- (ダワィドの詠)
一 義人よ、主の爲に喜べ、讃榮するは義者に適ふ。
二 瑟を以て主を崇め讃めよ、十弦の琴を以て彼に歌へ、
三 新なる歌を彼に歌へ、聲を揃へ、歓び呼んで彼に歌へよ。
四 蓋主の言は正直にして、其悉くの行爲は真実なり。
五 彼は公義と審判とを好み、主の慈憐は地に満てり。
六 天は主の言にて造られ、天の全軍は其口の気にて造られたり。
七 彼は海の水を聚めしこと塁の如く、淵を庫に蔵めたり。
八 全地は主を畏るべし、凡そ世界に居る者は彼の前に戦くべし。
九 蓋彼言へば則成り、命ずれば則顕れたり。
一〇 主は異邦人の議する所を廃し、諸民の謀る所を破り、牧伯の議する所を破る。
一一 惟主の議する所は永く立ち、其心の意は世世に立つ。
一二 主を以て神となす民は福なり、主の選びて己の嗣業となす族は福なり。
一三 主は天より鑒みて悉くの人の子を視、
一四 其坐する所の宝座より悉くの地に居る者を顧みる。
一五 彼は衆人の心を造り、凡そ彼等の行ふ所を鑒察す。
一六 王は大軍に依りて救はれず、勇士は大力に依りて衛られず。
一七 馬は救の爲に虚し、其大力を以て援くる能はず。
一八 夫れ主の目は彼を畏るる者と、彼の憐を恃む者とを顧み、
一九 主は彼等の霊を死より救ひ、飢饉の時に彼等を養はん。
二〇 我等の霊は主を恃む、彼は我が助なり、我が衛なり、
二一 我が心は彼の爲に楽む、蓋我等は其聖なる名を頼めり。
二二 主よ、我等爾を頼むが如く、爾の憐を我等に垂れ給へ。
- 一 ダワィドの詠。ダワィド、アワィメレフの前に在りて佯狂し、彼に追はれて去り、乃ち此を作れり。
二 我何の時にも主を讃め揚げん、彼を讃むるは恒に我が口に在り。
三 我が霊は主を以て誇らん、温柔なる者は聞きて楽しまん。
四 我と偕に主を尊め、偕に彼の名を崇め讃めん。
五 我曾て主を尋ねしに、彼は我に聆き納れて、我が都ての危きより我を免れしめ給へり。
六 目を挙げて彼を仰ぐ者は照されたり、彼等の面は愧を受けざらん。
七 此の貧しき者呼びしに、主は聆き納れて、之を其悉くの艱難より救へり。
八 主の使は主を畏るる者を環り衛りて、彼等を援く。
九 味へよ、主の如何に仁慈なるを見ん、彼を恃む人は福なり。
一〇 凡そ主の聖人よ、主を畏
れよ、蓋彼を畏るる者は乏しきことなし。
一一 少き獅は乏しくして餓ゑ、唯主を尋ぬる者は何の幸福にも缺くるなし。
一二 小子よ、来りて我に聴け、主を畏るる畏れを爾等に訓へん。
一三 人生くるを望み、又寿へて幸福を見んことを欲するか、
一四 爾の舌を悪より、爾の口を譌の言より止めよ。
一五 悪を避けて善を行ひ、和平を尋ねて之に従へ。
一六 主の目は義人を顧み、其耳は彼等の呼ぶを聆く。
一七 唯主の面は悪を爲す者に対ふ、其名を地より滅さん爲なり。
一八 義人は呼ぶに、主は之を聴き、彼等を悉くの憂より免れしむ。
一九 主は心の傷める者に近し、霊の謙る者を救はん。
二〇 義人には憂多し、然れども主は之を悉く免れしめん。
二一 主は彼が悉くの骨を護り、其一も折れざらん。
二二 悪は罪人を殺し、義人を憎む者は亡びん。
二三 主は其諸僕の霊を救ひ、彼を頼む者は一人も亡びざらん。
- 光榮讃詞
