表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律


 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律をここに公布する。

御名御璽

    令和元年五月二十四日

内閣総理大臣 安倍 晋三  

法律第十五号

   表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 表題部所有者不明土地の表題部所有者の登記

  第一節 登記官による所有者等の探索(第三条-第八条)

  第二節 所有者等探索委員による調査(第九条-第十三条)

  第三節 所有者等の特定及び表題部所有者の登記(第十四条-第十六条)

  第四節 雑則(第十七条・第十八条)

 第三章 所有者等特定不能土地の管理(第十九条-第二十九条)

 第四章 特定社団等帰属土地の管理(第三十条)

 第五章 雑則(第三十一条-第三十三条)

 第六章 罰則(第三十四条・第三十五条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化を図るため、登記官による表題部所有者不明土地の所有者等の探索及び当該探索の結果に基づく表題部所有者の登記並びに所有者等特定不能土地及び特定社団等帰属土地の管理に関する措置を講ずることにより、表題部所有者不明土地に係る権利関係の明確化及びその適正な利用を促進し、もって国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「表題部所有者不明土地」とは、所有権(その共有持分を含む。次項において同じ。)の登記がない一筆の土地のうち、表題部に所有者の氏名又は名称及び住所の全部又は一部が登記されていないもの(国、地方公共団体その他法務省令で定める者が所有していることが登記記録上明らかであるものを除く。)をいう。

2 この法律において「所有者等」とは、所有権が帰属し、又は帰属していた自然人又は法人(法人でない社団又は財団(以下「法人でない社団等」という。)を含む。)をいう。

3 この法律において「所有者等特定不能土地」とは、第十五条第一項第四号イに定める登記がある表題部所有者不明土地(表題部所有者不明土地の共有持分について当該登記がされている場合にあっては、その共有持分)をいう。

4 この法律において「特定社団等帰属土地」とは、第十五条第一項第四号ロに定める登記がある表題部所有者不明土地(表題部所有者不明土地の共有持分について当該登記がされている場合にあっては、その共有持分)であって、現に法人でない社団等に属するものをいう。

5 この法律において「登記記録」、「表題部」又は「表題部所有者」とは、それぞれ不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第二条第五号、第七号又は第十号に規定する登記記録、表題部又は表題部所有者をいう。

   第二章 表題部所有者不明土地の表題部所有者の登記

    第一節 登記官による所有者等の探索

 (所有者等の探索の開始)

第三条 登記官は、表題部所有者不明土地(第十五条第一項第四号に定める登記があるものを除く。以下この章において同じ。)について、当該表題部所有者不明土地の利用の現況、当該表題部所有者不明土地の周辺の地域の自然的社会的諸条件及び当該地域における他の表題部所有者不明土地の分布状況その他の事情を考慮して、表題部所有者不明土地の登記の適正化を図る必要があると認めるときは、職権で、その所有者等の探索を行うものとする。

2 登記官は、前項の探索を行おうとするときは、あらかじめ、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

 (意見又は資料の提出)

第四条 前条第二項の規定による公告があったときは、利害関係人は、登記官に対し、表題部所有者不明土地の所有者等について、意見又は資料を提出することができる。この場合において、登記官が意見又は資料を提出すべき相当の期間を定め、かつ、法務省令で定めるところによりその旨を公告したときは、その期間内にこれを提出しなければならない。

 (登記官による調査)

第五条 登記官は、第三条第一項の探索のため、表題部所有者不明土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をすること、表題部所有者不明土地の所有者、占有者その他の関係者からその知っている事実を聴取し又は資料の提出を求めることその他表題部所有者不明土地の所有者等の探索のために必要な調査をすることができる。

 (立入調査)

第六条 法務局又は地方法務局の長は、登記官が前条の規定により表題部所有者不明土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をする場合において、必要があると認めるときは、その必要の限度において、登記官に、他人の土地に立ち入らせることができる。

2 法務局又は地方法務局の長は、前項の規定により登記官を他人の土地に立ち入らせようとするときは、あらかじめ、その旨並びにその日時及び場所を当該土地の占有者に通知しなければならない。

3 第一項の規定により宅地又は垣、柵等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとする登記官は、その立入りの際、あらかじめ、その旨を当該土地の占有者に告げなければならない。

4 日出前及び日没後においては、土地の占有者の承諾があった場合を除き、前項に規定する土地に立ち入ってはならない。

5 土地の占有者は、正当な理由がない限り、第一項の規定による立入りを拒み、又は妨げてはならない。

6 第一項の規定による立入りをする場合には、登記官は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

7 国は、第一項の規定による立入りによって損失を受けた者があるときは、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。

 (調査の嘱託)

