百姓 ㈠
百姓 ㈠
夕やみのなかにあしおとがして來た。
たれかゞ走つて來た。
ものすごいいきほひで走つて來た。
たれかと思つたら、ついさつき
行きあつた百姓だつた。
百姓は何か急󠄁用ができたのだ、
それで牛車をほつといて走つて來たのだ。
「おゝ、あつた! よかつた!」
彼は私の二、三間むかうで何かを拾つた。
何を拾つたんだらう。
夕やみでよく見えなかつたが、
たしかにそれは肥料びしやくであつた。
「おゝ、あつた! よかつた!」と
息を切らして走つて來た百姓がひろつたのは、
それはいつぽんの肥料びしやくであつた。
この著作物は、1943年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。
この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。