第145回国会における小渕内閣総理大臣施政方針演説


演説

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はじめに

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 第百四十五回国会の開会に当たり、私は国政を預かる責任ある立場にいる者として、施政に関する所信の一端を申し述べます。


 本年、一九九九年は一九〇〇年代最後の年であります。と同時に次の新しい千年紀、ミレニアムを迎える前夜であります。千年紀をまたごうとしているこの重要な時期に、日本は経済的な苦難に直面しております。この苦難を克服し、次の世代に力強い品格あふるる、そして美しき日本を引き継ぐため、私は身命を賭して国政運営にあたる覚悟であることを、まず冒頭に申し上げるものであります。


 冷静な状況認識はもとより重要であります。しかしながら私は、いまや大いなる悲観主義から脱却すべきときが来ていると考えます。行き過ぎた悲観主義は活力を奪い去るだけであります。いま必要なのは、確固たる意志を持った建設的な楽観主義であります。コップ半分の水を、もう半分しか残っていないと嘆くのはたやすいことであります。私は、まだ半分も残っているじゃないかと考える意識の転換が、いままさに求められていると確信するものであります。私たちが愛してやまないこの日本は、必ずやこの困難を脱することができる、そういう土性骨の座った社会を創り上げたい、そのために私は蛮勇を奮い、間もなく訪れる二十一世紀への架け橋を築くために邁進することを誓うものであります。

基本認識

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 私は現在を明治維新、第二次世界大戦後に続く「第三の改革」の時期と位置づけております。明治維新以来、わが日本は官民一体となった先人の血のにじむような努力で近代国家としての基礎を築いてきました。驚異的な経済成長と今日の繁栄はその賜物であります。しかしながら、私どもはいま、この成功体験の上に安住し続けることは許されない状況になりました。価値観が多様化し、世界が流動化する中で、過去には有効だったシステムや意思決定の方法が、いまや足かせとなることも少なくないのであります。


 明治維新と第二次世界大戦後の改革は、大変困難なものでありました。しかしながら、先人の勇気と覚悟がそれを可能にしました。現在の改革の難しさは、まさにそこにあります。社会を挙げての意識の転換が不可欠であります。足かせとなるものを壊すだけでなく、新たなシステムを創り上げなければなりません。同時に、私ども日本の持っている素晴らしいものを残す努力も必要であります。申し上げるまでもなく、「第三の改革」は政治家だけでできるものではありません。国民挙げての意識改革と支援がなければ、何事も成し得ないのであります。国民各位のご理解、ご支援をお願いするとともに、党派を超えた議員各位のご協力をお願いする次第であります。


 もとより最も重要なのは、国民おひとりおひとりが豊かで幸せに安心して暮らせる社会を築くことであります。「国は立派だが国民は不幸せ」というようなことはあり得ません。と同時に、国民がすべて国に頼って生きるということも健全な社会とは言えない時代になったと考えます。戦後五十数年、私たちは豊かさをひたすら追求してまいりました。豊かになりたいという目的はある程度は達成されましたが、その半面、心の充実という人間にとっいうことを申し上げてまいりました。健全な資本主義は利潤追求だけでは維持できません。それはドイツの社会学者マックス・ウェーバーをはじめ、世界の哲人が主張しているところであります。「徳」すなわち「高い志」を持った国家でなければ、豊かな国であり続けることは不可能であり、何よりも世界から信頼されなくなるわけであります。


 「他人にやさしく、美しきものを美しいとごく自然に感じ」社会、隣人がやさしく触れ合うことのできる社会、そして何よりも住みやすい地域社会を建設することが必要だと考えるものであります。このような考え方に基づいて、私は「二十一世紀のあるべき国の姿」について有識者からなる懇談会を早急に設置し、次の世代に引き継ぐべき指針をまとめたいと考えております。国会においても十分ご議論いただき、共に考えていこうではありませんか。

二十一世紀への五つの架け橋

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 私は、二十一世紀に向けた国政運営を、次の「五つの架け橋」を基本にして考えてまいります。第一に「世界への架け橋」、第二に「繁栄への架け橋」、第三に「安心への架け橋」、第四に「安全への架け橋」、第五に「未来への架け橋」であります。この「五つの架け橋」に沿って、私の基本的な考えを申し述べます。この際、個別の施策について十分触れられないことをお赦しいただきたいと思います。

