ヱホバは讃べきかな わが祈のこゑをききたまひたり

ヱホバはわが力わが盾なり わがこころこれに依頼みたれば我たすけをえたり 然るゆゑにわが心いたくよろこぶ われ歌をもてほめまつらん

ヱホバはその民のちからなり その受膏者のすくひの城なり

なんぢの民をすくひなんぢの嗣業をさきはひ且これをやしなひ之をとこしなへに懐きたすけたまへ

第29篇

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ダビデの歌

なんぢら神の子らよ ヱホバに獻げまつれ榮と能とをヱホバにささげまつれ

その名にふさはしき榮光をヱホバにささげ奉れ きよき衣をつけてヱホバを拝みまつれ

ヱホバのみこゑは水のうへにあり えいくわうの神は雷をとどろかせたまふ ヱホバは大水のうへにいませり

ヱホバの聲はちからあり ヱホバのみこゑは稜威あり

ヱホバのみこゑは香柏ををりくだく ヱホバ、レバノンのかうはくを折くだきたまふ

これを犢のごとくをどらせレバノンとシリオンとをわかき野牛のごとくをどらせたまふ

ヱホバのみこゑは火焔をわかつ

ヱホバのみこゑは野をふるはせヱホバはカデシの野をふるはせたまふ

ヱホバのみこゑは鹿に子をうませ また林木をはだかにす その宮にあるすべてのもの呼はりて榮光なるかなといふ

ヱホバは洪水のうへに坐したまへり ヱホバは寳座にざして永遠に王なり

ヱホバはその民にちからをあたへたまふ 平安をもてその民をさきはひたまはん

第30篇

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殿をささぐるときに謳へるダビデのうた

ヱホバよわれ汝をあがめん なんぢ我をおこしてわが仇のわがことによりて喜ぶをゆるし給はざればなり

わが神ヱホバよわれ汝によばはれば汝我をいやしたまへり

ヱホバよ汝わがたましひを陰府よりあげ我をながらへしめて墓にくだらせたまはざりき

ヱホバの聖徒よ ヱホバをほめうたへ奉れ きよき名に感謝せよ

その怒はただしばしにてその惠はいのちとともにながし 夜はよもすがら泣かなしむとも朝にはよろこびうたはん

われ安けかりしときに謂く とこしへに動かさるることなからんと

ヱホバよなんぢ惠をもてわが山をかたく立せたまひき 然はあれどなんぢ面をかくしたまひたれば我おぢまどひたり

ヱホバよわれ汝によばはれり 我ひたすらヱホバにねがへり

われ墓にくだらばわが血なにの益あらん 塵はなんぢを讃たたへんや なんぢの眞理をのべつたへんや

ヱホバよ聴たまへ われを憐みたまヘ ヱホバよ願くはわが助となりたまへ

なんぢ踴躍をもてわが哀哭にかへわが麁服をとき歓喜をもてわが帯としたまへり

われ榮をもてほめうたひつつ黙すことなからんためなり わが神ヱホバよわれ永遠になんぢに感謝せん

第31篇

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伶長にうたはしめたるダビデのうた

ヱホバよわれ汝によりたのむ 願くはいづれの日までも愧をおはしめたまふなかれ なんぢの義をもてわれを助けたまへ

なんぢの耳をかたぶけて速かにわれをすくひたまへ 願くはわがためにかたき磐となり我をすくふ保障の家となりたまへ

なんぢはわが磐わが城なり されば名のゆゑをもてわれを引われを導きたまへ

なんぢ我をかれらが密かにまうけたる網よりひきいだしたまへ なんぢはわが保砦なり

われ霊魂をなんぢの手にゆだぬ ヱホバまことの神よなんぢはわれを贖ひたまへり

われはいつはりの虚きことに心をよする者をにくむ われは獨ヱホバによりたのむなり

我はなんぢの憐憫をよろこびたのしまん なんぢわが艱難をかへりみ わがたましひの禍害をしり

われを仇の手にとぢこめしめたまはず わが足をひろきところに立たまへばなり

われ迫りくるしめり ヱホバよ我をあはれみたまへ わが目はうれひによりておとろふ 霊魂も身もまた衰へぬ

わが生命はかなしみによりて消えゆき わが年華はなげきによりて消ゆけばなり わが力はわが不義によりておとろへ わが骨はかれはてたり

われもろもろの仇ゆゑにそしらる わが隣にはわけて甚だし相識ものには忌憚られ衢にてわれを見るもの避てのがる

われは死たるもののごとく忘られて人のこころに置れず われはやぶれたる器もののごとくなれり

そは我おほくの人のそしりをきい到るところに懼あり かれら我にさからひて互にはかりしが わが生命をさへとらんと企てたり

されどヱホバよわれ汝によりたのめり また汝はわが神なりといへり

わが時はすべてなんぢの手にあり ねがはくはわれを仇の手よりたすけ われに追迫るものより助けいだしたまへ

なんぢの僕のうへに聖顔をかがやかせ なんぢの仁慈をもて我をすくひたまヘ

ヱホバよわれに愧をおはしめ給ふなかれ そは我なんぢをよべばなり 願くはあしきものに恥をうけしめ陰府にありて口をつぐましめ給へ

傲慢と軽侮とをもて義きものにむかひ妄りにののしるいつはりの口唇をつぐましめたまへ

汝をおそるる者のためにたくはへ なんぢに依頼むもののために人の子のまへにてほどこしたまへる汝のいつくしみは大なるかな

汝かれらを御前なるひそかなる所にかくして人の謀略よりまぬかれしめ また行宮のうちにひそませて舌のあらそひをさけしめたまはん

讃べきかなヱホバは堅固なる城のなかにて奇しまるるばかりの仁慈をわれに顕したまへり

われ驚きあわてていへらく なんぢの目のまへより絶れたりと 然どわれ汝によびもとめしとき汝わがねがひの聲をききたまへり

なんぢらもろもろの聖徒よヱホバをいつくしめ ヱホバは眞實あるものをまもり傲慢者におもく報をほどこしたまふ

すべてヱホバを俟望むものよ雄々しかれ なんぢら心をかたうせよ

第32篇

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ダビデの訓諭のうた

その愆をゆるされその罪をおほはれしものは福ひなり

不義をヱホバに負せられざるもの心にいつはりなき者はさいはひなり

我いひあらはさざりしときは終日かなしみさけびたるが故にわが骨ふるびおとろへたり

なんぢの手はよるも晝もわがうへにありて重し わが身の潤澤はかはりて夏の旱のごとくなれりセラ

斯てわれなんぢの前にわが罪をあらはしわが不義をおほはざりき 我いへらくわが愆をヱホバにいひあらはさんと 斯るときしも汝わがつみの邪曲をゆるしたまへりセラ

されば神をうやまふ者はなんぢに遇ことをうべき間になんぢに祈らん 大水あふれ流るるともかならずその身におよばじ

汝はわがかくるべき所なり なんぢ患難をふせぎて我をまもり救のうたをもて我をかこみたまはんセラ

われ汝ををしへ汝をあゆむべき途にみちびき わが目をなんぢに注てさとさん

汝等わきまへなき馬のごとく驢馬のごとくなるなかれ かれらは鑣たづなのごとき具をもてひきとめずば近づききたることなし

惡者はかなしみ多かれどヱホバに依頼むものは憐憫にてかこまれん

ただしき者よヱホバを喜びたのしめ 凡てこころの直きものよ喜びよばふべし

第33篇

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ただしき者よヱホバによりてよろこべ 讃美はなほきものに適はしきなり

琴をもてヱホバに感謝せよ 十絃のことをもてヱホバをほめうたへ

あたらしき歌をヱホバにむかひてうたひ歓喜の聲をあげてたくみに琴をかきならせ

ヱホバのことばは直く そのすべて行ひたまふところ眞實なればなり

ヱホバは義と公平とをこのみたまふ その仁慈はあまねく地にみつ

もろもろの天はヱホバのみことばによりて成り てんの萬軍はヱホバの口の氣によりてつくられたり

ヱホバはうみの水をあつめてうづだかくし深淵を庫にをさめたまふ

全地はヱホバをおそれ世にすめるもろもろの人はヱホバをおぢかしこむべし

そはヱホバ言たまへば成り おほせたまへば立るがゆゑなり

ヱホバはもろもろの國のはかりごとを虚くし もろもろの民のおもひを徒勞にしたまふ

ヱホバの謀略はとこしへに立ち そのみこころのおもひは世々にたつ

ヱホバをおのが神とする國はさいはひなり ヱホバ嗣業にせんとて撰びたまへるその民はさいはひなり

ヱホバ天よりうかがひてすべての人の子を見

その在すところより地にすむもろもろの人をみたまふ

ヱホバはすべてかれらの心をつくり その作ところをことごとく鑒みたまふ

王者いくさびと多をもて救をえず勇士ちから大なるをもて助をえざるなり

馬はすくひに益なく その大なるちからも人をたすくることなからん

視よヱホバの目はヱホバをおそるるもの並その憐憫をのぞむもののうへにあり

此はかれらのたましひを死よりすくひ饑饉たるときにも世にながらへしめんがためなり

われらのたましひはヱホバを侯望めり ヱホバはわれらの援われらの盾なり

われらはきよき名にりたのめり 斯てぞわれらの心はヱホバにありてよろこばん

ヱホバよわれら汝をまちのぞめり これに循ひて憐憫をわれらのうへに垂たまへ

第34篇

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ダビデ、アビメレクのまへにて狂へる状をなし逐れていでさりしときに作れるうた