第七条 登記官は、表題部所有者不明土地の関係者が遠隔の地に居住しているとき、その他相当と認めるときは、他の登記所の登記官に第五条の調査を嘱託することができる。

 (情報の提供の求め)

第八条 登記官は、第三条第一項の探索のために必要な限度で、関係地方公共団体の長その他の者に対し、表題部所有者不明土地の所有者等に関する情報の提供を求めることができる。

    第二節 所有者等探索委員による調査

 (所有者等探索委員)

第九条 法務局及び地方法務局に、第三条第一項の探索のために必要な調査をさせ、登記官に意見を提出させるため、所有者等探索委員若干人を置く。

2 所有者等探索委員は、前項の職務を行うのに必要な知識及び経験を有する者のうちから、法務局又は地方法務局の長が任命する。

3 所有者等探索委員の任期は、二年とする。

4 所有者等探索委員は、再任されることができる。

5 所有者等探索委員は、非常勤とする。

 (所有者等探索委員の解任)

第十条 法務局又は地方法務局の長は、所有者等探索委員が次の各号のいずれかに該当するときは、その所有者等探索委員を解任することができる。

 一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。

 二 職務上の義務違反その他所有者等探索委員たるに適しない非行があると認められるとき。

 (所有者等探索委員による調査等)

第十一条 登記官は、第三条第一項の探索を行う場合において、必要があると認めるときは、所有者等探索委員に必要な調査をさせることができる。

2 前項の規定により調査を行うべき所有者等探索委員は、法務局又は地方法務局の長が指定する。

3 法務局又は地方法務局の長は、その職員に、第一項の調査を補助させることができる。

 (所有者等探索委員による調査への準用)

第十二条 第五条及び第六条の規定は、所有者等探索委員による前条第一項の調査について準用する。この場合において、第六条第一項中「登記官に」とあるのは「所有者等探索委員又は第十一条第三項の職員(以下この条において「所有者等探索委員等」という。)に」と、同条第二項、第三項及び第六項中「登記官」とあるのは「所有者等探索委員等」と読み替えるものとする。

 (所有者等探索委員の意見の提出)

第十三条 所有者等探索委員は、第十一条第一項の調査を終了したときは、遅滞なく、登記官に対し、その意見を提出しなければならない。

    第三節 所有者等の特定及び表題部所有者の登記

 (所有者等の特定)

第十四条 登記官は、前二節の規定による探索(次節において「所有者等の探索」という。)により得られた情報の内容その他の事情を総合的に考慮して、当該探索に係る表題部所有者不明土地が第一号から第三号までのいずれに該当するかの判断(第一号又は第三号にあっては、表題部所有者として登記すべき者(表題部所有者不明土地の所有者等のうち、表題部所有者として登記することが適当である者をいう。以下同じ。)の氏名又は名称及び住所の特定を含む。)をするとともに、第四号に掲げる場合には、その事由が同号イ又はロのいずれに該当するかの判断をするものとする。この場合において、当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属し、かつ、その共有持分の特定をすることができるときは、当該共有持分についても特定をするものとする。

 一 当該表題部所有者不明土地の表題部所有者として登記すべき者があるとき(当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属する場合にあっては、全ての共有持分について表題部所有者として登記すべき者があるとき。)。

 二 当該表題部所有者不明土地の表題部所有者として登記すべき者がないとき(当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属する場合にあっては、全ての共有持分について表題部所有者として登記すべき者がないとき。)。

 三 当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属する場合において、表題部所有者として登記すべき者がない共有持分があるとき(前号に掲げる場合を除く。)。

 四 前二号のいずれかに該当する場合において、その事由が次のいずれかに該当するとき。

  イ 当該表題部所有者不明土地(当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属する場合にあっては、その共有持分。ロにおいて同じ。)の所有者等を特定することができなかったこと。

  ロ 当該表題部所有者不明土地の所有者等を特定することができた場合であって、当該表題部所有者不明土地が法人でない社団等に属するとき又は法人でない社団等に属していたとき(当該法人でない社団等以外の所有者等に属するときを除く。)において、表題部所有者として登記すべき者を特定することができないこと。

2 登記官は、前項の判断(同項の特定を含む。以下この章において「所有者等の特定」という。)をしたときは、その理由その他法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録をいう。)を作成しなければならない。

 (表題部所有者の登記)

第十五条 登記官は、所有者等の特定をしたときは、当該所有者等の特定に係る表題部所有者不明土地につき、職権で、遅滞なく、表題部所有者の登記を抹消しなければならない。この場合において、登記官は、不動産登記法第二十七条第三号の規定にかかわらず、当該表題部所有者不明土地の表題部に、次の各号に掲げる所有者等の特定の区分に応じ、当該各号に定める事項を登記するものとする。