世界への架け橋

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 今日の世界では、いかなる国も孤立して生きていくことはできません。まず考えるべきことは、わが国の安全と繁栄が確保されること、そしてわが国が国際社会の中で尊敬され、その地位にふさわしい責任を果たしていくことであります。私は、二十一世紀に向け「世界への架」を築いてまいります。


 わが国の安全保障を考えますときに、第一に、日米関係をこれまで以上に強固なものとしていかなければなりません。このためには、「日米防衛協力のための指針」関連法案等の早期成立・承認が極めて重要であります。また、米軍の施設・区域が集中する沖縄が抱える諸問題に対し、沖縄県の理解と協力を得ながら、真剣に取り組んでまいります。


 次に重要なことは、米国と並ぶ地域の主要国であるロシア、中国との安定的な関係を築いていくことであります。特にロシアとは、あらゆる分野での関係を一層強化しながら、東京宣言とモスクワ宣言に基づいて来年までに平和条約を締結し、両国間の関係を完全に正常化するよう、引き続き全力を尽くしてまいります。また日中関係は、昨年の江沢民国家主席の訪日を契機に新たな段階に入りましたことを踏まえて、両国間及び国際社会における共通の目標に向けて共に行動する関係を発展させてまいりたいと考えております。


 朝鮮半島情勢は、わが国の安全保障に大きな関わりを持つ問題であります。昨年秋の金大中大統領との話合いを通じて、日韓両国は過去との決別を果たし、今や名実ともに「近くて近い国」になったのであります。一方、北朝鮮に関しましては、米国、韓国などと緊密に連携を取りながら、先般の弾道ミサイルの発射や「秘密核施設」疑惑をめぐる国際的な懸念、日朝間の諸懸案の解決に向けて努力してまいります。北朝鮮がこのような問題に建設的な対応を示すのであれば、わが国として対話と交流を通じ関係改善を図る用意があります。


 わが国の繁栄は、世界経済がしっかりと安定していることが前提であります。特に、アジア経済の三分の二を占めるわが国としては、アジア各国の通貨・経済の安定に積極的に貢献していくことは自らの責任でもあります。欧州では本年より単一通貨ユーロが導入され、世界の経済・通貨体制は新しい時代を迎えました。私は、わが国経済と世界経済との相互依存関係を十分考慮しながら、世界経済の新たな枠組みやルール作りに積極的に参画していくとともに、円の一層の国際化が実現するよう今後とも取り組んでいかなければならない、との思いを新たにしております。


 さらに、わが国が「世界への架け橋」を築いていく上で、国際社会への応分の貢献を行うべきことは当然であります。開発途上国に対する援助や、PKF本体業務の凍結解除を含む国連の平和活動への一層の協力について、是非とも国民各位のご理解をいただきながら、積極的に進めてまいりたいと考えております。

繁栄への架け橋

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 経済の繁栄は、豊かでうるおいのある国民生活の実現と、国家や社会の発展にとっての基本であります。私は、内閣の命運をかけて「繁栄への架け橋」を築いてまいります。


 昨年七月に総理大臣に就任以来、国会のご協力をいただきながら、喫緊の課題である金融システムの再生に取り組んでまいりました。金融再生関連二法や政府保証枠を整備し、また、貸し渋りに直面していた中小企業などに対して思い切った対策をスピーディーに実行してまいりました。全国の中小企業の皆様から「何とか苦境を乗り切ることができた」などの声が数多く寄せられたところであります。このことを、関係された方々とともに深く心に刻み、今後とも問題解決に全力を傾けてまいります。


 また、昨年末に成立した第三次補正予算の下で切れ目なく景気回復策を実施しており、十一年度予算においても、当面の景気回復に全力を尽くすとの観点から、公共事業や中小企業対策、雇用対策に最大限配慮するとともに、科学技術の振興など、将来の発展基盤を確立する施策も十分に取り入れたものとしております。