われつねにヱホバを祝ひまつらんその頌詞はわが口にたえじ

わがたましひはヱホバによりて誇らん 謙だるものは之をききてよろこばん

われとともにヱホバを崇めよ われらともにその名をあげたたへん

われヱホバを尋ねたればヱホバわれにこたへ我をもろもろの畏懼よりたすけいだしたまへり

かれらヱホバを仰ぎのぞみて光をかうぶれり かれらの面ははぢあからむことなし

この苦しむもの叫びたればヱホバこれをきき そのすべての患難よりすくひいだしたまへり

ヱホバの使者はヱホバをおそるる者のまはりに營をつらねてこれを援く

なんぢらヱホバの恩惠ふかきを嘗ひしれ ヱホバによりたのむ者はさいはひなり

ヱホバの聖徒よヱホバを畏れよヱホバをおそるるものには乏しきことなければなり

わかき獅はともしくして饑ることあり されどヱホバをたづぬるものは嘉物にかくることあらじ

子よきたりて我にきけ われヱホバを畏るべきことを汝等にをしへん

福祉をみんがために生命をしたひ存へんことをこのむ者はたれぞや

なんぢの舌をおさへて惡につかしめず なんぢの口唇をおさへて虚偽をいはざらしめよ

惡をはなれて善をおこなひ和睦をもとめて切にこのことを勉めよ

ヱホバの目はただしきものをかへりみ その耳はかれらの號呼にかたぶく

ヱホバの聖顔はあくをなす者にむかひてその跡を地より断滅したまふ

義者さけびたればヱホバ之をききてそのすべての患難よりたすけいだしたまへり

ヱホバは心のいたみかなしめる者にちかく在してたましひの悔頽れたるものをすくひたまふ

ただしきものは患難おほし されどヱホバはみなその中よりたすけいだしたまふ

ヱホバはかれがすべての骨をまもりたまふ その一つだに折らるることなし

惡はあしきものをころさん 義人をにくむものは刑なはるべし

ヱホバはその僕等のたましひを贖ひたまふ ヱホバに依頼むものは一人だにつみなはるることなからん

第35篇

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ダビデのうた

ヱホバよねがはくは我にあらそふ者とあらそひ我とたたかふものと戦ひたまへ

干と大盾とをとりてわが援にたちいでたまへ

戟をぬきいだしたまひて我におひせまるものの途をふさぎ且わが霊魂にわれはなんぢの救なりといひたまへ

願くはわが霊魂をたづぬるものの恥をえていやしめられ 我をそこなはんと謀るものの退けられて惶てふためかんことを

ねがはくはかれらが風のまへなる粃糠のごとくなりヱホバの使者におひやられんことを

願くはかれらの途をくらくし滑らかにしヱホバの使者にかれらを追ゆかしめたまはんことを

かれらは故なく我をとらへんとて網をあなにふせ 故なくわが霊魂をそこなはんとて阱をうがちたればなり

願くはかれらが思ひよらぬ間にほろびきたり己がふせたる網にとらへられ自らその滅におちいらんことを

然ときわが霊魂はヱホバによりてよろこび その救をもて樂しまん

わがすべての骨はいはん ヱホバよ汝はくるしむものを之にまさりて力つよきものより並くるしむもの貧しきものを掠めうばふ者よりたすけいだし給ふ 誰かなんぢに比ふべき者あらんと