 一 前条第一項第一号に掲げる場合 当該表題部所有者不明土地の表題部所有者として登記すべき者の氏名又は名称及び住所(同項後段の特定をした場合にあっては、その共有持分を含む。)

 二 前条第一項第二号に掲げる場合 その旨(同項後段の特定をした場合にあっては、その共有持分を含む。)

 三 前条第一項第三号に掲げる場合 当該表題部所有者不明土地の表題部所有者として登記すべき者がある共有持分についてはその者の氏名又は名称及び住所(同項後段の特定をした場合にあっては、その共有持分を含む。)、表題部所有者として登記すべき者がない共有持分についてはその旨(同項後段の特定をした場合にあっては、その共有持分を含む。)

 四 前条第一項第四号に掲げる場合 次のイ又はロに掲げる同号の事由の区分に応じ、当該イ又はロに定める事項

  イ 前条第一項第四号イに掲げる場合 その旨

  ロ 前条第一項第四号ロに掲げる場合 その旨

2 登記官は、前項の規定による登記をしようとするときは、あらかじめ、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

 (登記後の公告)

第十六条 登記官は、前条第一項の規定による登記をしたときは、遅滞なく、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

    第四節 雑則

 (所有者等の探索の中止)

第十七条 登記官は、表題部所有者不明土地に関する権利関係について訴訟が係属しているとき、その他相当でないと認めるときは、前三節の規定にかかわらず、表題部所有者不明土地に係る所有者等の探索、所有者等の特定及び登記に係る手続を中止することができる。この場合においては、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

 (法務省令への委任)

第十八条 この章に定めるもののほか、表題部所有者不明土地に係る所有者等の探索、所有者等の特定及び登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。

   第三章 所有者等特定不能土地の管理

 (特定不能土地等管理命令)

第十九条 裁判所は、所有者等特定不能土地について、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、その申立てに係る所有者等特定不能土地を対象として、特定不能土地等管理者(次条第一項に規定する特定不能土地等管理者をいう。第五項において同じ。)による管理を命ずる処分(以下「特定不能土地等管理命令」という。)をすることができる。

2 前項の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。

3 裁判所は、特定不能土地等管理命令を変更し、又は取り消すことができる。

4 特定不能土地等管理命令及び前項の規定による決定に対しては、利害関係人に限り、即時抗告をすることができる。

5 特定不能土地等管理命令は、特定不能土地等管理命令が発令された後に当該特定不能土地等管理命令が取り消された場合において、所有者等特定不能土地の管理、処分その他の事由により特定不能土地等管理者が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。

 (特定不能土地等管理者の選任等)

第二十条 裁判所は、特定不能土地等管理命令をする場合には、当該特定不能土地等管理命令において、特定不能土地等管理者を選任しなければならない。

2 前項の規定による特定不能土地等管理者の選任の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

3 特定不能土地等管理命令があった場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地について、特定不能土地等管理命令の登記を嘱託しなければならない。

4 特定不能土地等管理命令を取り消す裁判があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、特定不能土地等管理命令の登記の抹消を嘱託しなければならない。

 (特定不能土地等管理者の権限)

第二十一条 前条第一項の規定により特定不能土地等管理者が選任された場合には、特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地及びその管理、処分その他の事由により特定不能土地等管理者が得た財産(以下「所有者等特定不能土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、特定不能土地等管理者に専属する。

2 特定不能土地等管理者が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。

 一 保存行為

 二 所有者等特定不能土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

3 前項の規定に違反して行った特定不能土地等管理者の行為は、無効とする。ただし、特定不能土地等管理者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

4 特定不能土地等管理者は、第二項の許可の申立てをする場合には、その許可を求める理由を疎明しなければならない。

5 第二項の許可の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。

6 第二項の規定による許可の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

 (所有者等特定不能土地等の管理)

第二十二条 特定不能土地等管理者は、就職の後直ちに特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等の管理に着手しなければならない。

 (特定不能土地等管理命令が発せられた場合の所有者等特定不能土地等に関する訴えの取扱い)

第二十三条 特定不能土地等管理命令が発せられた場合には、所有者等特定不能土地等に関する訴えについては、特定不能土地等管理者を原告又は被告とする。

2 特定不能土地等管理命令が発せられた場合には、当該特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等に関する訴訟手続で当該所有者等特定不能土地等の所有者(所有権(その共有持分を含む。)が帰属する自然人又は法人(法人でない社団等を含む。)をいう。以下この章において同じ。)を当事者とするものは、中断する。

3 前項の規定により中断した訴訟手続は、特定不能土地等管理者においてこれを受け継ぐことができる。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。

4 特定不能土地等管理命令が取り消されたときは、特定不能土地等管理者を当事者とする所有者等特定不能土地等に関する訴訟手続は、中断する。

5 所有者等特定不能土地等の所有者は、前項の規定により中断した訴訟手続を受け継がなければならない。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。

