粗忽の使者

そこつししゃ

そこつししゃふおはなしまをしあげます、そこつものつかつてよこすとふはまことをかしいようですが、むかしおだいみやうがたごほんまるごとじやうあそばすときに、とのさまがたいろごじまんおはなしさいます これまつだひらどのごきでんにかおもしろいおはなしござらぬかな さやうべつおもしろいとことござらんが、せつしやこめめしいたことぞんるが、いかゞござるな これおそれいまおした、シテこといたすとこめめしになりますな さやうづ一しょうこめみづにてぎまして、かまみづかたてれて、みづこれほどあると一しやうめしできますが 紀州公しからば二しやうときれば二しやうときはエーりやうれて、れだけみづがあれば二しやうめしできまをしからば三じやうになると 「三じやうときは二ほんれたうへあしかたツぽふれまする しからば四しやうとき「四しやうときは二ほんれたうへりやうあしれまする」などふてられます、みんとのさまがたごじまんばなしもちきる、なか赤井御門守まつだひらどのごきこうごけらいうちにかおもしろじんぶつござるまいか 「さればべつおもしろいとまをほどものござらんが、ごくごくそこつにてものわすれをいたものござるが 赤井それおもしろい、しからばそのものせつしややしきおつかひおつかはしになるまいか れはやすことさつそくつかひつかはしましよう」ととのさまどうしはなしきまつたのだが、られるひとこそつらかはだ、とのさまおしろからおかへりになると、すぐごけらいそこつものじぶたじぶゑもんまるうちあかゐごもんのかみさましゝやけました、そんなことすこしもらない、じぶたじぶゑもんおげんくわんて、モーすぐべつとうべんたうまちがひ次武「コリやアべんたうらんか、べんたうびまするとべつとうだんなべんたうではありますまゐ、べつとうではありませんか 次武いかにもベツとうであつた」とわら次武せつしやまるうちしゝやまゐる、とももの「ヘイおともぞろひはできります 次武さやうか、うまこれへふつぱつてまゐうまさいぜんからります 次武「コラかやうちいさいうまではれんではないか 馬丁だんなばかつちやアいけません、れはいぬ次武なるほどうまこゝつたか」とうまのりましたが、これあべこべつて 次武「コリヤべつとうこのうまにはかしらがないぞ 馬丁じようだんつちやアいけません、くびうしろにありますヨ 次武なるほどどくだが、そのかしらつてこちらへつけてれ、馬丁「そんなことできません 次武うまふじいうだナ 馬丁どこうまだツておなじです 次武それではせつしやしりもちあげるからうままは馬丁ばかつてはいけません」とやううまりかへてシトつてまゐりましたのが、まるうちあかゐごもんのかみさまおやしきおしゝやアーとみで、しゝやとほるとたうけぢうやくたなかだいふごねんぱいおかたはげつむりまんなかとんぼたやうなまげをつけて、れへまゐりまして これおしゝやごくらうぞんじます、せつしやことあかゐごもんのかみけらいたなかだいふまをものいごおみしおかれてごべつこんねがはしふぞんじます 次武「コレはごていねいなるごあいさつじぶんことはヱーソノんでござる、まつだひらまさめのしやうけらい、ヱーじぶたじぶヱーソノじぶたじぶざゑもんてまへしやていござる、ヱーてまへことは、ヱーじぶたじぶうゑもんまをものいごおみしおかれてごべつこんねがひまするで、なア てまへたなかだいふで、おしゝやごこうじやう次武「ハイ、てまへことまつだひらまさめのしやうけらいじぶたじぶうゑもんまをしまするものおみしおかれておこゝろやすねがひます おなまへりやううかゞひましたが、シテおしゝやごこうじやう次武「ハイ、これははやこまつたことしゆつたいゝたしてござる、ぶしにあるまじきことで、たうけおざしきはいしやくしてせつぷくいたさんければならんことしゆつたいゝたしました、ハイじつめんもくしだいござらんが、しゝやこうじやうぶちわすれたでござる、せつぷくいたすはやすことではござるが、それがしぶしのはしくれ、イザせんぢやうおいとのごばぜんにてうちじにいたすはのぞところなれど、しゝやこうじやうぶちわすれてせつぷくいたすはざんねんしごくござりまする」ハラなみだをこぼしました