こころあしき證人おこりてわが知ざることを詰りとふ

かれらは惡をもてわが善にむくい我がたましひを依仗なきものとせり

然どわれかれらが病しときには麁服をつけ糧をたちてわが霊魂をくるしめたり わが祈はふところにかへれり

わがかれに作ることはわが友わが兄弟にことならず母の喪にありて痛哭がごとく哀しみうなたれたり

然どかれらはわが倒れんとせしとき喜びつどひわが知ざりしとき匪類あつまりきたりて我をせめ われを裂てやめざりき

かれらは洒宴にて穢きことをのぶる嘲笑者のごとく我にむかひて歯をかみならせり

主よいたづらに見るのみにして幾何時をへたまふや 願くはわがたましひの彼等にほろぼさるるを脱れしめ わが生命をわかき獅よりまぬかれしめたまへ

われ大なる會にありてなんぢに感謝し おほくの民のなかにて汝をほめたたへん

虚偽をもてわれに仇するもののわが故によろこぶことを容したまなかれ 故なくして我をにくむ者のたがひに眴せすることなからしめたまへ

かれらは平安をかたらず あざむきの言をつくりまうけて國内におだやかにすまふ者をそこなはんと謀る

然のみならず我にむかひて口をあけひろげ ああ視よや視よやわれらの眼これをみたりといへり

ヱホバよ汝すでにこれを視たまへり ねがはくは黙したまふなかれ主よわれに遠ざかりたまふなかれ

わが神よわが主よ おきたまへ醒たまへ ねがはくはわがために審判をなしわが訟ををさめたまへ

わが神ヱホバよなんぢの義にしたがひて我をさばきたまへ わが事によりてかれらに歓喜をえしめたまふなかれ

かれらにその心裡にて ああここちよきかな観よこれわが願ひしところなりといはしめたまふなかれ 又われらかれを呑つくせりといはしめたまふなかれ

願くはわが害なはるるを喜ぶもの皆はぢて惶てふためき 我にむかひてはこりかに高ぶるものの愧とはづかしめとを衣んことを

わが義をよみする者をばよろこび謳はしめ大なるかなヱホバその僕のさいはひを悦びたまふと恒にいはしめたまへ

わが舌は終日なんぢの義となんぢの誉とをかたらん

第36篇

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伶長にうたはしめたるヱホバの僕ダビデのうた

あしきものの愆はわが心のうちにかたりて その目のまへに神をおそるるの畏あることなしといふ

かれはおのが邪曲のあらはるることなく憎まるることなからんとて自からその目にて謟る

その口のことばは邪曲と虚偽となり智をこばみ善をおこなふことを息たり

かつその寝床にてよこしまなる事をはかり よからぬ途にたちとまりて惡をきらはず

ヱホバよなんぢの仁慈は天にあり なんぢの眞實は雲にまでおよぶ

汝のただしきは神の山のごとく なんぢの審判はおほいなる淵なり ヱホバよなんぢは人とけものとを護りたまふ

神よなんぢの仁慈はたふときかな 人の子はなんぢの翼の蔭にさけどころを得

なんぢの屋のゆたかなるによりてことごとく飽ことをえん なんぢはその歓樂のかはの水をかれらに飮しめたまはん

そはいのちの泉はなんぢに在り われらはなんぢの光によりて光をみん

ねがはくはなんぢを知るものにたえず憐憫をほどこし心なほき者にたえず正義をほどこしたまへ

たかぶるものの足われをふみ惡きものの手われを逐去ふをゆるし給ふなかれ

邪曲をおこなふ者はかしこに仆れたり かれら打伏られてまた起ことあたはざるべし

第37篇

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ダビデのうた

惡をなすものの故をもて心をなやめ 不義をおこなふ者にむかひて嫉をおこすなかれ

かれらはやがて草のごとくかりとられ青菜のごとく打萎るべければなり

ヱホバによりたのみて善をおこなへ この國にとどまり眞實をもて糧とせよ

ヱホバによりて歓喜をなせ ヱホバはなんぢが心のねがひを汝にあたへたまはん

なんぢの途をヱホバにゆだねよ 彼によりたのまば之をなしとげ

光のごとくなんぢの義をあきらかにし午日のごとくなんぢの訟をあきらかにしたまはん

なんぢヱホバのまへに口をつぐみ忍びてこれを俟望め おのが途をあゆみて榮るものの故をもて あしき謀略をとぐる人の故をもて心をなやむるなかれ

怒をやめ忿恚をすてよ 心をなやむるなかれ これ惡をおこなふ方にうつらん

そは惡をおこなふものは断滅され ヱホバを俟望むものは國をつぐべければなり

あしきものは久しからずしてうせん なんぢ細密にその處をおもひみるともあることなからん

されど謙だるものは國をつぎ また平安のゆたかなるを樂まん

惡きものは義きものにさからはんとて謀略をめぐらし之にむかひて切歯す

主はあしきものを笑ひたまはん かれが日のきたるを見たまへばなり

あしきものは劍をぬき弓をはりて苦しむものと貧しきものとをたふし行ひなほきものを殺さんとせり

されどその劍はおのが胸をさしその弓はをらるべし

義人のもてるもののすくなきは多くの惡きものの豊かなるにまされり

そは惡きものの臂はをらるれどヱホバは義きものを扶持たまへばなり

ヱホバは完全もののもろもろの日をしりたまふ かれらの嗣業はかぎりなく久しからん

かれらは禍害にあふとき愧をおはず饑饉の日にもあくことを得ん

あしき者ははろびヱホバのあたは牧場のさかえの枯るがごとくうせ烟のごとく消ゆかん

あしき者はものかりて償はず 義きものは惠ありて施しあたふ

神のことほぎたまふ人は國をつぎ 神ののろひたまふ人は断滅さるべし

人のあゆみはヱホバによりて定めらる そのゆく途をヱホバよろこびたまへり

縦ひその人たふるることありとも全くうちふせらるることなし ヱホバかれが手をたすけ支へたまへばなり

われむかし年わかくして今おいたれど 義者のすてられ或はその裔の糧こひありくを見しことなし

ただしきものは終日めぐみありて貸あたふ その裔はさいはひなり

惡をはなれて善をなせ 然ばなんぢの住居とこしへならん

ヱホバは公平をこのみ その聖徒をすてたまはざればなり かれらは永遠にまもりたすけらるれど惡きもののすゑは断滅さるべし

ただしきものは國をつぎ その中にすまひてとこしへに及ばん

ただしきものの口は智慧をかたり その舌は公平をのぶ

かれが神の法はそのこころにあり そのあゆみは一歩だにすべることあらじ

あしきものは義者をひそみうかがひて之をころさんとはかる

ヱホバは義者をあしきものの手にのこしおきたまはず 審判のときに罰ひたまふことなし

ヱホバを俟望みてその途をまもれ さらば汝をあげて國をつがせたまはん なんぢ惡者のたちほろぼさるる時にこれをみん

我あしきものの猛くしてはびこれるを見るに生立たる地にさかえしげれる樹のごとし

然れどもかれは逝ゆけり 視よたちまちに無なりぬ われ之をたづねしかど邁ことをえざりき

完人に目をそそぎ直人をみよ 和平なる人には後あれど

罪ををかすものらは共にほろぼされ惡きものの後はかならず断るべければなり

ただしきものの救はヱホバよりいづ ヱホバはかれらが辛苦のときの保砦なり

ヱホバはかれらを助け かれらを解脱ちたまふ ヱホバはかれらを惡者よりときはなちて救ひたまふ かれらはヱホバをその避所とすればなり

第38篇

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記念のためにつくれるダビデのうた

ヱホバよねがはくは忿恚をもて我をせめ はげしき怒をもて我をこらしめ給ふなかれ

なんぢの矢われにあたり なんぢの手わがうへを壓へたり

なんぢの怒によりてわが肉には全きところなく わが罪によりてわが骨には健かなるところなし

わが不義は首をすぎてたかく重荷のごとく負がたければなり

われ愚なるによりてわが傷あしき臭をはなちて腐れただれたり

われ折屈みていたくなげきうなたれたり われ終日かなしみありく

わが腰はことごとく焼るがごとく肉に全きところなければなり

我おとろへはて甚くきずつけられわが心のやすからざるによりて欷歔さけべり

ああ主よわがすべての願望はなんぢの前にあり わが嘆息はなんぢに隠るることなし

わが胸をどりわが力おとろへ わが眼のひかりも亦われをはなれたり

わが友わが親めるものはわが痍をみて遥にたち わが隣もまた遠かりてたてり

わが生命をたづぬるものは羂をまうけ我をそこなはんとするものは惡言をいひ また終日たばかりを謀る

然はあれどわれは聾者のごとくきかず われは口をひらかぬ唖者のごとし

如此われはきかざる人のごとく口にことあげせぬ人のごときなり

ヱホバよ我なんぢを俟望めり 主わが神よなんぢかならず答へたまふべければなり

われ曩にいふ おそらくはかれらわが事によりて喜び わが足のすべらんとき我にむかひて誇りかにたかぶらんと

われ仆るるばかりになりぬ わが悲哀はたえずわが前にあり

そは我みづから不義をいひあらはし わが罪のためにかなしめばなり

わが仇はいきはたらきてたけく故なくして我をうらむるものおほし

惡をもて善にむくゆるものはわれ善事にしたがふが故にわが仇となれり

ヱホバよねがはくは我をはなれたたまふなかれ わが神よわれに遠かりたまふなかれ

主わがすくひよ速きたりて我をたすけたまへ

第39篇

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伶長エドトンにうたはしめたるダビデのうた

われ曩にいへり われ舌をもて罪ををかさざらんために我すべての途をつつしみ惡者のわがまへに在るあひだはわが口に衝をかけんと

われ黙して唖となり善言すらことばにいださず わが憂なほおこれり

わが心わがうちに熱し おもひつづくるほどに火もえぬればわれ舌をもていへらく

ヱホバよ願くはわが終とわが日の數のいくばくなるとを知しめたまへ わが無常をしらしめたまへ

観よなんぢわがすべての日を一掌にすぎさらしめたまふ わがかいのち主前にてはなきにことならず 實にすべての人は皆その盛時だにもむなしからざるはなしセラ

人の世にあるは影にことならず その思ひなやむことはむなしからざるなし その積蓄ふるものはたが手にをさまるをしらず

主よわれ今なにをかまたん わが望はなんぢにあり

ねがはくは我ぞすべて愆より助けいだしたまへ 愚なるものに誹らるることなからしめたまへ

われは黙して口をひらかず 此はなんぢの成したまふ者なればなり

願くはなんぢの責をわれよりはなちたまへ 我なんぢの手にうちこらさるるによりて亡ぶるばかりになりぬ

なんぢ罪をせめて人をこらし その慕ひよろこぶところのものを蠧のくらふがごとく消うせしめたまふ 實にもろもろの人はむなしからざるなしセラ

ああヱホバよねがはくはわが祈をきき わが號呼に耳をかたぶけたまへ わが涙をみて黙したまふなかれ われはなんぢに寄る旅客すべてわが列祖のごとく宿れるものなり

我ここを去てうせざる先になんぢ面をそむけてわれを爽快ならしめたまへ

第40篇

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伶長にうたはしめたるダビデのうた

我たへしのびてヱホバを俟望みたり ヱホバ我にむかひてわが號呼をききたまへり

また我をほろびの阱より泥のなかよりとりいだしてわが足を磐のうへにおきわが歩をかたくしたまへり

ヱホバはあたらしき歌をわが口にいれたまへり此はわれらの神にささぐる讃美なり おほくの人はこれを見ておそれ かつヱホバによりたのまん

ヱホバをおのが頼となし高るものによらず虚偽にかたぶく者によらざる人はさいはひなり

わが神ヱホバよなんぢの作たまへる奇しき迹と われらにむかふ念とは甚おほくして汝のみまへにつらねいふことあたはず 我これをいひのべんとすれどその數かぞふることあたはず