 (特定不能土地等管理者の義務)

第二十四条 特定不能土地等管理者は、特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、第二十一条第一項の権限を行使しなければならない。

2 特定不能土地等管理者は、特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等の所有者のために、誠実かつ公平に第二十一条第一項の権限を行使しなければならない。

 (特定不能土地等管理者の辞任)

第二十五条 特定不能土地等管理者は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

2 特定不能土地等管理者は、前項の許可の申立てをする場合には、その原因となる事実を疎明しなければならない。

3 第一項の許可の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。

4 第一項の規定による辞任の許可の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

 (特定不能土地等管理者の解任)

第二十六条 特定不能土地等管理者がその任務に違反して特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、特定不能土地等管理者を解任することができる。

2 裁判所は、前項の規定により特定不能土地等管理者を解任する場合には、特定不能土地等管理者の陳述を聴かなければならない。

3 第一項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。

4 第一項の規定による解任の裁判に対しては、利害関係人に限り、即時抗告をすることができる。

 (特定不能土地等管理者の報酬等)

第二十七条 特定不能土地等管理者は、特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

2 前項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判をする場合には、特定不能土地等管理者の陳述を聴かなければならない。

3 第一項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判に対しては、特定不能土地等管理者に限り、即時抗告をすることができる。

 (供託等)

第二十八条 特定不能土地等管理者は、特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その所有者のために、当該金銭を当該所有者等特定不能土地の所在地の供託所に供託することができる。

2 特定不能土地等管理者は、前項の規定による供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

 (特定不能土地等管理命令の取消し)

第二十九条 裁判所は、特定不能土地等管理者が管理すべき財産がなくなったとき(特定不能土地等管理者が管理すべき財産の全部が前条第一項の規定により供託されたときを含む。)、その他特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等の管理を継続することが相当でなくなったときは、特定不能土地等管理者若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、特定不能土地等管理命令を取り消さなければならない。

2 特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等の所有者が当該所有者等特定不能土地等の所有権(その共有持分を含む。)が自己に帰属することを証明したときは、裁判所は、当該所有者の申立てにより、特定不能土地等管理命令を取り消さなければならない。

3 前項の規定により当該特定不能土地等管理命令が取り消されたときは、特定不能土地等管理者は、当該所有者に対し、その事務の経過及び結果を報告し、当該所有者等特定不能土地等を引き渡さなければならない。

4 第一項又は第二項の規定による決定に対しては、利害関係人に限り、即時抗告をすることができる。

   第四章 特定社団等帰属土地の管理

第三十条 裁判所は、特定社団等帰属土地について、当該特定社団等帰属土地が帰属する法人でない社団等の代表者又は管理人が選任されておらず、かつ、当該法人でない社団等の全ての構成員を特定することができず、又はその所在が明らかでない場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、その申立てに係る特定社団等帰属土地を対象として、特定社団等帰属土地等管理者による管理を命ずる処分(次項において「特定社団等帰属土地等管理命令」という。)をすることができる。

2 前章(第十九条第一項を除く。)の規定は、特定社団等帰属土地等管理命令について準用する。この場合において、同条第二項中「前項」とあるのは「第三十条第一項」と、第二十一条第一項及び第二項第二号、第二十二条、第二十三条(第三項を除く。)、第二十四条、第二十六条第一項、第二十七条第一項、第二十八条第一項並びに前条第一項及び第三項中「所有者等特定不能土地等」とあるのは「特定社団等帰属土地等」と、第二十三条第二項中「自然人又は法人(法人でない社団等を含む。)」とあるのは「法人でない社団等」と、前条第二項中「所有者等特定不能土地等の所有者」とあるのは「特定社団等帰属土地等の所有者」と、「所有者等特定不能土地等の所有権(その共有持分を含む。)が自己に帰属すること」とあるのは「特定社団等帰属土地等が帰属する法人でない社団等の代表者又は管理人が選任されたこと」と読み替えるものとする。

   第五章 雑則

 (非訟事件の管轄)

第三十一条 この法律の規定による非訟事件は、表題部所有者不明土地の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

 (非訟事件の手続の特例)

第三十二条 この法律の規定による非訟事件については、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第四十条及び第五十七条第二項第二号の規定は、適用しない。

 (最高裁判所規則)

第三十三条 この法律に定めるもののほか、この法律の規定による非訟事件の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

   第六章 罰則

第三十四条 第六条第五項(第十二条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、第六条第一項(第十二条において準用する場合を含む。)の規定による立入りを拒み、又は妨げた者は、三十万円以下の罰金に処する。

第三十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同条の刑を科する。

   附 則

 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第三章から第五章までの規定は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

法務大臣 山下 貴司  
内閣総理大臣 安倍 晋三  

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