華府条約廃止通告に関する声明


声明書

華府条約第二十三条は各締約国に本条約廃止の通告を為すの権能を認め、且つ一国の廃止通告後二年間は尚其効力を存続することを明かにし、更に一国の廃止通告の日より一年内に締約国全部の会議を開催すべき旨を規定す、是れ各締約国の本条約存廃に対する見解を相互に尊重し、而かも即時廃止に因る急激なる変動を回避し、併せて其の間会議を再開して新事態に対応すべきことを予想したるものなり。

是を以て帝国政府が一意此条文に遵拠して本条約廃止の通告を発せんとするに当りては他に何物も顧慮するの必要あることなし

然るに若し条約に許されたる最前の時期に於て、予め廃止の通告を発せずして次の会議に臨まん乎、帝国政府は会議停頓又は不成立の場合に於ては、従来の華府条約を其儘延長するの低意を有すとの推定を受るに至るや必せり。而して通告の遷延日を重ぬるに従い、此推定は益々其度を強め、遂に帝国全権をして自縄自縛の窮地に陥るるに至るべし。 斯の如きは常に国際正義の擁護伸張を念とする吾人の頗る遺憾とする所なり。

昭和九年七月二十日

帝国弁護士会

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