ミシェル・ノストラダムス師の予言集>百詩篇第7巻


1

幻滅したアキレスによる宝の櫃は
生まれた者たちには四角いものと認識される。
王家の行為で企みは知られ、
吊るされていた体が人目に晒される。

2

マルスによって開かれたアルルは、戦争を与えないだろう[1]
夜に兵士たちは驚かされるだろう。
地上で、黒と白は藍色へと隠される。
偽りの口実の中、売国奴たちは一掃されて[2]、鐘が鳴る。

3

フランスの海戦の勝利の後、
バルキノ人[3]、サイイノン人[4]フォカエア
黄金のキヅタ、鉄床は球の中に閉じ込められる。
プトロン[5]の人々は欺瞞に加わるだろう。

4

ラングルの公爵はドールで攻囲される、
オータンリヨネーに伴われて。
ジュネーヴアウクスブルクミランドラの人々と結びつく、
アンコーナの人々に対抗して山を越えるために。

5

テーブルにワインが撒き散らされるだろう。
第三の者は彼が請求するものを持っていないだろう。
パルマの黒から二度下ったもの
ペルージャピサに、彼が思うことをするだろう。

6

ナポリパレルモシチリア全体が
バルバロイの手によって無人になるだろう。
コルシカサレルノサルデーニャの島
飢餓、ペスト、戦争、凶事の終焉は先延ばしに。

7

偉大な軽騎兵たちの戦いで、
人々は叫ぶだろう。大きな三日月が撃破される。
夜に馬が蹴る[6]、山々、羊飼いの装束
深い溝の中の赤い深淵[7]

8

フローラに最も近いローマ人よ、(汝は)逃げよ、逃げよ。
ファエスラエに戦いが与えられるだろう。
流された血、最も偉大な者たちが手中に。
寺院も性[8]も赦されないだろう。

9

その偉大な隊長(capitaine)の不在時に、婦人は、
副王の愛に招かれるだろう。
偽りの約束と不幸な贈り物、
バルの大公の手の中に。

10

ル・マンに隣接する偉大な君主によって、
豪胆で勇敢な大軍隊の首領が
ガロ人ノルマン人の大地と海を経由して、
カルプルバルセロナを通り過ぎる。島は略奪される。

11

王族の子どもが母親を侮蔑するだろう。
眼、傷ついた両足、耐え難いこと、不如意
婦人への知らせは奇妙でかつ非常に苦い
彼女の味方が500人以上殺されるだろう。

12

偉大な次男が戦争を終わらせるだろう。
神々へと、赦された人々が集まる。
カオールモワサックは包囲から遠いところへ行くだろう。
レクトゥールの拒絶、アジャンの人々は髪を剃られる。

13

従属的な海の都市の
サトラップの地位を剃髪された者が得るだろう。
次いで、彼に背く汚い人物を追い出し、
14年間、暴政を敷くだろう。

14

(彼は)偽りの地図を開陳しに来るだろう。
記念碑の甕が開かれるだろう。
宗派が急成長する。偽りの[9]哲学。
白い甕には黒い甕、古い甕には清新な甕[10]

15

インスブリア地方(l'insubre contrée)の都市の前で、
7年間、前での攻囲が行われるだろう。
非常に偉大な王がそこに入るだろう。
そして都市は、敵の外で自由に。

16

偉大な女王によって作られた奥深い入り口は、
屈強で近寄れない場所になるだろう。
3頭の獅子の軍隊は撃破されるだろう、
むごい事件が起こる中で。

17

憐憫と慈悲に乏しい君主が
死によって大いなる知識を変えてしまうだろう。
大いなる休息によって王国は働かされる。
そのとき、すぐに偉大な者がひどい目に遭うだろう。
17[11]
憐憫と慈悲に乏しい君主が
彼の手下たちに平和を与えた後で
死によって大いなる知識を変えてしまうだろう。
大いなる休息によって王国は働かされる。

18

攻囲された者たちが条約を取り繕うだろう。
7日後、彼らは残酷な出口を作り出すだろう。
中に押し戻された人々、火、血、斧に置かれた7人
平和を織り上げた婦人が囚われる。

19

ニースの砦は交戦しないだろうが、
輝く金属によって陥落するだろう。
その事実は長く討議されるだろう、
市民たちに。恐ろしく慄くべきこと。

20

トスカーナの言葉を話す大使たちは
四月と五月にアルプスと海を越える。
仔牛[12]のそれ(大使)は演説を行うだろう。
ガリア人の生命はその前に消えることはない。

21

悪疫をまとったヴォルサイ人(Volsques)の敵意に
隠蔽された者が、暴君を追い出すだろう。
ソルグの橋[13]で闇取引が行われるだろう、
彼とその一党を死に至らしめるための。

22

メソポタミア[14]の市民たち
タラコネンシスの友人たちに対する怒り。
遊戯、祭礼、宴会、眠りに落ちた全ての人々。
ローヌ川に代理者[15]、囚われた都市、アウソニア(Ausone)の人々。