 税制面でも、内需の拡大やわが国企業の国際競争力の強化を図るため、従来なし得なかった思い切った内容の個人所得課税や法人課税の恒久的な減税の実施を決断するとともに、住宅ローン減税をはじめとする政策減税を実施いたします。これらの減税は九兆円を超える規模のものとなります。また、消費税に対する国民のご理解を一層深めていただくよう、予算総則に消費税収の使途を明記し、広く国民の老後等を支える基礎年金、老人医療及び介護のための福祉予算に使う旨を明らかにしたところであります。


 これらの諸施策と民間の真剣な取組とがあいまって、平成十一年度にはわが国経済の実質成長率が〇・五パーセント程度まで回復するものと確信しております。わが国には巨額の対外資産や個人貯蓄、高い技術力に支えられた製造業の底力、勤勉な国民の資質など、国際的に比較して極めて強固な基盤が存在いたします。私は、この平成十一年を「経済再生元年」と位置づけ、日本経済の再生に全力で取り組んでまいります。


 今後、日本経済が「豊かさの中の不況」とも言うべき現在の状況を脱し、自律的に発展していくためには、経済構造改革の一層の推進を図り、経済の供給サイドの体質強化、とりわけ、新事業を創出することにより良質な雇用の確保や生産性向上を図ることが重要であります。このため、今月末を目途に「産業再生計画」を策定いたします。また、社会資本の整備は、「二十一世紀先導プロジェクト」の推進を核として、民間活力を最大限活用しながら、情報通信、都市・住宅、環境・教育・福祉など、わが国経済の活性化に不可欠な分野について、戦略的、重点的に行ってまいります。さらに、政府全体の取組として百万人規模の雇用の創出・安定を目指し、「雇用活性化総合プラン」などの雇用対策を強力に推進してまいります。


 わが国財政は、公債残高が三百二十七兆円にも達する見込みであるなど極めて厳しい状況にあり、将来世代のことを考えるとき、私は財政構造改革という大変重い課題を背負っていると痛感しております。日本経済が回復軌道に乗った段階において、財政・税制上の諸課題につき、中長期的な視点から、幅広くしっかりとした検討を行い、国民の皆様にそのあるべき姿を示さなければならないと考えております。


 昨年末に経済戦略会議から貴重な提言をいただきました。今後の政策運営に当たってはこの提言をしっかりと受け止めるとともに、法制度の整備を含め、国会の場におきましても十分ご議論いただきたいと考えております。また昨日、私は経済審議会に対し、「新たなる時代」のわが国経済社会のあるべき姿と、その実現に向けた政策方針の策定について諮問いたしました。今後十年程度の間に採るべき政策の基本方針を、できる限り早くお示ししたいと考えております。


 わが国経済社会が、二十一世紀において一段と活力と魅力にあふれたものとなるためには、それを構成する一人一人の国民や個々の企業が、自らの個性や独創性を活かして、積極果敢に創意工夫の実現に挑戦できる社会状況をつくらなければなりません。


 そのためには、規制緩和や地方分権の一層の推進、官民の役割分担の見直しなどを通じて、国民生活や事業活動に対する政府の関与のあり方を抜本的に見直し、スリム化された政府を実現することが何よりまず必要であります。今国会に提出を予定している中央省庁等改革関連法案において、二十一世紀のわが国にふさわしい中央省庁の具体的な姿をお示ししたいと考えております。また、地方公共団体の自主性・自立性を高めるため、昨年決定した地方分権推進計画を踏まえた関連法案を今国会に提出するなど、地方分権の一層の推進を図り、併せて、市町村合併を含む体制整備や行財政改革への地方公共団体の積極的な取組を求めてまいります。国民に開かれた政府の実現のため、情報公開法案の早期成立にも、政府として引き続き最大限努力してまいります。

安心への架け橋

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 今日、日本国民の多くが、人類の古くからの願いである長寿を享受できるようになりました。その一方で、国民の中には老後の生活に対する不安も広がっております。二十一世紀の本格的な少子高齢社会に向けて、「安心への架け橋」を今から整備し、明るく活力あるわが国社会を築き上げていかなければなりません。


