白文 書き下し文 訳文
少年重然諾 少年[2] 然諾ぜんだくを重んじ この若者、一旦承諾した事に二言なく
結交遊俠人 まじわり遊侠ゆうきょうの人に結ぶ 義を重んずる遊侠の人々と交友を結ぶ
腰間玉轆轤 腰間ようかんには玉轆轤ぎょくろくろ 腰には紐に通したぎょくの宝飾品
錦袍雙麒麟 錦袍きんぽうには双麒麟そうきりん 綾錦あやにしきの綿入れには一対の麒麟の刺繍
朝辭明光宮 あしたに辞す 明光宮[3] 午前中には朝会を終えて明光宮から退出し
馳馬長樂坂 馬をす 長楽の坂[4] 長楽宮の横の坂道に馬を早めて帰る
沽得渭城酒 渭城いじょうさけ[5]い得て 渭城の酒を買い入れて
花間日將晚 花間にて 日 まされんとす 花盛りの中、宴もたけなわに日も暮れて行くだろう
金鞭宿倡家 金鞭きんべんもて倡家しょうかに宿り 高価で美しい鞭を手に芸者屋で寝泊まりし
行樂爭留連 行楽 争って留連す 遊びに出かけたら、長逗留は当たり前
誰憐楊[6]子雲 誰か憐れまん 楊子雲[7] 誰が羨むもんか 揚雄が
閉門草太玄 門を閉ざして太玄[8]を草するを 家に引き籠もって『太玄経』を物していたなんてこと


注釈 編集

  1. この宮廷、つまり詩中の二つの宮殿は、w:花街の隠喩であるとの説もあり、そうであればこの詩は極めて風流な芸者遊びにうつつを抜かす究極の極道者を詠じている事になる。
  2. 若者。「少」は若い。「少年」で「年が若い」の意だが、現代日本語の「少年」よりも高年齢を想定する語。「青年」に近い。
  3. 漢の武帝がw:太初4年(w:紀元前101年)に建てた宮殿。
  4. 漢代の宮殿「長楽宮」の脇の坂道。長楽宮は漢の高祖が未央宮と共に建てた。「長楽未央」と続けると、“楽しみは果てしがない”という意味になる。
  5. 唐の詩人w:王維の「送元二使安西(元二の安西に使いするを送る )」にちなんで、漢詩で酒を買って飲むと言えば、「渭城の酒」とされるようになった。w:渭水も参照。
  6. “揚”とも書く。
  7. 前漢末の文人・学者であるw:揚雄のこと。子雲はw:字
  8. 揚雄が著わした『w:太玄経』のこと。
 

この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。

 
 

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