23

王笏は取ることを強いられるだろう、
その先祖が義務を負わせた[16]ところのものを。
そして指輪によって誤解が生じるだろう[17]
人々が宮殿を荒らしに来るであろう時に。

24

埋められた者が墓から出るだろう。
(彼は)橋の強者[18]を鎖で縛らせるだろう。
鯉(Barbeau)の卵に毒が仕込まれる、
ロレーヌの大物であるル・ポンの侯爵[19]によって。

25

長い戦いによって軍全体が蕩尽する、
兵のための金銭もなくなるであろうほどに。
金や銀に替えて人々は革で鋳貨するようになるだろう。
ガリアの銅貨、三日月の刻印

26

7隻の船の周りに細長い船やガレー船
致命的な戦争が幕を開けるだろう。
マドリードの首領は矢[20]の攻撃を受けるだろう。
2隻は逃れ、5隻は陸に曳かれてゆく[21]

27

ヴァストの城壁に大騎兵隊
フェラーラ[22]の近くで貨物に妨害される。
トリノでは、彼らはすぐに盗みを働くだろう。
砦の中では彼らの人質を奪うだろう。

28

隊長が大量の略奪品を運ぶだろう。
山の上には、最も近い敵たちの何人か。
火に巻かれた者が道を作るだろう。
逃れた者たちは、30人を除いて、焼き串で刺される。

29

アルバの大公が謀反しにきて、
その偉大な父祖たちへの裏切りをするだろう。
ギーズの大物が彼を誅するために来るだろう。
引き立てられた捕虜、建てられた記念碑。

30

略奪が近い、大火、流血。
ポー川、大河、企てが牛飼いたちに。
長く待たされた後に、ジェノア、ニース、
フォッサーノトリノから。サヴィリアーノで捕獲。

31

ラングドックギュイエンヌから一万人以上が
アルプスを再び越えることを望むだろう。
偉大なアロブロゲスたち(Allobroges)はブリンディジに抗して行進するだろう。
アクイーノブレシアは彼らを再び砕きに来るだろう。

32

王家の山[23]の小作地[24]から生まれるだろう。
穴倉と伯爵[25]を虐げに来るだろう、
ミラノの辺境の軍隊を召集するために。
ファヴェーヌ[26]とフィレンツェは金と人を使い切る。

33

詭計によって王国は軍隊を取り除く。
攻囲された艦隊、間諜に通り道。
2人の偽りの友が来るだろう、加担しに、
そして長い間眠っていた怨嗟を覚醒させに。

34

ガリアの人々は大いなる後悔の中にあるだろう。
空虚で軽薄な心が無謀を信じるだろう。
パンも塩もワインも水も毒もビール(cervoise)もない。
最も偉大な者が囚われる。飢餓、寒さ、窮乏。

35

大きな釣られた魚[27]は嘆き悲しむようになるだろう、
選ばれたことを。(人々は)年齢で誤認をするだろう。
それ(釣られた魚)は彼らとはほとんど一緒に住みたくないであろう。
それの言葉を話す人々(=同郷人)によって裏切られるだろう。

36

神は天に、神の言葉全体は海に。
赤い者たちによって、7人の剃髪された者はビュザンティオンに運ばれる。
油を塗られた者(=戴冠した者)に対抗してトレビゾンドの300人が、
2つの法を置くだろう、恐怖、そして信頼。

37

10人が遣わされ、船の首領は死ぬ。
老練な一人によって艦隊での戦端が開かれる。
首領の混乱。ある者は刺されて噛み付く。
レランLeryns)、ステカデス[28]、船、黒の中の頭

38

王家の長子、駆け回る軍馬の上で
拍車をかけるだろう。非常に荒々しく走り回る。
口と唇。足は保証された[29]
引き摺られ、曳かれ、無残に死ぬ。

39

フランス軍を率いる者が、
本隊を失うと信じている。
カラスムギ粘板岩が敷き詰められた上を通りつつ。
ジェノアによって異邦人が滅びるだろう。

40

外側にオイルグリースを塗った樽の中に、
港の前で21人が閉じ込められるだろう。
彼らは第二の見張りに向けて、死によって勇武を示すだろう。
門を通り抜けて見張りに殺されるのだ。