なんぢ犠牲と祭物とをよろこびたまはず汝わが耳をひらきたたまへり なんぢ燔祭と罪祭とをもとめたまはず

そのとき我いへらく 観よわれきたらんわがことを書の巻にしるしたり

わが神よわれは聖意にしたがふことを樂む なんぢの法はわが心のうちにありと

われ大なる會にて義をつげしめせり 視よわれ口唇をとぢず ヱホバよなんぢ之をしりたまふ

われなんぢの義をわが心のうちにひめおかず なんぢの眞實となんぢの拯救とをのべつたへたり 我なんぢの仁慈となんぢの眞理とをおほいなる會にかくさざりき

ヱホバよなんぢ憐憫をわれにをしみたまふなかれ 仁慈と眞理とをもて恒にわれをまもりたまへ

そはかぞへがたき禍害われをかこみ わが不義われに追及てあふぎみること能はぬまでになりぬ その多きことわが首の髪にもまさり わが心きえうするばかりなればなり

ヱホバよ願くはわれをすくひたまヘ ヱホバよ急ぎきたりて我をたすけたまへ

願くはわが霊魂をたづねほろぼさんとするものの皆はぢあわてんことを わが害はるるをよろこぶもののみな後にしりぞきて恥をおはんことを

われにむかひて ああ視よや視よやといふ者おのが恥によりておどろきおそれんことを

願くはなんぢを尋求むるものの皆なんぢによりて樂みよろこばんことを なんぢの救をしたふものの恒にヱホバは大なるかなととなへんことを

われはくるしみ且ともし 主われをねんごろに念ひたまふ なんぢはわが助なり われをすくひたまふ者なり ああわが神よねがはくはためらひたまふなかれ

第41篇

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うたのかみに謳はしめたるダビデのうた

よわき人をかへりみる者はさいはひなり ヱホバ斯るものを禍ひの日にたすけたまはん

ヱホバ之をまもり之をながらへしめたまはん かれはこの地にありて福祉をえん なんぢ彼をその仇ののぞみにまかせて付したまふなかれ

ヱホバは彼がわづらひの床にあるをたすけ給はん なんぢかれが病るときその衾裯をしきかへたまはん

我いへらくヱホバよわれを憐みわがたましひを醫したまへ われ汝にむかひて罪ををかしたりと

わが仇われをそしりていへり 彼いづれのときに死いづれのときにその名ほろびんと

かれ又われを見んとてきたるときは虚偽をかたり邪曲をその心にあつめ 外にいでてはこれを述ぶ

すべてわれをにくむもの互ひにささやき我をそこなはんとて相謀る

かつ云 かれに一のわざはひつきまとひたれば仆れふしてふたたび起ることなからんと

わが恃みしところ わが糧をくらひしところのわが親しき友さへも我にそむきてその踵をあげたり

然はあれどヱホバよ汝ねがはくは我をあはれみ我をたすけて起したまへ されば我かれらに報ることをえん

わが仇われに打勝ちてよろこぶこと能はざるをもて汝がわれを愛でいつくしみたまふを我しりぬ

わが事をいはば なんぢ我をわが完全うちにてたもち我をとこしへに面のまへに置たまふ

イスラエルの神ヱホバはとこしへより永遠までほむべきかな アーメン アーメン

第42篇

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伶長にうたはしめたるコラの子のをしへの歌

ああ神よしかの渓水をしたひ喘ぐがごとく わが霊魂もなんぢをしたひあへぐなり

わがたましひは渇けるごとくに神をしたふ 活神をぞしたふ 何れのときにか我ゆきて神のみまへにいでん

かれらが終日われにむかひて なんぢの神はいづくにありやとののしる間はただわが涙のみ晝夜そそぎてわが糧なりき

われむかし群をなして祭日をまもる衆人とともにゆき歓喜と讃美のこゑをあげてかれらを神の家にともなへり 今これらのことを追想してわが衷よりたましひを注ぎいだすなり

ああわが霊魂よ なんぢ何ぞうなたるるや なんぞわが衷におもひみだるるや なんぢ神をまちのぞめ われに聖顔のたすけありて我なほわが神をほめたたふべければなり

わが神よわがたましひはわが衷にうなたる 然ばわれヨルダンの地よりヘルモンよりミザルの山より汝をおもひいづ

なんぢの大瀑のひびきによりて淵々よびこたへ なんぢの波なんぢの猛浪ことごとくわが上をこえゆけり

然はあれど晝はヱホバその憐憫をほどこしたまふ 夜はその歌われとともにあり 此うたはわがいのちの神にささぐる祈なり

われわが磐なる神にいはん なんぞわれを忘れたまひしや なんぞわれは仇のしへたげによりて悲しみありくや

わが骨もくだくるばかりにわがてきはひねもす我にむかひて なんぢの神はいづくにありやといひののしりつつ我をそしれり

ああわがたましひよ 汝なんぞうなたるるや 何ぞわがうちに思ひみだるるや なんぢ神をまちのぞめ われ尚わがかほの助なるわが神をほめたたふべければなり

第43篇

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神よねがはくは我をさばき 情しらぬ民にむかひてわが訟をあげつらひ詭計おほきよこしまなる人より我をたすけいだし給へ

なんぢはわが力の神なり なんぞ我をすてたまひしや 何ぞわれは仇の暴虐によりてかなしみありくや

願くはなんぢの光となんぢの眞理とをはなち我をみちびきてその聖山とその帷幄とにゆかしめたまへ

さらばわれ神の祭壇にゆき又わがよろこびよろこぶ神にゆかん ああ神よわが神よわれ琴をもてなんぢを讃たたへん

ああわが霊魂よなんぢなんぞうなたるるや なんぞわが衷におもひみだるるや なんぢ神によりて望をいだけ 我なほわが面のたすけなるわが神をほめたたふべければなり

第44篇

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伶長にうたはしめたるコラの子のをしへの歌

ああ神よむかしわれらの列祖の日になんぢがなしたまひし事迹をわれら耳にきけり 列祖われらに語れり

なんぢ手をもてもろもろの國人をおひしりぞけ われらの列祖をうゑ並もろもろの民をなやましてわれらの列祖をはびこらせたまひき

かれらはおのが劍によりて國をえしにあらず おのが臂によりて勝をえしにあらず 只なんぢの右の手なんぢの臂なんぢの面のひかりによれり 汝かれらを惠みたまひたればなり

神よなんぢはわが王なり ねがはくはヤコブのために救をほどこしたまへ

われらは汝によりて敵をたふし また我儕にさからひて起りたつものをなんぢの名によりて踐壓ふべし

そはわれわが弓によりたのまず わが劍もまた我をすくふことあたはざればなり

なんぢわれらを敵よりすくひ またわれらを惡むものを辱かしめたまへり

われらはひねもす神によりてほこり われらは永遠になんぢの名に感謝せんセラ

しかるに今はわれらをすてて恥をおはせたまへり われらの軍人とともに出ゆきたまはず

われらを敵のまへより退かしめたまへり われらを惡むものその任意にわれらを掠めうばへり

なんぢわれらを食にそなへらるる羊のごとくにあたへ斯てわれらをもろもろの國人のなかにちらし

得るところなくしてなんぢの民をうり その價によりてなんぢの富をましたまはざりき

汝われらを隣人にそしらしめ われらを環るものにあなどらしめ 嘲けらしめたまへり

又もろもろの國のなかにわれらを談柄となし もろもろの民のなかにわれらを頭ふらるる者となしたまへり

わが凌辱ひねもす我がまへにあり わがかほの恥われをおほへり

こは我をそしり我をののしるものの聲により我にあだし我にうらみを報るものの故によるなり

これらのこと皆われらに臨みきつれどわれらなほ汝をわすれず なんぢの契約をいつはりまもらざりき

われらの心しりぞかずわれらの歩履なんぢの道をはなれず

然どなんぢは野犬のすみかにてわれらをきずつけ死蔭をもてわれらをおほひ給へり

われらもしおのれの神の名をわすれ或はわれらの手を異神にのべしことあらんには

神はこれを糺したまはざらんや 神はこころの隠れたることをも知たまふ

われらは終日なんぢのために死にわたされ屠られんとする羊の如くせられたり

主よさめたまへ何なればねぶりたまふや起たまへ われらをとこしへに棄たまふなかれ

いかなれば聖顔をかくしてわれらがうくる苦難と虐待とをわすれたまふや

われらのたましひはかがみて塵にふし われらの腹は土につきたり

ねがはくは起てわれらをたすけたまへ なんぢの仁慈のゆゑをもてわれらを贖ひたまへ

第45篇

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百合花のしらべにあはせて伶長にうたはしめたるコラの子のをしへのうた 愛のうた

わが心はうるはしき事にてあふる われは王のために詠たるものをいひいでん わが舌はすみやけく寫字人の筆なり

なんぢは人の子輩にまさりて美しく文雅そのくちびるにそそがる このゆゑに神はとこしへに汝をさいはひしたまへり

英雄よなんぢその劍その榮その威をこしに佩べし

なんぢ眞理と柔和とただしきとのために威をたくましくし勝をえて乗すすめ なんぢの右手なんぢに畏るべきことををしへん

なんぢの矢は鋭して王のあたの胸をつらぬき もろもろの民はなんぢの下にたふる

神よなんぢの寳座はいやとほ永くなんぢの國のつゑは公平のつゑなり

なんぢは義をいつくしみ惡をにくむ このゆゑに神なんぢの神はよろこびの膏をなんぢの侶よりまさりて汝にそそぎたまへり

なんぢの衣はみな没薬蘆薈肉桂のかをりあり 琴瑟の音ざうげの諸殿よりいでて汝をよろこばしめたり

なんぢがたふとき婦のなかにはもろもろの王のむすめあり 皇后はオフルの金をかざりてなんぢの右にたつ

女よきけ目をそそげ なんぢの耳をかたぶけよ なんぢの民となんぢが父の家とをわすれよ

さらば王はなんぢの美麗をしたはん 王はなんぢの主なりこれを伏拝め

ツロの女は贈物をもてきたり民間のとめるものも亦なんぢの惠をこひもとめん

王のむすめは殿のうちにていとど榮えかがやき そのころもは金をもて織なせり

かれは鍼繍せる衣をきて王のもとにいざなはる 之にともなへる處女もそのあとにしたがひて汝のもとにみちびかれゆかん

かれらは歓喜と快樂とをもていざなはれ斯して王の殿にいらん

なんぢの子らは列祖にかはりてたち なんぢはこれを全地に君となさん

我なんぢの名をよろづ代にしらしめん この故にもろもろの民はいやとほ永くなんぢに感謝すべし

第46篇

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女音のしらべにしたがひて伶長にうたはしめたるコラの子のうた

