第十六「カフィズマ」


第百九聖詠 編集

ダワィドの詠。

主我が主に謂えり、爾我が右に坐して、我が爾の敵を爾の足の台と爲すに迄れ。

主はシオンより爾が能力の杖を遣わさん、爾は其の敵の中に主たる可し。

爾が能力の日に於いて、爾の民は聖なる美麗を以て備えられたり、我黎明の前に腹より爾を生めり、

主は誓いて悔いず、爾メルヒセデクの班に循いて司祭と爲り世々に迄らん。

主は爾の右にあり。彼は其の怒りの日に諸王を撃ち、

審判を諸民に行い、屍を地に満て、廣き地に於いて首を毀らん。

彼は道端の流れに飲まん、故に首を翹げん。

第百十聖詠 編集

アリルイヤ

主よ、我心を全うして爾を義者の集議の中、および會の中に讃榮す。

主の所爲は大いにして、凡そ之を愛する者の爲に慕うべし。

その所爲は光榮なり、美麗なり、其の義は永く存す。

彼は其の奇迹を忘る可からざる者と爲せり、主は慈憐にして鴻恩なり。

彼は己を畏るる者に糧を与え、永く其の約を記念す。

彼は其の所爲の力を其の民に顕わせり、之に異邦人の嗣業を与えん爲なり。

其の手の所爲は真実なり、公儀なり、其の悉くの誡めは正しく、

世々に堅固にして、真実と正直とを基と爲せり。

彼は其の民に救いを遣わし、其の約を永遠に立てたり。其の名は聖にして畏るべし。

一〇智慧の始めは主を畏るる畏れなり、其の誡めを守る者は皆明智なり。其の讃美は永く存せん。

第百十一聖詠 編集

アリルイヤ

神を畏れ、其の誡めを極めて愛する人は福なり。

其の裔は地に力あり、正直の者の族は祝福せられん。

富と財とは其の家にあり、其の義は永く存す。

正直の者の爲に光は闇冥の中に出ず、彼は慈しみあり、恵みありて義なる者なり。

善人は憐れみを施し、又借し与う、彼は裁判の時に其の言葉の確かなるを顕わさん。

彼は世々撼かざらん、義人は永く記憶せられ、

悪評を懼れざらん、其の心主を恃みて堅し。

其の心は堅固なり、彼其の敵を見ん時、懼れざらん。

彼は散じて貧者に施せり、其の義は永く存し、其の角は榮えを以て挙がらん。

一〇悪者は之を見て憂い、切歯して消えん、悪者の望みは滅びん。

光榮讃詞

第百十二聖詠 編集

アリルイヤ

主の諸僕よ、讃め揚げよ、主の名を讃め揚げよ。

願わくは主の名は崇め讃められて今より世々に至らん。

願わくは日の出ずる處より日の入る處まで主の名讃榮せられん。

主は高く萬民の上に在り、其の光榮は諸天の上に在り。

孰か主我が神の如くならん、彼は高處に居り、

俯して天と地とを臨み、

塵より貧しき者を援け、泥より乏しき者を挙げて、

之を牧伯、即其の民の牧伯と共に坐せしめ、

妊まざる婦を子の爲に歓ぶ母として家に居らしむ。

第百十三聖詠 編集

(アリルイヤ)

イズライリ、エギペトより出で、イアコフの家、異邦民より出でし時、

イウダは神の聖所となり、イズライリは其の領地となれり。

海は見て走り、イオルダンは後へ退けり。

山は牡羊の如く躍り、邱は羔の如く躍れり。

海よ、爾何事に遭いて走りしか、イオルダンよ、爾何事に遭いて後へ退きしか。

山よ、爾何爲れぞ牡羊の如く躍る、邱よ、爾等何爲れぞ羔の如く躍る。

地よ、主の顔の前、イアコフの神の顔の前に震え、

彼磐を変じて池となし、石を変じて水の泉となす。

我等に非ず、主よ、我等に非ず、乃爾の名に光榮を帰せよ、爾の憐れみに縁り、爾の真実に縁る。

一〇異邦人何すれぞ彼等の神は何処に在ると云う、

一一我等の神は天に在り、地に在り、凡そ欲する所を行う。

一二彼等の偶像は乃銀、乃金、人の造工なり。

一三彼口ありて言わず、目ありて見ず、

一四耳ありて聴かず、鼻ありて嗅がず、

一五手ありて触らず、足ありて行かず、其の喉は聲を出さず。

一六願わくは之を造る者と之を恃む者とは是と相似ん。

一七イズライリの家よ、主を恃め、彼は我が助けなり、盾なり。

一八アアロンの家よ、主を恃め、彼は我が助けなり。

一九主を畏るる者よ、主を恃め、彼は我が助けなり、盾なり。

二〇主は我等を記念し、我等に福を降し、イズライリの家に福を降し、アアロンの家に福を降し、

二一主を畏るる者に、大小の別ちなく、福を降す。

二二願わくは主は爾等に増し加え、爾等及び爾等の子孫に増し加えん。

二三爾等は天地を造りし主に降福せられたり。

二四天は主の天なり、地は彼之を人の諸子に与えたり。

二五主を讃め揚ぐるは死者に非ず、

二六乃我等生ける者は主を崇め讃めて今より世々に迄らん。

第百十四聖詠 編集

(アリルイヤ)

