第十四回記念祭歌


巻頭言

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流星落ちて住む処、橄欖かんらんの実の熟るるさと
あくがれのみんなみの国につどいにし
三年みとせの夢短しと結びも終えぬこの幸を、
或いは饗宴うたげの庭に或いは星夜の窓の下に、
若い高らう感情の旋律をもて思いのままに歌い給え、
歌は悲しき時の母ともなり嬉しき時の友ともなれば。

歌詞

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北辰ほくしん斜にさすところ
大瀛たいえいの水洋々乎ようようこ
春花はるはな薫る神州の
正気せいきこも白鶴城はっかくじょう
芳英ほうえい永久とわくちせねば
歴史も古りぬ四百年しひゃくねん

紫さむる黎明しののめ
静けき波に星数え
荒涼の気にむせぶとき
微吟消え行く薩摩がた
不屈の色もおごそかに
ひがし火をく桜島

悲歌に耳す人もなく
沈み濁れる末の世の
驂鸞さんらんの夢よそにして
疾風迅雨じんうに色さびし
古城の風にうそぶける
健児七百意気高し

南のつばさこのさと
三年みとせとどまるほうの影
行路ゆくては万里雲湧きて
雄図ゆうともゆるあまつ日や
首途かどでの昔叫びにし
理想の空に長駆ちょうくせん

ああ若き日の光栄は
今年十四の記念祭
祝うもうれし向上の
旅の衣にちりかかる
くすの下露清らけく
今日南溟なんめいの秋にして

 

この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。