神はわれらの避所また力なり なやめるときの最ちかき助なり

さればたとひ地はかはり山はうみの中央にうつるとも我儕はおそれじ

よしその水はなりとどろきてさわぐとも その溢れきたるによりて山はゆるぐとも何かあらんセラ

河ありそのながれは神のみやこをよろこばしめ至上者のすみたまふ聖所をよろこばしむ

神そのなかにいませば都はうごかじ 神は朝つとにこれを助けたまはん

もろもろの民はさわぎたち もろもろの國はうごきたり 神その聲をいだしたまへば地はやがてとけぬ

萬軍のヱホバはわれらとともなり ヤコブの神はわれらのたかき櫓なりセラ

きたりてヱホバの事跡をみよ ヱホバはおほくの懼るべきことを地になしたまへり

ヱホバは地のはてまでも戰闘をやめしめ弓ををり戈をたち戰車を火にてやきたまふ

汝等しづまりて我の神たるをしれ われはもろもろの國のうちに崇められ全地にあがめらるべし

萬軍のヱホバはわれらと偕なり ヤコブの神はわれらの高きやぐらなりセラ

第47篇

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伶長にうたはしめたるコラの子のうた

もろもろのたみよ手をうち歓喜のこゑをあげ神にむかひてさけべ

いとたかきヱホバはおそるべく また地をあまねく治しめす大なる王にてましませばなり

ヱホバはもろもろの民をわれらに服はせ もろもろの國をわれらの足下にまつろはせたまふ

又そのいつくしみたまふヤコブが譽とする嗣業をわれらのために選びたまはんセラ

神はよろこびさけぶ聲とともにのぼり ヱホバはラッパの聲とともにのぼりたまへり

ほめうたへ神をほめうたへ 頌歌へわれらの王をほめうたへ

かみは地にあまねく王なればなり 教訓のうたをうたひてほめよ

神はもろもろの國をすべをさめたまふ 神はそのきよき寳座にすわりたまふ

もろもろのたみの諸侯はつどひきたりてアブラハムの神の民となれり 地のもろもろの盾は神のものなり神はいとたふとし

第48篇

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コラの子のうたなり讃美なり

ヱホバは大なり われらの神の都そのきよき山のうへにて甚くほめたたへられたまふべし

シオンの山はきたの端たかくしてうるはしく喜悦を地にあまねくあたふ ここは大なる王のみやこなり

そのもろもろの殿のうちに神はおのれをたかき櫓としてあらはしたまへり

みよ王等はつどひあつまりて偕にすぎゆきぬ

かれらは都をみてあやしみ且おそれて忽ちのがれされり

戰慄はかれらにのぞみ その苦痛は子をうまんとする婦のごとし

なんぢは東風をおこしてタルシシの舟をやぶりたまふ

曩にわれらが聞しごとく今われらは萬軍のヱホバの都われらの神のみやこにて之をみることをえたり 神はこの都をとこしへまで固くしたまはんセラ

神よ我らはなんぢの宮のうちにて仁慈をおもへり

神よなんぢの譽はその名のごとく地の極にまでおよべり なんぢの右手はただしきにて充り

なんぢのもろもろの審判によりてシオンの山はよろこびユダの女輩はたのしむべし

シオンの周圍をありき徧くめぐりてその櫓をかぞへよ

その石垣に目をとめよ そのもろもろの殿をみよ なんぢらこれを後代にかたりつたへんが爲なり

そはこの神はいや遠長にわれらの神にましましてわれらを死るまでみちびきたまはん

第49篇

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伶長にうたはしめたるコラの子のうた

もろもろの民よきけ賤きも貴きも富るも貧きもすべて地にすめる者よ なんぢらともに耳をそばだてよ

わが口はかしこきことをかたり わが心はさときことを思はん

われ耳を喩言にかたぶけ琴をならしてわが幽玄なる語をときあらはさん

わが踵にちかかる不義のわれを打圍むわざはひの日もいかで懼るることあらんや

おのが富をたのみ財おほきを誇るもの

たれ一人おのが兄弟をあがなふことあたはず之がために贖價を神にささげ

之をとこしへに生存へしめて朽ざらしむることあたはず(霊魂をあがなふには費いとおほくして此事をとこしへに捨置ざるを得ざればなり)

そは智きものも死 おろかものも獣心者もひとしくほろびてその富を他人にのこすことは常にみるところなり

かれら竊におもふ わが家はとこしへに存りわがすまひは世々にいたらんと かれらはその地におのが名をおはせたり

されど人は譽のなかに永くとどまらず亡びうする獣のごとし

斯のごときは愚かなるものの途なり 然はあれど後人はその言をよしとせんセラ

かれらは羊のむれのごとくに陰府のものと定めらる 死これが牧者とならん直きもの朝にかれらををさめん その美容は陰府にほろぼされて宿るところなかるべし

されど神われを接たまふべければわが霊魂をあがなひて陰府のちからより脱かれしめたまはんセラ

人のとみてその家のさかえくははらんとき汝おそるるなかれ

かれの死るときは何一つたづさへゆくことあたはず その榮はこれにしたがひて下ることをせざればなり

かかる人はいきながらふるほどに己がたましひを祝するとも みづからを厚うするがゆゑに人々なんぢをほむるとも

なんぢ列祖の世にゆかん かれらはたえて光をみざるべし

尊貴なかにありて暁らざる人はほろびうする獣のごとし

第50篇

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アサフのうた

ぜんのうの神ヱホバ詔命して日のいづるところより日のいるところまであまねく地をよびたまへり

かみは美麗の極なるシオンより光をはなちたまへり

われらの神はきたりて黙したまはじ火その前にものをやきつくし暴風その四周にふきあれん

神はその民をさばかんとて上なる天および地をよびたまへり

いはく祭物をもて我とけいやくをたてしわが聖徒をわがもとに集めよと

もろもろの天は神の義をあらはせり 神はみづから審士たればなりセラ

わが民よきけ我ものいはんイスラエルよきけ我なんぢにむかひて證をなさん われは神なんぢの神なり

わがなんぢを責るは祭物のゆゑにあらず なんぢの燔祭はつねにわが前にあり

我はなんぢの家より牡牛をとらず なんぢの牢より牡山羊をとらず

林のもろもろのけもの山のうへの千々の牲畜はみなわが有なり

われは山のすべての鳥をしる 野のたけき獣はみなわがものなり

世界とそのなかに充るものとはわが有なれば縦ひわれ飢るともなんぢに告じ

われいかで牡牛の肉をくらひ牡山羊の血をのまんや

感謝のそなへものを神にささげよ なんぢのちかひを至上者につくのへ

なやみの日にわれをよべ我なんぢを援けん而してなんぢ我をあがむべし

然はあれど神あしきものに言給く なんぢは教をにくみ わが言をその後にすつるものなるに何のかかはりありてわが律法をのべ わがけいやくを口にとりしや

なんぢ盗人をみれば之をよしとし姦淫をおこなふものの伴侶となれり

なんぢその口を惡にわたす なんぢの舌は詭計をくみなせり

なんぢ坐りて兄弟をそしり己がははの子を誣ののしれり

汝これらの事をなししをわれ黙しぬれば なんぢ我をおのれに恰にたるものとおもへり されど我なんぢを責めてその罪をなんぢの目前につらぬべし

神をわするるものよ今このことを念へ おそらくは我なんぢを抓さかんとき助るものあらじ

感謝のそなへものを献るものは我をあがむ おのれの行爲をつつしむ者にはわれ神の救をあらはさん

第51篇

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ダビデがバテセバにかよひしのち預言者ナタンの來れるときよみて伶長にうたはしめたる歌

ああ神よねがはくはなんぢの仁慈によりて我をあはれみ なんぢの憐憫のおほきによりてわがもろもろの愆をけしたまへ

わが不義をことごとくあらひさり我をわが罪よりきよめたまへ

われはわが愆をしる わが罪はつねにわが前にあり

我はなんぢにむかひて獨なんぢに罪ををかし聖前にあしきことを行へり されば汝ものいふときは義とせられ なんぢ鞫くときは咎めなしとせられ給ふ

視よわれ邪曲のなかにうまれ罪ありてわが母われをはらみたりき

なんぢ眞實をこころの衷にまでのぞみ わが隠れたるところに智慧をしらしめ給はん

なんぢヒソブをもて我をきよめたまへ さらばわれ浄まらん 我をあらひたまへ さらばわれ雪よりも白からん

なんぢ我によろこびと快樂とをきかせ なんぢが碎きし骨をよろこばせたまへ

ねがはくは聖顔をわがすべての罪よりそむけ わがすべての不義をけしたまへ

ああ神よわがために清心をつくり わが衷になほき霊をあらたにおこしたまへ

われを聖前より棄たまふなかれ 汝のきよき霊をわれより取りたまふなかれ

なんぢの救のよろこびを我にかへし自由の霊をあたへて我をたもちたまへ

さらばわれ愆ををかせる者になんぢの途ををしへん罪人はなんぢに歸りきたるべし

神よわが救のかみよ血をながしし罪より我をたすけいだしたまへ わが舌は聲たからかになんぢの義をうたはん

主よわが口唇をひらきたまへ 然ばわが口なんぢの頌美をあらはさん

なんぢは祭物をこのみたまはず もし然らずば我これをささげん なんぢまた燔祭をも悦びたまはず

神のもとめたまふ祭物はくだけたる霊魂なり 神よなんぢは碎けたる悔しこころを藐しめたまふまじ

ねがはくは聖意にしたがひてシオンにさいはひし ヱルサレムの石垣をきづきたまへ

その時なんぢ義のそなへものと燔祭と全きはんさいとを悦びたまはん かくて人々なんぢの祭壇に牡牛をささぐべし

第52篇

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エドム人ドエグ、サウルにきたりてダビデはアビメレクの家にきぬと告しときダビデがよみて伶長にうたはしめたる教訓のうた

