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茶音頭 作者:横井也有
世の中に勝れて花は吉野山、紅葉は立田、茶は宇治の、都の辰巳(たつみ)それよりも。里は都の未申(ひつじさる)。数寄(すき)とは誰が名に立てし、濃茶(こいちゃ)が色の深緑(ふかみどり)、松の位にくらべては。かこひと言ふも低けれど、情(なさけ)は同じ床飾(とこかざ)り、飾らぬ胸の裏表、帛紗(ふくさ)さばけぬ心から、聞けば思惑(おもわく)違い棚、逢ふて如何(どう)してかう筥(ばこ)の、柄杓(ひしゃく)の竹は直ぐなれど、そちは茶杓の曲(ゆが)み文字。憂さを晴しの初昔(はつむかし)、昔話の爺婆(じじばば)と、なるまで釜の中冷めず、縁はくさりの末永く、千代(ちよ)万代(よろずよ)もえ。
この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。