- ダワィドの詠。
一 主よ、我と争ふ者と争ひ、我と戦ふ者と戦ひ給へ。
二 盾と甲とを執り、起ちて我を助け、
三 剣を抜きて、我を逐う者の途を遮り、我が霊に向ひて、我は爾の救なりと曰へ。
四 我が霊を求むる者は、願はくは恥を得て辱を受けん、我を害せんと謀る者は、願はくは退けられて辱しめられん、
五 願はくは彼等は風前の塵の如くなり、主の使彼等を払はん、
六 願はくは彼等の途は暗くして滑になり、主の使彼等を追はん、
七 蓋彼等は故なくして隠に我が爲に其網なる阱を設け、故なくして之を我が霊の爲に穿てり。
八 願はくは滅は猝に彼に至り、其隠に我が爲に設けし網は彼を掩ひ、彼自ら之に陥りて亡びん。
九 唯我が霊は主の爲に喜び、其施せる救の爲に楽まん。
一〇 我が悉くの骨曰はん、主よ、誰か爾、弱き者を強き者より救ひ、貧しき者乏しき者を掠むる者より救ふ者に似たる。
一一 不義なる証者は起ちて我を責め、我が知らざる事を我に詰り問ふ。
一二 彼等は悪を以て我が善に報い、我が霊を孤独の者と爲す。
一三 彼等の病める時我麻を衣、斎を以て我が霊を卑くし、我の祈祷は我が懐に帰れり。
一四 我彼を待ちしこと、我が友我が兄弟の如し、我憂ひて行き、首を垂れしこと、母を喪するが如し。
一五 唯我躓きたれば、彼等は喜びて集り、詬る者は集りて我を攻めたり、我何の所以を知らず、我を謗りて息めざりき、
一六 偽なる嘲笑者と偕に我に向ひて切歯せり。
一七 主よ、爾之を観ること何の時に至るか、我が霊を彼等の悪事より脱れしめ、我の独なる者を獅より脱れしめ給へ。
一八 我爾を大会の中に讃榮し、爾を衆民の間に讃揚せん、
一九 不義にして我に仇する者の我に勝ちて喜ばず、我が咎なくして我を悪む者の互に眴せざらん爲なり。
二〇 蓋彼等の言ふ所は和平に非ず、乃ち地上の和平を好む者に向いひ詐の謀を設く。
二一 其口を開きて我に向ひて曰く、嘻嘻、我が目已に見たり。
二二 主よ、爾已に見て黙す毋れ、主よ、我に離るる毋れ。
二三 我が神我が主よ、起ちて、寤めて我が爲に判を行ひ、我が訟を理めよ。
二四 主我が神よ、爾の義に依りて我を判き給へ、彼等をして我に勝ちて喜ばしむる毋れ、
二五 其心の中に、嘻嘻、我等の望の如しと謂はしむる毋れ、其をして我等已に之を呑めりと謂はしむる毋れ。
二六 凡そ我が災を喜ぶ者は、願はくは耻を得て辱を受けん、我に向ひて高ぶる者は、願はくは耻と侮とを被らん。
二七 我が義とせらるるを望む者は、願はくは喜び楽みて恒に云はん、其僕の平安を望む主は尊み讃めらるべし。
二八 我が舌も爾の義を傳へ、日日に爾を讃め揚げん。
- 一 伶長に歌はしむ。主の僕ダワィドの詠。
二 悪者の不法は我が心の中に謂ふ、其目の前に神を畏るる畏なし、
三 蓋彼自ら己の目前に諂ひて、其不法を疾まんとして、之を糺すに似たり、
四 其口の言は不実にして譌なり、彼は悟りて善を行ふを望まず、
五 彼其榻に在りて不法を謀り、自ら不善の途に立ちて、悪を憎まず。
六 主よ、爾の慈憐は天に戻り、爾の真実は雲に戻る。
七 爾の義は神の山の如く、爾の判は大なる淵の如し。主よ、爾は人と獣とを守る。
八 神よ、爾の憐は何ぞ貴き、人の子は爾が翼の蔭に安んじ、
