詩人


闇黑の中に

一點の光を見つけると、

その中から

何か詩趣を見出さなければ

おかない俺だ。


俺は

一介の儚い詩人なのだ。


俺は只、

太陽と地球の間に

生滅する事實を

紙の上に書き連󠄁ねている

馬鹿な男なのだ。

馬鹿な奴は澤山ある。

西行、良寬、芭蕉、皆然りだ。

ミレーも然り、コローもさうだ。

彼等は皆

藝術󠄁に夢中となつて、

西行、芭蕉は寂しい路を辿り、

良寬は世の人の嘲罵の的󠄁となり、

ミレー、コローは

自分の身を惡い境遇󠄁に置いた。


併し!

彼等には藝術󠄁と云ふものがあった。

忘れられない藝術󠄁があつたのだ。

それで彼等は自分の身を

尠しも顧󠄁みなかつたのだ。

藝術󠄁は

それ程󠄁價値のあるものだらうか。


藝術󠄁が好いものか、惡いものか、

そんな事は知らない。

いや、俺は考へない。

只、俺は、

天地の間から詩趣を見出せば好い。

そんなに俺は馬鹿げた男なのだ。

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