41

両足と両手の骨が閉じ込められている。
騒音によって長い間人が住まない家。
夢に基づいて墓から掘り起こすだろう。
健やかで噂がなくなり人が住む家。

42

2人が毒に悩まされる。新たに
大君主の厨房で流しに来た者たち。
皿洗いを通じて、2人ともその行為は見通される。
長子が死んだと思い込んだものが囚われる。
  1. Arles ne donra guerre : 17世紀以降の版には「アルルは彼に戦争を与えるだろう」(Arles le donra guerre)となっているものがある。
  2. verez : 古フランス語verrer(一掃する)の変化形と捉えた(cf. Leoni [1982])。verrez(あなた方は見るだろう)と捉える者もいる(Lemesurier [2003])。
  3. Barchinons : Barchinona はバルセロナの古称だが、文脈上バルスロンヌ(Barcelonne)と見るべきとする論者もいる(Petey-Girard [2003])。
  4. Saillinons : 古代プロヴァンスの住人を表したSalyens、あるいはプロヴァンス地方のセイヤン(Seillans)周辺の住民を指すラテン語名Saliniensisに因むか(Clébert [1982])。レオニやプテ=ジラールもプロヴァンス周辺の住民をさしているのだろうという点では一致している。
  5. Ptolon : 1672年のガランシエール版のみトゥーロン(Toulon)になっており、これを支持する者もいる(Lemesurier [2003])。他方、ラテン語でPtolomaisとも綴られた古代都市プトレマイス(Ptolemais)の可能性も指摘されている(Leoni [1982], Petey-Girard [2003])。
  6. ruer(馬が蹴る)は、16世紀末の版以降tuer(殺す)になっているものが多い。
  7. 1627年版以降の版にはAbismesがAbismerになっているものがある。その場合、4行目は「赤い者たちを深い溝に沈める」
  8. sexe : secte(宗派)の誤記か(Lemesurier [2003])。あるいはsexe féminine(女性)のことで、「聖職者も女性も」ということか(cf. Clébert [1982])。
  9. faincte : 17世紀以降の版にはsaincte(聖なる)となっているものがある。
  10. Pour blanches, noires & pour antiques vertes : いずれも女性名詞複数形に対応する形容詞。あてはまる名詞はcruches(甕)のみなので、それを補って訳した。なお、複数形に拘らなければ、「地図」「宗派」「哲学」もいずれも女性名詞である。
  11. 1594年にシャヴィニーが示したテクスト。 1605年版をはじめ、17世紀以降の版にはこれを採用している版も少なくない。
  12. veau : 19世紀の注釈者ル・ペルチエはヴォー(Vaud)と読むべきと指摘し、現在でも支持されている(Petey-Girard [2003], Lemesurier [2003])。
  13. pont de Sorgues : ポン=ド=ソルグ(Pont-de-Sorgues)という都市を指すとの指摘もある(Clébert [1982])。
  14. ここでは本来の語義どおり「二つの川の間(の地域)」の意味で用いられている(Leoni [1982] etc.)。
  15. 原語Vicaireは状況によって司教代理やローマ教皇(キリストの代理)など、幅広い意味を持つ。
  16. engager : 「質入れした」とも訳せる
  17. 三行目冒頭Puis par は、1557年版以外のほとんどの版で、Puis queとなっている。その場合「人々が指輪を誤解するであろうから」
  18. pont「橋」は、文脈によってPontife「教皇」やpontus「海」を指している場合がある。fort「強者」は「砦」とも訳せる。
  19. Marquis du Pont : ここでのPontは、ロレーヌ家が世襲する領地のひとつポン=タ=ムソン(Pont-à-Mousson)とされる(Leoni [1982], Lemesurier [2003]etc.)
  20. vires : 古フランス語vireは「矢」(leoni [1982])。ラブレーの用例を引きつつ「軍隊」の意味を示唆する者もいる(Clébert [1982])。他に「櫂」の可能性もある(ibid.)。
  21. 原文eschapees, menees はそれぞれ1650年ライデン版などに基づきéchapés, menés と読んだ。
  22. Ferrare : 1557年版、1568年版の一部、1643年マルセイユ版などを除けば、多くの版でFerrage となっている。この場合、Porto-Ferrajo(=Portoferraio, ポルトフェッラーイオ)とされる(Petey-Girard [2003])
  23. mont Royal : フランス語圏にはMont-Royalや(同じ意味の)Montréalという地名は多い。文脈上、同じ意味のイタリアの地名モンテレアーレ(Montereale)とする説もある(Leoni [1982], Lemesurier [2003])
  24. casane :小作地(Petey-Girard [2003])。俗ラテン語のcasana「岸」(Leoni [1982])。イタリア語のcasaと同語源で「粗末な家」(Clébert [1982])
  25. 初期の版の「伯爵」comteは、後の多くの版で「勘定」compte
  26. Favene : Favientia(現ファエンツァ)もしくはFavienta(現ファイヤンス Fayence)(前者はLeoni [1982], 後者はPetey-Girard [2003])
  27. pesche(pêche)には、「桃」と「釣られた魚、漁業」の意味がある。
  28. 現在のイエール諸島(Îles d'Hyères
  29. 文脈上おかしいので、pied dans estrein pleigeant は「足は保証された鐙にはなく」(pied sans estrein pleigeant; Petey-Girard [2003])、「足は罠の(ように足に挟まった)鐙に」(pied dans estrein piegeant; Lemesurier [2003])などと読まれる。

翻訳に関する情報

編集
  • 底本はLes Prophéties de M. Michel Nostradamus, Antoine du Rosne, Lyon, 6 septembre 1557
    • 明らかな誤植は後の版に基づいて読み替えた。誤植と断言しきれない場合は、原文どおり訳し、注記の形でブランダムールやラメジャラーの読み方を紹介した。
  • 翻訳者はウィキソースユーザーのsumaru。
  • 参考文献の一覧はミシェル・ノストラダムス師の予言集にある。