猛者よなんぢ何なればあしき企圖をもて自らほこるや神のあはれみは恒にたえざるなり

なんぢの舌はあしきことをはかり利き剃刀のごとくいつはりをおこなふ

なんぢは善よりも惡をこのみ正義をいふよりも虚偽をいふをこのむセラ

たばかりの舌よなんぢはすべての物をくひほろぼす言をこのむ

されば神とこしへまでも汝をくだき また汝をとらへてその幕屋よりぬきいだし生るものの地よりなんぢの根をたやしたまはんセラ

義者はこれを見ておそれ彼をわらひていはん

神をおのが力となさず その富のゆたかなるをたのみ その惡をもて己をかたくせんとする人をみよと

然はあれどわれは神の家にあるあをき橄欖の樹のごとし 我はいやとほながに神のあはれみに依頼まん

なんぢこの事をおこなひ給ひしによりて我とこしへになんぢに感謝し なんぢの聖徒のまへにて聖名をまちのぞまん こは宜しきことなればなり

第53篇

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マハラツ(樂器の名、あるひはいふ調べの名)にあはせて伶長にうたはしめたるダビデの教訓のうた

愚かなるものは心のうちに神なしといへり かれらは腐れたりかれらは憎むべき不義をおこなへり善をおこなふ者なし

神は天より人の子をのぞみて悟るものと神をたづぬる者とありやなしやを見たまひしに

みな退ぞきてことごとく汚れたり善をなすものなし一人だになし

不義をおこなふものは知覺なきか かれらは物くふごとくわが民をくらひ また神をよばふことをせざるなり

かれらは懼るべきことのなきときに大におそれたり 神はなんぢにむかひて營をつらぬるものの骨をちらしたまへばなり 神かれらを棄たまひしによりて汝かれらを辱かしめたり

願くはシオンよりイスラエルの救のいでんことを 神その民のとらはれたるを返したまふときヤコブはよろこびイスラエルは樂まん

第54篇

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ジフ人のサウルにきたりてダビデはわれらの處にかくれをるにあらずやといひたりしとき ダビデうたのかみに琴にてうたはしめたる教訓のうた

神よねがはくは汝の名によりて我をすくひ なんぢの力をもて我をさばきたまへ

神よわが祈をききたまへ わが口のことばに耳をかたぶけたまへ

そは外人はわれにさからひて起りたち強暴人はわがたましひを索むるなり かれらは神をおのが前におかざりきセラ

みよ神はわれをたすくるものなり 主はわがたましひを保つものとともに在せり

主はわが仇にそのあしきことの報をなしたまはん 願くはなんぢの眞實によりて彼等をほろぼしたまへ

我よろこびて祭物をなんぢに献ん ヱホバよ我なんぢの名にむかひて感謝せん こは宜しきことなればなり

そはヱホバはすべての患難より我をすくひたまへり わが目はわが仇につきての願望をみたり

第55篇

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ダビデうたのかみに琴にてうたはしめたる教訓のうた

神よねがはくは耳をわが祈にかたぶけたまへ わが懇求をさけて身をかくしたまふなかれ

われに聖意をとめ 我にこたへたまへ われ歎息によりてやすからず悲みうめくなり

これ仇のこゑと惡きものの暴虐とのゆゑなり そはかれら不義をわれに負せ いきどほりて我におひせまるなり

わが心わがうちに憂ひいたみ死のもろもろの恐懼わがうへにおちたり

おそれと戰慄とわれにのぞみ甚だしき恐懼われをおほへり

われ云ねがはくは鴿のごとく羽翼のあらんことを さらば我とびさりて平安をえん

みよ我はるかにのがれさりて野にすまんセラ

われ速かにのがれて暴風と狂風とをはなれん

われ都のうちに強暴とあらそひとをみたり 主よねがはくは彼等をほろぼしたまへ かれらの舌をわかれしめたまへ

彼等はひるもよるも石垣のうへをあるきて邑をめぐる 邑のうちには邪曲とあしき企圖とあり

また惡きこと邑のうちにあり しへたげと欺詐とはその街衢をはなるることなし

われを謗れるものは仇たりしものにあらず もし然りしならば尚しのばれしなるべし 我にむかひて己をたかくせし者はわれを恨たりしものにあらず若しかりしならば身をかくして彼をさけしなるべし

されどこれ汝なり われとおなじきもの わが友われと親しきものなり

われら互にしたしき語らひをなし また會衆のなかに在てともに神の家にのぼりたりき

死は忽然かれらにのぞみ その生るままにて陰府にくだらんことを そは惡事その住處にありその中にあればなり

されど我はただ神をよばんヱホバわれを救ひたまふべし

夕にあしたに晝にわれなげき且かなしみうめかん ヱホバわが聲をききたまふべし

ヱホバは我をせむる戰闘よりわが霊魂をあがなひいだして平安をえしめたまへり そはわれを攻るもの多かりければなり

太古よりいます者なる神はわが聲をききてかれらを惱めたまべしセラ かれらには變ることなく神をおそるることなし

かの人はおのれと睦みをりしものに手をのべてその契約をけがしたり

その口はなめらかにして乳酥のごとくなれどもその心はたたかひなり その言はあぶらに勝りてやはらかなれどもぬきたる劍にことならず

なんぢの荷をヱホバにゆだねよさらば汝をささへたまはん ただしき人のうごかさるることを常にゆるしたまふまじ

かくて神よなんぢはかれらを亡の坑におとしいれたまはん血をながすものと詭計おほきものとは生ておのが日の半にもいたらざるべし 然はあれどわれは汝によりたのまん

第56篇

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ダビデがガテにてペリシテ人にとらへられしとき詠て「遠きところにをる音をたてぬ鴿」のしらべにあはせて伶長にうたはしめたるミクタムの歌

ああ神よねがはくは我をあはれみたまへ 人いきまきて我をのまんとし終日たたかひて我をしへたぐ

わが仇ひねもす急喘てわれをのまんとす誇りたかぶりて我とたたかふものおほし

われおそるるときは汝によりたのまん

われ神によりてその聖言をほめまつらん われ神に依頼みたればおそるることあらじ肉體われになにをなし得んや

かれらは終日わがことばを曲るなり その思念はことごとくわれにわざはひをなす

かれらは群つどひて身をひそめ わが歩に目をとめてわが霊魂をうかがひもとむ

かれらは不義をもてのがれんとおもへり 神よねがはくは憤ほりてもろもろの民をたふしたまへ

汝わがあまた土の流離をかぞへたまへり なんぢの革嚢にわが涙をたくはへたまへ こは皆なんぢの冊にしるしあるにあらずや

わがよびもとむる日にはわが仇しりぞかん われ神のわれを守りたまふことを知る

われ神によりてその聖言をはめまつらん 我ヱホバによりてそのみことばを讃まつらん

われ神によりたのみたれば懼るることあらじ 人はわれに何をなしえんや

神よわがなんぢにたてし誓はわれをまとへり われ感謝のささげものを汝にささげん

汝わがたましひを死よりすくひたまへばなり なんぢ我をたふさじとわが足をまもり生命の光のうちにて神のまへに我をあゆませ給ひしにあらずや

第57篇

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ダビデが洞にいりてサウルの手をのがれしとき詠て「ほろぼすなかれ」にといふ調にあはせて伶長にうたはしめたるミクタムのうた

我をあはれみたまへ神よわれをあはれみたまへ わが霊魂はなんぢを避所とす われ禍害のすぎさるまではなんぢの翼のかげを避所とせん

我はいとたかき神によばはん わがために百事をなしをへたまふ神によばはん

神はたすけを天よりおくりて我をのまんとする者のそしるときに我を救ひたまはんセラ 神はその憐憫その眞實をおくりたまはん

わがたましひは群ゐる獅のなかにあり 火のごとくもゆる者 その歯は戈のごとく矢のごとくその舌はとき劍のごとき人の子のなかに我ふしぬ

神よねがはくはみづからを天よりも高くしみさかえを全地のうへに挙たまへ

かれらはわが足をとらへんとて網をまうく わが霊魂はうなたる かれらはわがまへに阱をほりたり而してみづからその中におちいれりセラ

わが心さだまれり神よわがこころ定まれり われ謳ひまつらん頌まつらん

わが榮よさめよ 筝よ琴よさめよ われ黎明をよびさまさん

主よわれもろもろの民のなかにてなんぢに感謝し もろもろの國のなかにて汝をほめうたはん

そは汝のあはれみは大にして天にまでいたり なんぢの眞實は雲にまでいたる

神よねがはくは自からを天よりも高くし光榮をあまねく地のうへに挙たまへ

第58篇

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ダビデがよみて「ほろぼすなかれ」といふ調にあはせて伶長にうたはしめたるミクタムのうた

なんぢら黙しゐて義をのべうるか 人の子よなんぢらなほき審判をおこなふや

否なんぢらは心のうちに惡事をおこなひ その手の強暴をこの地にはかりいだすなり

あしきものは胎をはなるるより背きとほざかり生れいづるより迷ひていつはりをいふ

かれらの毒は蛇のどくのごとし かれらは蠱術をおこなふものの甚たくみにまじなふその聲をだにきかざる耳ふさぐ聾ひの蝮のごとし

神よかれらの口の歯ををりたまヘ ヱホバよ壮獅の牙をぬきくだきたまへ

願くはかれらを流れゆく水のごとくに消失しめ その矢をはなつときは折れたるごとくなし給はんことを

また融てきえゆく蝸牛のごとく婦のときならず産たる目をみぬ嬰のごとくならしめ給へ

なんぢらの釜いまだ荊蕀の火をうけざるさきに青をも燃たるをもともに狂風にて吹さりたまはん

義者はかれらが讎かへさるるを見てよろこび その足をあしきものの血のなかにてあらはん

かくて人はいふべし實にただしきものに報賞あり實にさばきをほどこしたまふ神はましますなりと

第59篇

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サウル、ダビデを殺さんとし人をおくりてその家をうかがはしめし時ダビデがよみて「ほろぼすなかれ」といふ調にあはせて伶長にうたはしめたるミクタムの歌