それちかごろおきどくせんばんにとかしておゝもしになるごくふうこざりますまいか 次武「ハイ、ごしんせつなるおこゝろぞありがたしあはせぞんずる きこうにはさいぜんよりしきりにいしきをつめりになるやうであるが、れはんのためござるな 次武「ハイ、おみだしにあづかめんぼくなきしだいであるが、まア一ととほおきください、せつしやえうせうをりがくもんとういたときに、ものわすれをいたす、スルとりやうしんてまへのこのしりをつめりれますると、いたこゝろえおもしたことござるテ、れがいまおいならはしあひなりまして、ものわすれをいたたびしりをつめりますると、いたこゝろえおもしてござる、ぶしあひみたがはなはごぶれいではござるが、てまへしりちよつとつめりくださらんか んとあふせらるゝ、きこうごえうせうをりものわすれをいたされると、ごりやうしんきでんしりつめりますとか、れはなによりもやすことごゑんりよなくいるゐまくりください、つめりまをしませう 次武それせんばんかたじけない、なにぶんよろしく、はなはしつれい」としりをまくる 「サアつめりました、いかゞござらうな 次武「おつめりくださるかぞんぜぬがいつかうつうじませんな 「なかかたおしりございますな、これではいかゞござるな 次武つめりくださるかぞんぜんが、まるはいのとまりやうござ「ムヽこれでもつうじませんかな 次武いかゞござらふ、ごたうけゆびさきちからのあるごけらいがありませうならば、おえらしをねがひたいもので、なくばこゝはいしやくしてせつぷくいたたくこのぎおゆるしをねがひまする 「イヤけつしてごたんりよなされてはなりませんぞ、たんりよこうさずとまをことござれば、たゞいまどうやくどもさうだんつかまつり、さつそくゆびさきちからのあるものこれまゐりますればすこしおひかくだされたい 次武なにぶんよろしくねがたてまつる ゐさいしようちつかまつる」とすぐつぎさがり、いろさうだんいたしてりました、おはなしかはりまして、さいぜんおしゝやまゐりまするときしゝやこなただいくしごとをしてりましたが、おしゝやのでみなにげましたが、そのうちだいくとめじんぶつげそこねて、ゐさいやうすきまして、やうにはまゐりまして、ひとりでゲタわらつてりますからともだちが、 「ヲイとめなにわらつてやアがるのだ、おもしろくもねエ ところがなみんきねヱ、おれをかしくつてたまらねヱよ んだ ほかじやアねヱが、けふやしきしゝやたらふ、そのしゝやがヨ、こつちからはたなかだいふさんで、せつしやことなんてヱものでございとやツつけるとな、そのしゝやめうつらをしてゐなかことばヨ、てまへことはヱーとつてしばらかんがえてて、やうまつだひらまさめのけらいまたヱーとうなつて、じぶたじぶざゑもんしやていで、ヱーとうなりやアがつて、またやうおもして、じぶたじぶゑもんまをものござる、とやうあいさつをするとな、たなかだんなしゝやこうじやうはとくとな、しゝやこうじやうわすれたとつて、せつぷくをするからざしきせとふのだ、 「ソイツはたいへん「マアけツてヱば、たなかさんもたいへんしんぱいをして、うかおもくふうはないかとくとな、へんてこなかほながらけつじぶんでつめツてるから、わけだとくと、しゝやふには、こどもときてならひかなんかするに、ものわすいたし、そのときおやぢやおふくろけつをつめツてれた、スルといたおもつて、おもしたことござるから、どくだが三だいふさんにけつをつめツてれとたのんだのだ、三だいふさんよろしいゑんりよなくけつをまくれと、けつをまくらして一しやうけんめいでつめると、たうにんいつかうつうじませんとるのだ、しまひにはたなかさんもひたひあをすぢして、どてをかじつてつめつたが一かうつうじませんだ 