 わが国社会には、人生五十年時代に形づくられた制度や慣習が、現在の人生八十年時代に適合するよう改革されないまま残されているものも多く見られます。日本人のライフサイクルの変化に合わせて、人生全般にわたり健康で生きがいを持って充実した生活を送れるよう、高齢者の雇用・就業の促進、高齢者が活動しやすい生活環境の整備など、社会の仕組みや人々の意識を変えていくことが必要であります。また、高齢社会の到来は多様なニーズを持った大消費者層の出現であり、経済活動に新たなチャンスを与えるものでもあります。


 社会の仕組み全体を見直す中で、セイフティ・ネットとしての役割を担う年金や医療、介護などの社会保障制度についても、将来にわたり安定的に運営できるよう、構造改革を強力に推し進めていかなければなりません。必要な給付は確保しつつ、将来世代の負担を考え、社会・経済の活力を維持するため、給付と負担の均衡を図るとともに、利用者の選択の拡大、民間事業者の導入なども含め、制度の効率化・合理化を図ってまいります。特に年金・医療につきましては、制度改革に取り組み、取り巻く環境の変化に対応し、信頼できる安定した制度を確立してまいります。


 少子化の急激な進行も、わが国経済社会に大きな影響をもたらすものであります。私は先般、「少子化への対応を考える有識者会議」から、家庭や子育てに夢を持てる環境の整備は社会全体で取り組むべき課題であるとの提言を受けました。私は、この問題に適切に対応すべく、各界関係者の参加を募り国民会議を設け、国民的な広がりのある取組を全力で進めてまいります。今国会には男女共同参画社会基本法案を提出いたしますが、こうした取組の大きな推進力になると確信しております。

安全への架け橋

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 生命や安全な生活を守ること、すなわち「人間の安全保障(ヒューマンセキュリティー)」の確立も、私たちが果たすべき重要な責務の一つであります。私は、地球全体の環境の保全から国民一人一人の安全の確保に至るまで、「安全への架け橋」を築いてまいります。


 大量生産・大量消費型の社会は、大量の廃棄物を生み、地球環境に大きな負担をかけております。美しい安定した環境を守り子孫に引き継ぎ、循環型の経済社会を築き上げることは、私たちに課せられた最も重い責任の一つであります。この責任を果たすべく、地球環境問題への対応、省エネルギー対策、原子力や新エネルギーの開発・利用の促進、実態に即したきめ細やかなリサイクルなどに努力してまいります。また、ダイオキシンの排出削減、いわゆる環境ホルモン問題への取組、化学物質の管理の促進と環境保全のための新たな法的枠組みの整備を行います。自然を慈しみ、資源を大切にする社会を築き、かけがえのない地球を守るため、わが国が先頭に立って取り組んでまいります。


 国民が安心して暮らせる安全な国土、社会の整備も、政府が引き続き取り組むべき重要な課題であり、阪神・淡路大震災や昨年の度重なる豪雨災害等の教訓を踏まえ、災害対策や危機管理の充実に最大限努力してまいります。また、国の発展は良好な治安に支えられるものであり、情報通信技術を悪用したハイテク犯罪や市民生活の安全を脅かす毒物犯罪、組織的な犯罪、更に深刻さを増す国境を越えた薬物犯罪に断固として対処してまいります。


 さらに、最近のわが国を取り巻く国際環境の中で、わが国の安全を確保するため、安全保障や危機管理に資する情報の収集、分析、伝達等に関し、情報収集衛星の導入を始めとする対策を講じてまいります。

未来への架け橋

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 二十一世紀の社会を考えるとき、今から取り組んでおくべき多くの課題に向けて、いわば「未来への架け橋」を築いていかなければなりません。


 二十一世紀は、ますます科学技術が発展し、また情報化が急速に進展すると見込まれます。科学技術や情報化は、将来の経済や国民の暮らしの発展の原動力でもあり、わが国として世界の最先端をリードしていく気概で、科学技術の振興や高度情報通信社会の実現に向け、官民挙げて取り組んでまいります。一方で、コンピュータ西暦二○○○年問題や、コンピュータ・ネットワークにおける不正アクセス対策などにも、適切に対応してまいります。