わが神よねがはくは我をわが仇よりたすけいだし われを高處におきて我にさからひ起立つものより脱かれしめたまへ

邪曲をおこなふものより我をたすけいだし血をながす人より我をすくひたまへ

視よかれらは潜みかくれてわが霊魂をうかがひ猛者むれつどひて我をせむ ヱホバよ此はわれに愆あるにあらず われに罪あるにあらず

かれら趨りまはりて過失なきに我をそこなはんとて備をなす ねがはくは我をたすくるために目をさまして見たまへ

なんぢヱホバ萬軍の神イスラエルの神よ ねがはくは目をさましてもろもろの國にのぞみたまへ あしき罪人にあはれみを加へたまふなかれセラ

かれらは夕にかへりきたり犬のごとくほえて邑をへありく

視よかれらは口より惡をはく そのくちびるに劍あり かれらおもへらく誰ありてこの言をきかんやと

されどヱホバよ汝はかれらをわらひ もろもろの國をあざわらひたまはん

わが力よわれ汝をまちのぞまん 神はわがたかき櫓なり

憐憫をたまふ神はわれを迎へたまはん 神はわが仇につきての願望をわれに見させたまはん

願くはかれらを殺したまふなかれ わが民つひに忘れやはせん 主われらの盾よ 大能をもてかれらを散し また卑したまへ

かれらがくちびるの言はその口のつみなり かれらは詛と虚偽とをいひいづるによりてその傲慢のためにとらへられしめたまへ

忿恚をもてかれらをほろぼしたまへ 再びながらふることなきまでに彼等をほろぼしたまヘ ヤコブのなかに神いまして統治めたまふことをかれらに知しめて地の極にまでおよぼしたまヘセラ

かれらは夕にかへりきたり犬のごとくほえて邑をへありくべし

かれらはゆききして食物をあさり もし飽ことなくば終夜とどまれり

されど我はなんぢの大能をうたひ清晨にこゑをあげてなんぢの憐憫をうたひまつらん なんぢわが迫りくるしみたる日にたかき櫓となり わが避所となりたまひたればなり

わがちからよ我なんぢにむかひて頌辭をうたひまつらん 神はわがたかき櫓われにあはれみをたまふ神なればなり

第60篇

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ダビデ、ナハライムのアラムおよびゾバのアラムとたたかひをりしがヨアブかへりゆき塩谷にてエドム人一萬二千をころししとき教訓をなさんとてダビデがよみて「證詞の百合花」といふ調にあはせて伶長にうたはしめたるミクタムの歌

神よなんぢわれらを棄われらをちらし給へり なんぢは憤ほりたまへり ねがはくは再びわれらを歸したまへ

なんぢ國をふるはせてこれを裂たまへり ねがはくはその多くの隙をおぎなひたまへ そは國ゆりうごくなり

なんぢはその民にたへがたきことをしめし 人をよろめかする酒をわれらに飮しめ給へり

なんぢ眞理のために挙しめんとて汝をおそるるものに一つの旗をあたへたまへりセラ

ねがはくは右の手をもて救をほどこし われらに答をなして愛しみたまふものに助をえしめたまへ

神はその聖をもていひたまへり われ甚くよろこばん われシケムをわかちスコテの谷をはからん

ギレアデはわがもの マナセはわが有なり エフライムも亦わが首のまもりなり ユダはわが杖

モアブはわが足盥なり エドムにはわが履をなげん ベリシテよわが故によりて聲をあげよと

たれかわれを堅固なる邑にすすましめんや 誰かわれをみちびきてエドムにゆきたるか

神よなんぢはわれらを棄たまひしにあらずや 神よなんぢはわれらの軍とともにいでゆきたまはず

ねがはくは助をわれにあたへて敵にむかはしめたまへ 人のたすけは空しければなり

われらは神によりて勇しくはたらかん われらの敵をみたまふものは神なればなり

第61篇

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琴にあはせて伶長にうたはしめたるダビデのうた

ああ神よねがはくはわが哭聲をききたまへ わが祈にみこころをとめたまへ

わが心くづほるるとき地のはてより汝をよばん なんぢ我をみちびきてわが及びがたきほどの高き磐にのぼらせたまへ

なんぢはわが避所われを仇よりのがれしむる堅固なる櫓なればなり

われ永遠になんぢの帷幄にすまはん我なんぢの翼の下にのがれんセラ

神よなんぢはわがもろもろの誓をきき名をおそるるものにたまふ嗣業をわれにあたへたまへり

なんぢは王の生命をのばし その年を幾代にもいたらせたまはん

王はとこしへに神のみまへにとどまらん ねがはくは仁慈と眞實とをそなへて彼をまもりたまへ

さらば我とこしへに名をほめうたひて日ごとにわがもろもろの誓をつくのひ果さん

第62篇

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エドトンの體にしたがひて伶長にうたはしめたるダビデのうた

わがたましひは黙してただ神をまつ わがすくひは神よりいづるなり

神こそはわが磐わがすくひなれ またわが高き櫓にしあれば我いたくは動かされじ

なんぢらは何のときまで人におしせまるや なんぢら相共にかたぶける石垣のごとく揺ぎうごける籬のごとくに人をたふさんとするか

かれらは人をたふとき位よりおとさんとのみ謀り いつはりをよろこびまたその口にてはいはひその心にてはのろふセラ

わがたましひよ黙してただ神をまて そはわがのぞみは神よりいづ

神こそはわが磐わがすくひなれ 又わがたかき櫓にしあれば我はうごかされじ

わが救とわが榮とは神にあり わがちからの磐わがさけどころは神にあり

民よいかなる時にも神によりたのめ その前になんぢらの心をそそぎいだせ 神はわれらの避所なりセラ

實にひくき人はむなしくたかき人はいつはりなり すべてかれらを權衡におかば上にあがりて虚しきものよりも軽きなり

暴虐をもて恃とするなかれ 掠奪ふをもてほこるなかれ 富のましくははる時はこれに心をかくるなかれ

ちからは神にあり神ひとたび之をのたまへり われ二次これをきけり

ああ主よあはれみも亦なんぢにあり なんぢは人おのおのの作にしたがひて報をなしたまへばなり

第63篇

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ユダの野にありしときに詠るダビデのうた

ああ神よなんぢはわが神なり われ切になんぢをたづねもとむ 水なき燥きおとろへたる地にあるごとくわが霊魂はかわきて汝をのぞみ わが肉體はなんぢを戀したふ

曩にも我かくのごとく大權と榮光とをみんことをねがひ聖所にありて目をなんぢより離れしめざりき

なんぢの仁慈はいのちにも勝れるゆゑにわが口唇はなんぢを讃まつらん

斯われはわが生るあひだ汝をいはひ名によりてわが手をあげん

われ床にありて汝をおもひいで夜の更るままになんぢを深くおもはん時 わがたましひは髓と脂とにて饗さるるごとく飽ことをえ わが口はよろこびの口唇をもてなんぢを讃たたへん