我喜ぶ、主の我が聲、我が祈りを聴きしに因る。

彼は其の耳を我に傾けたり、故に我在世の日に彼を呼ばん。

死の病は我を囲み、地獄の苦しみは我に臨み、我辛苦艱難に遭えり、

其の時我主の名を呼びて云えり、主よ、我が霊を免がれしめ給え。

主は仁慈にして義なり、我が神は慈憐なり。

主は朴直なる者を護る、我弱りしに、彼我を助けたり。

我が霊よ、爾の平安に帰れ、蓋主は爾に恩を施せり。

主よ、爾我が霊を死より、我が目を涙より、我が足を蹶より免がれしめ給えり。

我生ける者の地に在りて主の顔の前に行かん。

光榮讃詞

第百十五聖詠 編集

(アリルイヤ)

我信ず、故に言えり、我甚だ傷めり。

我惑いし時謂えり、凡その人は偽りなり。

我何を以て主の我に施しし悉くの恩に報いん、

我救いの爵を受けて、主の名を呼ばん。

我が誓いを主に、其の衆民の前に償わん。

聖人の死は主の前に貴し。

嗚呼主よ、我は爾の僕、我は爾の僕、爾の婢の子なり、爾は我の縄目を釈けり。

我讃揚の祭を爾に献げて、主の名を呼ばん。

我が誓いを主に、其の衆民の前に、

一〇主の宮の庭に、イエルサリムよ、爾の中に償わん。

第百十六聖詠 編集

(アリルイヤ)

萬民よ、主を讃め揚げよ、萬族よ、彼を崇め讃めよ、

蓋彼が我等に施す憐れみは大いなり、主の真実は永く存す。

第百十七聖詠 編集

(アリルイヤ)

主を讃榮せよ、蓋彼は仁慈にして、其の憐れみは世々にあればなり。

イズライリの家今言うべし、彼は仁慈なり、其の憐れみは世々にあればなり。

アアロンの家今言うべし、彼は仁慈なり、其の憐れみは世々にあればなり。

主を畏るる者今言うべし、彼は仁慈なり、其の憐れみは世々にあればなり。

我狭きより主に呼びしに、主は我に聆きて、我を廣き處に引き出せり。

主は我を護る、我懼れざらん、人何をか我に爲さん。

主は我を助くる者なり、我我が敵を見ん。

主を恃むは、人を恃むより善なり。

主を恃むは、牧伯を恃むより善なり。

一〇萬民我を囲みたれども、我主の名を以て之を敗れり、

一一彼等我を囲み、我を環りたれども、我主の名を以て之を敗れり、

一二彼等の我を囲みしは、蜂の其の巣を囲むが如く、其の消えしは、棘の火の如し、我主の名を以て之を敗れり。

一三彼等強く我を推して、我をイトさんと欲したれども、主は我を扶けたり。

一四主は我が力、我が歌なり、彼は我が救いとなれり。

一五義人の住所に歓びと救いとの聲あり、主の右の手は力を顕わす、

一六主の右の手は高し、主の右の手は力を顕わすと。

一七我死せず、猶生きて主の所爲を伝えん。

一八主は厳しく我を罰したれども、我を死に付さざりき。

一九我が爲に義の門を闢け、我之に入りて主を讃榮せん。

二〇是れは主の門なり、義人等之に入らん。

二一我爾を讃榮す、蓋爾は我に聴き、我の救いとなれり。

二二工師が棄てたる石は屋隅の首石と爲れり、

二三此れ主の成す所にして、我等の目には奇異なりとす。

二四主は此の日を作れり、我等之を以て歓び楽しまん。

二五嗚呼主よ、救い給え、嗚呼主よ、助け給え。

二六主の名に依りて来る者は崇め讃めらる、我等主の家より爾等を祝福す。

二七主は神なり、我等を照らせり、縄を以て牲を繋ぎ、牽きて祭壇の角に至れ。

二八爾は我が神なり、我爾を讃榮せん、爾は我が神なり、我爾を崇め讃めん、我爾を讃榮せん、蓋爾は我に聴き、 我の救いとなれり。

二九主を讃榮せよ、蓋彼は仁慈にして、其の憐れみは世々にあればなり。

光榮讃詞