「オイとめこうどてふのはんだ 「三だいふさんはいからどてじやアないか、れだからなあんまかあいさうだからおれこれからつて、一ばんけつをつめつてやらうとおもふのだ せよ、れだからてめへことをおたばこぼんふのだ、んてふとひとよりさきたがる だまつてろ、ベラぼうこつちこれでもえどつこだ、ひとこまるのをられるかイ、一ばんつめつてたすけてるのだ、けつかたくつてつかなければ、くぎぬきでつめつてるのだ、 「オイむやみことをするな ひつてことよ」とヅカおなかくちつてまゐまして 「ヘイごめんねヱ 「コラそのはうしよくにんていだがくちちがやアせんか、こゝおなかくちだぞ 「ヘイ、ちがやアしません、ちよいとたなかだんなよんおくんなさいまし たなかさまを、オーたゞいまてうどこれおいでになつた 「ヤアたなかだんなたゞいまおほねをりでアノけつよつぽどかたいかな これしからんやつじや、さてそのはうおしゝやたちよつたナ 「イヱだんなじつみんながにげましたが、わつちばかげそくなつてな、きくともなしにきました、まことどくさむらひだ、わつちがきときからゆびさきばかちからがあるのですから、わつちに一ばんけつをつめらしておくんなさいましな ばかへ、たうけぶしちからのあるものがないとつて、しよくにんたのんでつめらしたなどひときかれるとごたうけぐわいぶんになる、さやうこといか「そんなことはずにつめらしておくんなせヱ、うそだとおもふならいままへさんのけつをつめつてやう 「コレなにいたす、しからんやつだ、しかちよつとこちらあがれ、せうさうだんいたすから かしこまりました、しめ」と一とあがこんまゐりました、たなかさんはどうやくいろごさうだんをなされて、れでは一ツものけてやう、ととめこうむか「コレしよくにん 「ヘイ たゞいまさうだんいたしたところが、きふことゆへちよつとさしつかへるから、そのはう一ツつめつてくれ、たうけけらいのつもりで、なにぶんたのひか 「ヘイ、やツつけますともありがてのやツつけるなどとぞんざいなくちをきいてはならぬ、ことばさむらひらしくいたせヨ 「ヘイよろしふござゐ、んでもうへおんつけて、したたてまつるをけたらよからふ、こんにちよいおてんきござたてまつるとはうだイ だいさむらひになるにはそのあたまではいかぬ、ごどうやくちよつとかみゆつてもらヘ、れからしるしはんてんぎコラはらがけれ、そのもんつききものて、おびしめろ、ヱーしたはうしめてはいかぬ、モツとうへはうへ、れからそのはかまはくのだが、はかまはいことがあるか ばかにしちやアいけねヱ、れで二どめだ、一ぺんおやぶんさうしきときはきましたヨ んとふがさつなやつだ、シテそのはうなまへなんふのだ わつちとめこうひます たゞとめこうではあるまい、とめきちとかとめじらうとか、とめなんとかふのだらう れがな、こどもうちとめばうで、いまではたいがいとめこうまたひとにおごつてでもると、とめあにんてひますぜ 「シテみやうじんとふな んだイ、みやうじなんて こまるなア、なかむらとかまたゝなかとかんとかみやうじがあるだらう れがネ、みやうじたしでえくばかでえくみやうじがあるか、れではよろしい、なかむらうぢおなまへはいしやくしてなかむらとめだいふになれ れではわつちとめだいふでおまへさんが三だいふまるいせのおしがふたりできあがつた せつしやたゞいまあちらまゐり、そのはうつぎひかへてれ、かならしつれいがあつてはならんぞ 「ヘイよろしふございます」とこれから三だいふさん、しゝやまゐりますると、しゝやたゞぼんやりしてります ごめんいかゞござるな、すこしはおもしになりましたかナ 次武「ハイ、これせつしやことまつだひらまさめしやうけらいじぶたじぶゑもんまをものいごおみしおかれましてごべつこんねがはしうぞんじます、テハアー これおどろきました、せつしやさいぜんよりたびおめどほりをいたしたるたなかだいふでおみわすれはおそります 次武「ヤアこれんともしつれいおみわすまをした