綜合国策基本要綱 (抄)

         綜合国策基本要綱

帝国は今正に有史以来の大試練に際会し,国運興亡の岐路に直面しあるも、真に忍苦十年の挙国的決意を以て、

克く時艱を超克せば則ち玆に日満支の強カなる結合を基調とする新東亜の建設を見るべく、世界飛躍の我民族理

想の機必ず到来すべきを確信す。

一、根本方針

帝国の国是は八紘を宇ママとする肇国の大精神に基き、帝国を核心とし日満支の強固なる結成を根幹とする大東亜

の新秩序を建設するにあり。これがため帝国自ら先づ新事態に即応する不動の国家体制を確立し、国家の総力

を举げて右国是の具現に邁進す。

二、国防及び外交

帝国内外の諸情勢に鑑み国家総力発揮の国防国家体制を基底とし、国是遂行に遺憾なき軍備を充実す。

帝国の外交は我国是たる大東亜の建設を根幹とし、先づ共の重心を支那事変の完遂に置き国防的大変局に対処

しつつ、建設的にして且つ弹力性に富む施策を成し以て帝国国運の進展を期す。之が為欧洲戦不介入方針に関

し再検討を加ふると共に我国是遂行に同調する国家とは提携す。

三、国内態勢の刷新

我国内政の急務は国体の本義に基き諸政を一新し国防国家体制の基礎を確立するにあり。これが為左記諸条件

の実現を期す。

一、強力なる政治休制を確立し国民組織を整備し以て国政の綜合的統一を図る。

イ、政務の統一と敏活とを目標とする行政機構の確立

ロ、真に大政翼賛の実を举げ得べき議会制度の確立

ハ、官民協力を基調とする新国民組織の確立

ニ、帝国を中心とする日満支三国経済の自主的建設を基調とし,我国経済の公益優先概念を昂揚し国防経済の

根基を確立す。

イ、日満支を一環とし大東亜を包容する帝国の自給自足経済政策の確立

ロ、官民協力による計画経済の遂行特に主要物資の生産配給,消費に亘る一元的統制機構の整備

ハ、綜合経済カの発展を目標とする財政計画の確立並に金融統制の強化

ニ、重要産業特に重化学工業及機械工業の劃期的発展

ホ、科学の劃期的振興並に生産の合理化

三、国体観念に透徹する教学の刷新と相俟ち自由功利の思想を排し全体奉仕の概念を第ー義とする新国民道德

を確立す。

四、国是遂行の原動力たる国民の資質、体力の向上並に其の数的発展に関する恒久的の方策を樹立し不断の努

力を傾注す。

五、国民生活の刷新特に其の不均衡の是正を断行すると共に、厚生的諸施策の徹底を期し真に忍苦十年の時艱

克服に適応する質実剛健なる国民生活の水準を設定し之を確保す。之が為国民生活必需物資特に食料主品の

日満支綜合の自給策を確立す。

        一、外交及び国防

第一、基 本 国 策

一、皇道を八紘に布き民族繁栄、大協和以て人類福祉の増進、世界新文化の生成発展を期するは輩国の理想にし

 て我民族に課せられたる使命とす。

二、我国の最高国策は帝国を核心とし日満支の強固なる結合を根幹として大東亜を包容する協同経済圏を建設し以

 て国力の充実発展を期するにあり。

三、我協同経済圏の範囲は、内外蒙古、満州支那、東南亜細亜諸邦、印度等とす。

第二、一 般 方 針

   我外交及国防の基調は東亜新秩序の建設に在り。仍て帝国は内外の諸情勢と我国力との綜合的判断に基く飽く

迄建設的自主的にして且弾カ性ある政策を以て右使命の逹成を期するものとす。

一、防共原則を確立し日満支三国特に日満、北支、蒙彊地域に之が施策を徹底せしむること。

二、支那に於ける白人の優越的支配権を排除すること。

三、日、満、支結合の強化特に、日、満、北支、蒙彊は大和民族の自衛生活圏として建設すること。

四、東亜諸民族の安寧利福を増進し之等民族をして欧米依存の観念より脱却せしむること。

五、帝国の基本国策遂行上必要なる陸、海軍の軍備を充実すること。

六、欧洲戦争に対しては不介入方針を持しつつ我国力発展に有利なる如く施策すること。

         二、対 支 政 策

日支関係は一面戦争一面建設の状態に発展したる事実を認識し、我対支政策は既定の支那事変処理方針に則るも

特に左の事項に付考慮するものとす。

一、長期戦形態の確立

イ、親日政権の育成発展による長期解決方式を採用すること。
ロ、在支軍官民機構を整理統合し一元的対支政策の遂行を期すこと。
ハ、我国内体制の整備強化に伴ひ非消耗的駐兵形態を採用すること。
ニ、日支経済提携は日満支経済の綜合的計画を基礎とし重要商業を開発すると共に我国力と第三国対策とに照
    応しつつ支那経済力の恢復を図ること。

二、重慶政権対策

イ、重慶政権に対する施策を講すること。
ロ、我対重慶施策の徹底的一元化を期すること。

三、事変処理に伴ふ対第三国政策

イ、東亜新秩序建設の根本に即して列国の対支経済活動を容認し特定の国家とは進んで協同工作を行うこと。
ロ、在支活動に於て自律性を確立すると共に第三国に対し帝国対支策根本精神の理解協調に努むること。

       三、対 ソ 政 策

日ソ両国は開戦廻避の方針を堅持し国交調整等に努め以て平和的状態の維持に努む。但内外諸情勢に対する適切

なる判断を基礎とし適時其の軍事的、思想的脅威妨害を一掃完封す。右方針に基き対ソ政策上考慮すべき取項次

の如し。

一、対ソ即時決戦論並日ソ不可侵条約論等の如きは抑制すること。

二、対ソ政策は対英米政策と常に睨合せ遺憾無きを期すること。

三、対ソ軍備は絶対優位性の確立を目標として可及的速かに充実すること。

        四、対 米 政 策

日米関係は我大陸政策の白人に及ぼす影響並びに我国の経済弱点により今後相当長期間に亙り紛争激発状態にあ

るべきを以て我対米政策は現状以上悪化するを防止するに努むると共に他方我国力の発展に依り対米依存経済

を是正するを要する。右方針に基き対米政策上考慮すべき事項次の如し。

 対米依存観念を更に強化せんとする所謂媚態外交又は対米経済断行等を殊更に強調英国及英勢力を極東より駆

 遂する説をとらず施策に当りては適切なる状勢判断に基き緩急宜しきを得るを要す。

 対英政策上考慮すべき事項次の如し。

一、対英政策は対米政策と微妙なる連関性を有するを以て常に両者の関係を睨合せて遺憾なきを期すること。

二、日英即時決戦論並びに極端なる日英親善論等は之を抑制すること。

       五、対 独 伊 政 策

独伊に対しては欧洲情勢の推移を連観しつつ従来の友交関係を持続するものとす。

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  2. 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
  3. 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁

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