こゝろもあらぬ秋鳥(あきどり)の
声にもれくる一ふしを
        知るや君

深くも澄(す)める朝潮(あさじほ)の
底にかくるゝ真珠(しらたま)を
        知るや君

あやめもしらぬやみの夜に
静(しづか)にうごく星くづを
        知るや君

まだ弾(ひ)きも見ぬをとめごの
胸にひそめる琴の音(ね)を
        知るや君

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出典:青空文庫「若菜集」