 本格的な少子高齢社会の到来に備え、国民一人一人が将来に夢を持ち、生涯の生活に安心を実感できるような社会基盤を整備していくことが必要であります。このため、広く快適な住空間や高齢者にやさしい空間などの実現を目指し、かねてより私が提唱してきた「生活空間倍増戦略プラン」を今月末を目途に取りまとめ、向こう五年間を視野に入れた「明日への投資」を推進するとともに、バリアフリー化への取組などの「安心への投資」に重点的に取り組んでまいります。また、地域の特色を活かした魅力ある地域づくり、美しい国土づくりを進めるため、「地域戦略プラン」や新しい全国総合開発計画を、首都機能移転問題への取組も含め、積極的に推進してまいります。


 農林水産業、そしてそれを支える農山漁村は、食料の生産に加え、国土・環境の保全や地域文化の継承などの面で、幅広い機能を有するものであります。こうした機能に十分目を向けながら、社会の変化や国際化が進む中で農政改革を実現するため、国内生産を基本とした食料の安定供給の確保や経営の安定・発展などの課題に関し、基本法を制定するなど政策の具体化に全力を挙げてまいります。


 未来の担い手は、言うまでもなく若者たちであります。私たち大人が未来の担い手のために成し得ることは、二十一世紀への様々な架け橋を築いていく努力を精一杯行うことであるとともに、司馬遼太郎氏が説かれたように、未来の担い手が「たのもしい人格をもち、自分に厳しく、相手にはやさしい自己」をもつ人間に育つ環境を作っていくことであります。


 私は、教育の原点は、「生きる力」、「助け合う心」そして「自然を慈しむ気持ち」にあると信じます。こうした点をしっかりと心に刻み、幅広い視野を養い個性を大事にして生きるべきこと、ボランティア活動への参画等を通じた地域や社会への貢献は大変に意義深いものであること、人には多様な生き方がありお互いにそれを尊ぶべきであること、そんな観点に立った「心の教育」を充実させていきたいと考えております。また、多様な選択を可能とする学校制度、現場の自主性・自律性を尊重する特色ある学校づくり、国際的に通用する大学を目指した大胆な大学改革の実現に向けた教育改革にも引き続き力を注いでまいります。


 家庭や地域、職場などにおいて長年にわたり培われてきた道徳心やあたたかい人間関係、優れた文化や伝統などは、大切な未来への財産として、次の世代に引き継いでいくべきであります。また、すべての人々の人権が最大限に尊重される社会の実現に努力するとともに、より国民に身近な司法制度の構築に取り組んでまいります。

むすび

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 二十一世紀の足音が聞こえてまいります。新しい世紀を希望と活力のあるものにするためにも、今世紀中の課題は今世紀中に解決の道筋をつけることが必要であります。経済を自律的な回復軌道に乗せることにまず、全力を尽くしてまいります。その上で個人や企業が希望と誇りを持って活動できるような環境を整え、格調の高い国家を築くために取り組んでまいります。日本は国際社会で自らにふさわしい貢献をしなければなりません。それと同時にいかに安全な国家にしていくべきか。叡智を結集し困難に立ち向かえば、必ずや世界が尊敬を寄せうるような国家建設は可能だと確信しております。


 内外の重要課題が山積する折、意思決定は速やかでなければなりません。そのためには私は安定した政治基盤を創ることが肝要と考え、先般、自由党との連立政権を樹立しました。当然のことながら各党各会派との協議も従来の信頼関係の上に継続してまいる所存であります。


 いまや国家の意思を決めるという重要な任務を帯びた政治そのものの真価が問われております。一内閣、一政党の利害を超越した高い見地からのスピーディーな対応が求められております。自由党との協議におきまして、副大臣制度の導入や政府委員制度の廃止などで合意いたしましたが、これは国権の最高機関たる国会の権威を高め、国民に直結した政治に転換し、迅速な政策決定を可能にしたいとの考えからであります。


 大転換期の国政の舵取り役として、私は、微力ながら精魂込めて、責任ある政治を実現するべく、全力を尽くしてまいります。


 国民の皆様、また議員各位のご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。

出典

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