そはなんぢわが助となりたまひたれば 我なんぢの翼のかげに入てよろこびたのしまん

わがたましひはなんぢを慕追ふ みぎの手はわれを支ふるなり

然どわがたましひを滅さんとて尋ねもとむるものは地のふかきところにゆき

又つるぎの刃にわたされ野犬の獲るところとなるべし

しかれども王は神をよろこばん 神によりて誓をたつるものはみな誇ることをえん 虚偽をいふものの口はふさがるべければなり

第64篇

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伶長にうたはしめたるダビデのうた

神よわがなげくときわが聲をききたまへ わが生命をまもりて仇のおそれより脱かれしめたまへ

ねがはくは汝われをかくして惡をなすものの陰かなる謀略よりまぬかれしめ不義をおこなふものの喧嘩よりまぬかれしめ給へ

かれらは劍のごとくおのが舌をとぎ その弓をはり矢をつがへるごとく苦言をはなち

隠れたるところにて全者を射んとす俄かにこれを射ておそるることなし

また彼此にあしき企圖をはげまし共にはかりてひそかに羂をまうく 斯ていふ誰かわれらを見んと

かれらはさまざまの不義をたづねいだして云われらは懇ろにたづね終れりと おのおのの衷のおもひと心とはふかし

然はあれど神は矢にてかれらを射たまふべし かれらは俄かに傷をうけん

斯てかれらの舌は其身にさからふがゆゑに遂にかれらは蹟かん これを見るものみな逃れさるべし

もろもろの人はおそれん而して神のみわざをのべつたへ その作たまへることを考ふべし

義者はヱホバをよろこびて之によりたのまん すべて心のなほきものは皆ほこることを得ん

第65篇

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伶長にうたはしめたる歌ダビデの讃美なり

ああ神よさんびはシオンにて汝をまつ 人はみまへにて誓をはたさん

祈をききたまふものよ諸人こぞりて汝にきたらん

不義のことば我にかてり なんぢ我儕のもろもろの愆をきよめたまはん

汝にえらばれ汝にちかづけられて大庭にすまふ者はさいはひなり われらはなんぢの家なんぢの宮のきよき處のめぐみにて飽ことをえん

われらが救のかみよ 地と海とのもろもろの極なるきはめて遠ものの恃とするなんぢは公義によりて畏るべきことをもて我儕にこたへたまはん

かみは大能をおび その權力によりてもろもろの山をかたくたたしめ

海のひびき狂瀾のひびき もろもろの民のかしがましきを鎮めたまへり

されば極遠にすめる人々もなんぢのくさぐさの豫兆をみておそる なんぢ朝夕のいづる處をよろこび謳はしめたまふ

なんぢ地にのぞみて漑そぎおほいに之をゆたかにしたまへり 神のかはに水みちたり なんぢ如此そなへをなして穀物をかれらにあたへたまへり

なんぢ畎をおほいにうるほし畝をたひらにし白雨にてこれをやはらかにし その萌芽るを祝し

また恩惠をもて年の冕弁としたまへり なんぢの途には膏したたれり

その恩滴は野の牧場をうるほし小山はみな歓びにかこまる

牧場はみな羊のむれを衣もろもろの谷は穀物におほはれたり かれらは皆よろこびてよばはりまた謳ふ

第66篇

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伶長にうたはしめたる讃美なり 歌なり

全地よ神にむかひて歓びよばはれ

その名の榮光をうたへその頌美をさかえしめよ

かみに告まつれ 汝のもろもろの功用はおそるべきかな大なる力によりてなんぢの仇はなんぢに畏れしたがひ

全地はなんぢを拝みてうたひ名をほめうたはんとセラ

來りて神のみわざをみよ 人の子輩にむかひて作たまふことはおそるべきかな

神はうみをかへて乾ける地となしたまへり ひとびと歩行にて河をわたりき その處にてわれらは神をよろこべり

神はその大能をもてとこしへに統治め その目は諸國をみたまふ そむく者みづからを崇むべからずセラ

もろもろの民よ われらの神をほめまつれ神をほめたたふる聲をきこえしめよ

神はわれらの霊魂をながらへしめ われらの足のうごかさるることをゆるしたまはず

神よなんぢはわれらを試みて白銀をねるごとくにわれらを錬たまひたればなり

汝われらを網にひきいれ われらの腰におもき荷をおき

人々をわれらの首のうへに騎こえしめたまひき われらは火のなか水のなかをすぎゆけり されど汝その中よりわれらをひきいたし豊盛なる處にいたらしめたまへり

われ燔祭をもてなんぢの家にゆかん 迫りくるしみたるときにわが口唇のいひいでわが口ののべし誓をなんぢに償はん

われ肥たるものを燔祭とし牡羊を馨香として汝にささげ牡牛と牡山羊とをそなへまつらんセラ

神をおそるる人よ みな來りてきけ われ神のわがたましひのために作たまへることをのべん

われわが口をもて神によばはり また舌をもてあがむ

然るにわが心にしれる不義あらば主はわれにききたまふまじ

されどまことに神はききたまへり聖意をわがいのりの聲にとめたまへり

神はほむべきかな わが祈をしりぞけず その憐憫をわれよりとりのぞきたまはざりき

第67篇

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琴にあはせて伶長にうたはしめたる歌なり 讃美なり

ねがはくは神われらをあはれみ われらをさきはひてその聖顔をわれらのうへに照したまはんことをセラ

此はなんぢの途のあまねく地にしられ なんぢの救のもろもろの國のうちに知れんがためなり

かみよ庶民はなんぢに感謝し もろもろの民はみな汝をほめたたへん

もろもろの國はたのしみ又よろこびうたふべし なんぢ直をもて庶民をさばき地のうへなる萬の國ををさめたまべければなりセラ

神よたみらはなんぢに感謝し もろもろの民はみな汝をほめたたへん

地は産物をいだせり 神わが神はわれらを福ひたまはん

神われらをさきはひたまふべし かくて地のもろもろの極ことごとく神をおそれん

第68篇

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伶長にうたはしめたるダビデのうたなり 讃美なり

ねがはくは神おきたまへ その仇はことごとくちり 神をにくむものは前よりにげさらんことを

烟のおひやらるるごとくかれらを驅逐たまへ 惡きものは火のまへに蝋のとくるごとく 神のみまへにてほろぶべし

されど義きものには歓喜あり かれら神の前にてよろこびをどらん實にたのしみて喜ばん

神のみまへにうたへ その名をほめたたへよ 乗て野をすぐる者のために大道をきづけ かれの名をヤハとよぶ その前によろこびをどれ

きよき住居にまします神はみなしごの父やもめの審士なり

神はよるべなきものを家族の中にをらしめ囚人をとき福祉にみちびきたまふ されど悖逆者はうるほひなき地にすめり

神よなんぢは民にさきだちいでて野をすすみゆきたまひきセラ

そのとき地ふるひ天かみのみまへに漏る シナイの山すら神イスラエルの神の前にふるひうごけり

神よなんぢの嗣業の地のつかれおとろへたるとき豊かなる雨をふらせて之をかたくしたまへり

曩になんぢの公會はその中にとどまれり 神よなんぢは惠をもて貧きもののために預備をなしたまひき

主みことばを賜ふ その佳音をのぶる婦女はおほくして群をなせり

もろもろの軍旅の王たちはにげさる 逃去りたれば家なる婦女はその掠物をわかつ

なんぢら羊の牢のうちにふすときは鴿のつばさの白銀におほはれその毛の黄金におほはるるがごとし

全能者かしこにて列王をちらし給へるときはサルモンの山に雪ふりたるがごとくなりき

バシャンのやまは神の山なりバシャンのやまは峰かさなれる山なり

峰かさなれるもろもろの山よ なんぢら何なれば神の住所にえらびたまへる山をねたみ見るや 然れヱホバは永遠にこの山にすみたまはん

神の戰車はよろづに萬をかさね千にちぢをくはふ 主その中にいませり 聖所にいますがごとくシナイの山にいまししがごとし

なんぢ高處にのぼり虜者をとりこにしてひきゐ禮物を人のなかよりも叛逆者のなかよりも受たまへり ヤハの神ここに住たまはんが爲なり

日々にわれらの荷をおひたまふ主われらのすくひの神はほむべきかなセラ

神はしばしばわれらを助けたまへる神なり 死よりのがれうるは主ヱホバに由る

神はその仇のかうべを撃やぶりたまはん 愆のなかにとどまるものの髪おほき顱頂をうちやぶりたまはん

主いへらく我バシャンよりかれらを携へかへり海のふかき所よりたづさへ歸らん

斯てなんぢの足をそのあたの血にひたし之をなんぢの犬の舌になめしめん

神よすべての人はなんぢの進行きたまふをみたり わが神わが王の聖所にすすみゆきたまふを見たり

鼗うつ童女のなかにありて謳ふものは前にゆき琴ひくものは後にしたがへり

なんぢらすべての會にて神をほめよイスラエルのみなもとより出るなんぢらよ 主をほめまつれ

彼處にかれらを統るとしわかきベニヤミンあり ユダの諸侯とその群衆とありまたゼブルンのきみたちナフタリの諸侯あり

なんぢの神はなんぢの力をたてたまへり 神よなんぢ我儕のためになしたまひし事をかたくしたまヘ

ヱルサレムなるなんぢの宮のために列王なんぢに禮物をささげん

ねがはくは葦間の獣むらがれる牯犢のごときもろもろの民をいましめてかれらに白銀をたづさへきたり みづから服ふことを爲しめたまへ 神はたたかひを好むもろもろの民をちらしたまへり

諸侯はエジプトよりきたり エテオピアはあわただしく神にむかひて手をのべん

地のもろもろのくによ神のまへにうたへ主をほめうたヘセラ

上古よりの天の天にのりたま者にむかひてうたへ みよ主はみこゑを發したまふ勢力ある聲をいだしたまふ

なんぢらちからを神に歸せよその稜威はイスラエルの上にとどまり その大能は雲のなかにあり

神のおそるべき状はきよき所よりあらはる イスラエルの神はその民にちからと勢力とをあたへたまふ 神はほむべきかな

第69篇

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百合花にあはせて伶長にうたはしめたるダビデのうた

神よねがはくは我をすくひたまへ 大水ながれきたりて我がたましひにまでおよべり

われ立止なきふかき泥の中にしづめり われ深水におちいるおほみづわが上をあふれすぐ

われ歎息によりてつかれたり わが喉はかわき わが目はわが神をまちわびておとろへぬ

故なくしてわれをにくむ者わがかしらの髪よりもおほく謂なくしてわが仇となり我をほろぼさんとするものの勢力つよし われ掠めざりしものをも償はせらる

神よなんぢはわが愚なるをしりたまふ わがもろもろの罪はなんぢにかくれざるなり

萬軍のヱホバ主よ ねがはくは汝をまちのぞむ者をわが故によりて辱かしめらるる