九 爾が家の腴に飫く、爾は彼等に爾の甘味の流より飲ましむ、
一〇 蓋生命の源は爾に在り、我等爾の光に於て光を見る。
一一 爾の憐を爾を知る者に、爾の義を心の直き者に恒に垂れ給へ。
一二 願はくは驕の足は我を踶まず、罪人の手は我を逐はざらん。
一三 不法を行ふ者は彼処に仆れ、隕されて起つ能はず。
- 光榮讃詞
- ダワィドの詠。
一 悪者を妬む毋れ、不法を行ふ者を猜む毋れ、
二 蓋彼等は草の如く早く刈られ、青草の如く萎まん。
三 主を恃みて善を行へ、地に住みて真実を守れ。
四 主を以て慰と爲せ、彼は爾が心の望を適へん。
五 爾の途を主に託して彼を恃め、彼は成さん、
六 爾の義を光の如く、爾の正を午日の如く著さん。
七 主に順ひて彼を頼め、其道に利達を得る譌なる人を妬む毋れ。
八 怒を息め、恨を遺てよ、妬みて悪を爲す毋れ、
九 蓋悪を爲す者は絶たれん、惟主を恃む者は地を嗣がん。
一〇 久しからずして悪者は無に帰せん、爾其処を見れば有るなし。
一一 惟温柔なる者は地を嗣ぎ、平安の多きを楽まん。
一二 悪者は謀りて義人を攻め、之に向ひて切歯す、
一三 然れども主は之を哂ふ、其日の至るを見ればなり。
一四 悪者は劒を抜き、弓を張りて、乏しき者と貧しき者とを仆し、直き道を行く者を刺さんと欲す、
一五 其劒は反りて其心を貫き、其弓は折られん。
一六 義人の所有の少きは多くの悪者の富に勝る、
一七 蓋悪者の臂は折られん、惟義人は主之を扶く。
一八 主は玷なき者の日を知る、彼等の嗣業は永く存せん、
一九 彼等は患難の時に羞を被らず、飢饉の日に飫くことを得ん、
二〇 惟悪者は滅び、主の敵は羔の脂の如く消え、烟の中に消えん。
二一 悪者は借りて償はず、義人は憐みて予ふ、
二二 蓋主に降福せられし者は地を嗣ぎ、彼に詛はれし者は絶たれん。
二三 主は義人の足を固め、其行く途を喜ぶ、
二四 彼は躓けども仆れず、主其手を執りて之を扶くればなり。
二五 我幼きより今老ゆるに至るまで、未だ義人の遺てられ、其裔の食を丐ふを見ざりき、
二六 彼は毎日憐を施し、又借し予ふ、彼の裔は福を受けん。
二七 悪を避けて善を行へ、然らば永く生きん、
二八 蓋主は義を愛し、其聖者を遺てず、彼等は永く護られん、惟不法の者は仆され、悪者の裔は絶たれん。
二九 義人は地を嗣ぎ、永く之に居らん。
三〇 義人の口は睿智を言ひ、其舌は義を語る。
三一 其神の法は其心に在り、其足は撼かざらん。
三二 悪者は義人を窺ひ、之を殺さんと欲す、
三三 惟主は彼を其手に付さず、彼が判を受くる時、彼を罪するを赦さざらん。
三四 主を恃み、其道を守れ、然らば彼爾を挙げて、爾に地を嗣がしめん、悪者の絶たるる時爾之を見ん。
三五 我曾て悪者の誇大にして、蔓ること根の深き茂りたる樹の如きを見たり、
三六 然れども彼過ぎて、視よ、無に帰せり、我之を尋ねて得ず。
三七 玷なき者を鑒み、義人を視よ、蓋此くの如き人の将来は平安なり、
三八 惟不法の者は皆絶たれ、悪者の将来は滅びん。
三九 義人の救は主よりす、其憂の時に於て主は其防固なり、
四〇 主は彼等を援け彼等を脱さん、彼等を悪者より脱し彼等を救はん、彼等主を恃めばなり。
- 光榮讃詞