第112回国会 衆議院予算委員会第八分科会 (東北熊襲発言)


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沢藤分科員 次に、これは長官にお伺いしたいのですが、最近東北地方を揺るがせているニュースがあるわけであります。
 それは大阪商工会議所会頭の佐治さんの発言であります。これは謝って済む問題じゃないし、ついうっかり間違ったという問題じゃない。あれは全く本音ですよ、内容からすれば。別に、ここで繰り返すのもちょっと恥ずかしいのですが、「仙台遷都などアホなことを考えている人がいるそうだけど、北になんぼ住んでいるか知らないが、だいたい熊襲の産地、文化程度も極めて低い」、ここまで言われたのでは東北人のプライドといいますか、大変傷つくのも無理がないわけであります。
 ただ、そこで感情的にばかりなっていられませんので、やはりこれは日本の社会の、特に経済界のトップリーダーですよ。その他にもたくさんの要職についておられる、そういう方がこのような発言をする。蝦夷と熊襲を取っ違えるという初歩的なミスもありますし、文化程度が低いと決めつけられてしまっているわけでありますが、私は東北人の立場あるいは岩手県人の立場からすれば、決してそういうことはないと思う。例を引けば幾らでも出てくるのですけれども、例えば昔話をしても、さんたる平泉文化というのは中央の分権じゃなくて、枝分かれじゃなくて、土地に住む豪族といいますか、地方の住民がつくり上げた文化なわけです。すばらしい文化なわけですね。そういったことを一つ取り上げてみても、東北地方なり北の方を十把一からげにして熊襲の産地だ、文化程度が極めて低いというふうな把握をする人があの方に代表されるようにあるとするならば、私は大変問題だと思うのです。
 国土の均衡ある発展という基本からいっても、長官、この事件——事件とあえて言いますが、この事件に対する御所感をお願いしたい。私は大変不穏当な発言だと思うのですが、いかがですか。
奥野国務大臣 御指摘ありましたように、日本のそれぞれの地域、それぞれに特色のある文化を育ててきたと思いますし、平泉文化を一つ例に挙げられましたが、おっしゃるとおりだ、こう思っております。
 関西の人たちは関西復権を年来唱えておるわけでございまして、同時に首都移転、ぜひ関西に持ってきたい、かなり強い希望を持っておられるようでございます。その熱望の余り、口が少し滑ったんじゃないかな、私はこんな感じに受けとめておるわけでございまして、本人も平謝りに謝っているようでございますけれども、首都を自分のところへ持っていきたい、その熱望の余りに口が滑ったというふうに受けとめたいな、こう思っているところでございます。
○沢藤分科員 善意に解釈すればそういうことになるわけですけれども、やはりふだんそういうことを考えておられない場合はああいう発言は出てこないと思います。言葉じりというか、言葉をとちったとか表現を誤ったという問題ではないわけですよ。
 私は余り深追いはしませんけれども、国土全体をよくしていこうというときに、トップレベルの方がああいう発想を持っているということを大変残念に思います。そのことについて、長官、残念だとお思いになりませんか。
○奥野国務大臣 本人もわざわざ出向いて謝ったりしておられるように、みずから大失態を犯したと自覚を深くしておられるわけでございますので、私も将来そういうような問題が起こらないように、これを契機に一層戒めていきたいものだな、こう思います。
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