いかゞござるナ、おもしになりましたかナ 次武んでござらふナ 「イヱおしゝやこうじやう次武ほどつひしつねんいたした ますおどろきりました、せうしんものではござりますが、なかむらとめだいふまをもの、アレにひかりますが、いかゞいたしませうや 次武せんばんかたじけないことで、なにぶんよろしくおねがたてまつることゐさいしようちいたした、おつぎひかへしなかむらとめだいふさうこれへ、なかむらとめだいふとめだいふびましたが とめこうからむくわんうだイおれなりは、くろもんつきはかまはきわれながらをとこが十だんもあがりやアがつた、一ばんなりちやうないあるひてイものだ、んてやアがるだらふ、アラとめさんちよいとごらんなさいヨ、ほんとうりつぱことだ、アーひとを一ぺんていしゆにしてたいは、とるにさうゐない、ありがたおつぎひかへしとめだいふ、コレ 「オイ 「コレとめだいふどのこれ」とはれてとめこう まつぴらごめんなせエ、 「コレしつれいがあつてはならん、ていねいいたよろしうござたてまつる たゞいまゝをしあげましたなかむらとめだいふござりまする 次武これはじめてごめんくわいつかまつる、てまへことまつだひらまさめしやうけらいじぶたじぶゑもんまをし、いたつてぶこつものおみしおかれてごべつこんねがひまするで、はい とめだいふごあいさつをせんか んだイ、ゑへさつなんて、ヘイござたてまつるヨ、おわたしことおなかむらおとめだいふさままおたてまつるもので、おわたくしさまおゆびさきおちからござたてまつるから、おまへさまけつさまつめりたてまつるやうわけごさたてまつる、きようくわうきんげん 「コラなにまをす」ととめこうそでひつぱつると 「オイそでひつぱつてはいけねヱ、んぼかりものでききれるといけねヱ 「コラらせますると、とめこうキヨロしながら おたなかだいふさん、これおいでたてまつてはおわたくしさまが、おくちおきたてまつらねエからはやくあちらへおひきこたてまつれ しからばしつれいやうよろしふござたてまつる」と三だいふさんはつぎひきさがりました 「オイおめへさん、しりはやまくりたてまつれ、オイまくりたてまつれヨ 次武んとあふせられるか、なにぶんわかかねまするテ んでもよろしふござたてまつるから、けつまくりたてまつれヨ、オイだれそこおのぞたてまつておわらたてまつるナ、おのぞたてまつてこまたてまつるヨ 次武しからばしつれい」としりをまくると んだイむくじやらなおしりさまござたてまつるな」とゆびにてしゝやいしきをつめつて いかゞござたてまつるな 次武ごしんせつつめりくださるかはらんが、一かうつうじませんな うだイ、これでは 次武まるはいがとまりやうござんだツてはいがとまりやうたてまつるか、よしこんどは一けんだぞ」とふところからくぎぬき「オイこつちおむたてまつてはこまたてまつるヨ、ソラうでござたてまつるな」とくぎぬきにてしりをつめると 次武これよほどこたへますわイ んだよほどこたたてまつるとたナ、おもたてまつ次武これがたのふござたてまつる たてまつるとたな、ヤレ、ヱンヤラヤアー 次武「オーいた………「ウントコラアー 次武「オーイタヽヽヽ 「ヨイトコラアー 次武「オーイタヽヽヽ 「ヤレえんまのこイ 次武おもしてござる、おもしてござる」たなかだいふあはひからかみあけ「しておしゝやごこうじやうはナ 次武「ハイ、やしきをりきかずにまゐりました。

この著作物は、1940年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)80年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


この著作物は、1927年1月1日より前に発行された(もしくはアメリカ合衆国著作権局に登録された)ため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。