緩衝国建設覚書
覚書
編集日本浦潮派遣軍司令官の命を受けたる第五師団長及極東共和国政府は各々代表者をゴンゴタ駅に派遣し停戦議定を提出せり而して此機会に於て両委員は尚其権能の範囲に於て双方の為め必要なる軍事関連諸問題に関し意見の交換を行い審議の結果別紙覚書条項を交換す
日本軍代表者陸軍少将
高柳保太郎
極東共和国代表者
ウエ、エス、シャートフ
千九百二十年七月十七日ゴンゴタ駅に於て
覚書条項
編集日露両委員は極東露領に於ける迅速なる平和の確立を期し之が達成と安寧及秩序恢復の最良手段たるや諸外国よりの武力干渉外に立ち統一政府を戴く緩衝国の建設に在る事を信ず
此緩衝国は国際的及経済的関係に於て文化及産業の発達せる国家より絶縁して存在する能わず極東露領と日本との間には最も密接なる利害関係を有するを以て緩衝国は日本より最も緊密なる友好と協力とを期待せざるを得ず前記根本意思に基き両委員は次の確信に於て一致す
即ち緩衝国は其政策として共産主義を採用せず国民的にして広き民主的性質を有せざる可らず之が為め極東露領住民の意思を正確に且独立して表明する代表者の会議を召集するを現下の必要とする事是なり両委員は其受けたる任務及企図に関し以上の如き諒解の下に相互に次の声明を為す
第一日本委員は日本軍憲の各地方政権に対する交渉関係は極東露領住民の意志を正確且独立して表明する代表者の会議完了時に於て初めて断絶せらるべきものなることを声明す而して此会議は統一政府確立の目的を有せざるべからず
第二日本委員は前記会議開催の方法及其事業進捗に関し日本軍憲の之に干渉せざることを声明す然れ共此会議に参集すべき代表者にして妨害を受くる者有る時は其政権の如何に拘らず之に対し為し得る限りの保護を与うる事を約す
第三日本委員は日本軍の極東露領駐在問題に関し七月三日附日本政府の宣言を準拠とす
後貝加爾地方の撤退に関し日本軍憲はチェックスロワック軍の撤退完結せし現時に於て日本帝国政府の宣言に基き今回此の軍隊の同地方撤退を決定せり而して極東共和国との交渉円満に進捗するに於ては日本軍の撤兵は速に実行せらるべきを予期す
第四露国委員は極東共和国の領域内に欧露労農政府に属する軍隊を侵入駐屯通過せしめざるを声明す
第五露国委員は極東共和国政府(?)主義に依り該共和国の政権の及ぶ範囲に於て日本臣民の個人不可侵を保証し其権利を尊重すべきを声明す
第六露委員は次の事を声明す
即ち日本軍憲及極東共和国政府は迅速なる極東露領の安定を期待し凡同地方に発生すべき武力的抗争を平和的に解決する為め有ゆる手段を尽し已むを得ざるに至り初めて断然たる処置に出ずるものとす
第七露委員は今後発生すべき諸問題の円満なる解決に資する為め相互に軍事委員を派遣する事に同意す但し予め相互の協商を経るを要す
この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。
- 法律命令及官公󠄁文󠄁書
- 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
- 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁
この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。