環太平洋戦略的経済連携協定案/第1章(冒頭の規定及び一般的定義)
第A節 冒頭の規定
編集- 第一・一条 自由貿易地域の設定
- 締約国は、千九百九十四年のガット第二十四条及びサービス貿易一般協定第五条の規定に従い、ここに、この協定の規定に基づいて自由貿易地域を設定する。
- 第一・二条 他の協定との関係
- 1 各締約国は、この協定と締約国の現行の国際協定とを共存させるとの締約国の意図を認めつつ、次の権利及び義務を確認する。
- (a)全ての締約国が締結している現行の国際協定(世界貿易機関設立協定を含む。)との関係において、他の締約国に対して当該各締約国が有する現行の権利及び義務
- (b)当該各締約国及び少なくとも一の他の締約国が締結している現行の国際協定との関係において、当該他の締約国に対して当該各締約国が有する現行の権利及び義務
- 2 締約国がこの協定の規定について当該締約国及び少なくとも一の他の締約国が締結している他の協定の2規定と抵触していると認める場合において、当該締約国が要請するときは、当該他の協定を締結している関係する締約国は、相互に満足すべき解決を得るために協議する。この2の規定は、第二十八章(紛争解決)の規定に基づく締約国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない。(注)
- 〈注 この協定の適用上、締約国は、一の協定が物品、サービス、投資又は者に対しこの協定に基づいて与えられる待遇よりも有利な待遇を与えるという事実をもって、この2の規定の意味における抵触が存在することを意味するものではないことに合意する。〉
- 1 各締約国は、この協定と締約国の現行の国際協定とを共存させるとの締約国の意図を認めつつ、次の権利及び義務を確認する。
第B節 一般的定義
編集- 第一・三条 一般的定義
- この協定に別段の定めがある場合を除くほか、この協定の適用上、
- 「ダンピング防止協定」とは、世界貿易機関設立協定附属書一A千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定をいう。
- 「この協定」とは、環太平洋パートナーシップ協定をいう。
- 「APEC」とは、アジア太平洋経済協力をいう。
- 「中央政府」とは、各締約国について附属書一A(締約国別の定義)に定める意味を有する。
- 「委員会」とは、第二十七・一条(環太平洋パートナーシップ委員会の設置)の規定に基づいて設置される環太平洋パートナーシップ委員会をいう。
- 「対象投資財産」とは、一の締約国について、当該一の締約国の領域内の他の締約国の投資家の投資財産であって、この協定がこれらの締約国について効力を生ずる日に存在しているもの又はその後に設立され、取得され、若しくは拡張されるものをいう。
- 「税関当局」とは、関税に関する法令及び適当な場合には関税に関する政策の運用について締約国の法令に基づいて責任を負う権限のある当局をいい、各締約国について附属書一-A(締約国別の定義)に定める意味を有する。
- 「関税」には、産品の輸入に際し、又は産品の輸入に関連して課される税その他あらゆる種類の課徴金並びに産品の輸入に関連して課される付加税及び加重税を含む。ただし、次のものを含まない。
- (a)千九百九十四年のガット第三条2の規定に適合して課される内国税に相当する課徴金
- (b)輸入に関連する手数料その他の課徴金であって、提供された役務の費用に応じるもの
- (c)ダンピング防止税又は相殺関税
- 「関税評価協定」とは、世界貿易機関設立協定附属書一A千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第七条の実施に関する協定をいう。
- 「日」とは、歴日をいう。
- 「企業」とは、営利目的であるかどうかを問わず、また、民間又は政府のいずれが所有し、又は支配しているかを問わず、関係の法令に基づいて設立され、又は組織される事業体(社団、信託、組合、個人企業、合弁企業、団体その他これらに類する組織を含む。)をいう。
- 「現行の」とは、この協定の効力発生の日において効力を有することをいう。
- 「サービス貿易一般協定」とは、世界貿易機関設立協定附属書一Bサービスの貿易に関する一般協定をいう。
- 「千九百九十四年のガット」とは、世界貿易機関設立協定附属書一A千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定をいう。
- 「産品」又は「物品」とは、商品、生産品、製品又は材料をいう。
- 「締約国の産品」又は「締約国の物品」とは、千九百九十四年のガットにおいて了解されている国内産品又は締約国間で合意する産品若しくは物品をいい、締約国の原産品を含む。
- 「政府調達」とは、政府が、政府用の目的のために、物品若しくはサービス又はそれらを組み合わせたものを利用することができるようにする過程又は取得する過程(ただし、商業的販売若しくは商業的再販売又は商業的販売若しくは商業的再販売のための物品若しくはサービスの生産若しくは供給における利用を目的とするものを除く。)をいう。
- 「統一システム」とは、商品の名称及び分類についての統一システム(解釈に関する通則、各部の注釈、各類の注釈及び各号の注釈を含む。)であって、締約国によりそれぞれの国内法令の下で採用され、及び実施されるものをいう。
- 「項」とは、統一システムの関税分類番号の最初の四桁をいう。
- 「措置」には、法令、手続、要求又は慣行を含む。
- 「国民」とは、附属書一-A(締約国別の定義)に定義する「締約国の国籍を有する自然人」又は締約国の永住者をいう。
- 「原産」とは、第三章(原産地規則及び原産地手続)又は第四章(繊維及び繊維製品)に定める原産地規則に従って原産品とされることをいう。
- 「締約国」とは、この協定が効力を有する国又は独立の関税地域をいう。
- 「者」とは、自然人又は企業をいう。
- 「締約国の者」とは、締約国の国民又は企業をいう。
- 「関税上の特恵待遇」とは、附属書二-D(関税に係る約束)の各締約国の関税の撤廃に関する表に従って原産品について適用する関税率をいう。*** 「回収された材料」とは、一又は二以上の個々の部品の形態をとる材料であって、次の作業の結果として得られるものをいう。
- (a)使用済みの産品の個々の部品への分解
- (b)適正な作動状態に改良するために必要な(a)に規定する部品の洗浄、検査、試験その他の加工
- 「再製造品」とは、統一システムの第八四類から第九〇類までの各類又は第九四・〇二項に分類される産品(第八四・一八項、第八五・〇九項、第八五・一〇項、第八五・一六項、第八七・〇三項、第八四一四・7五一号、第八四五〇・一一号、第八四五〇・一二号、第八五〇八・一一号及び第八五一七・一一号に分類される産品を除く。)であって、回収された材料によって完全に又は部分的に構成され、かつ、次の要件を満たすものをいう。
- (a)当該産品が新品である場合と同程度の耐用年数及び同一又は類似の性能を有すること。
- (b)当該産品が新品である場合に付される保証書と類似の保証書が付されていること。
- 「地域政府」とは、各締約国について附属書一-A(締約国別の定義)に定める意味を有する。
- 「セーフガード協定」とは、世界貿易機関設立協定附属書一Aセーフガードに関する協定をいう。
- 「衛生植物検疫措置」とは、衛生植物検疫措置の適用に関する協定附属書Aの1に定義する措置をいう。
- 「補助金及び相殺措置に関する協定」とは、世界貿易機関設立協定附属書一A補助金及び相殺措置に関する協定をいう。
- 「中小企業」とは、零細企業を含む中小企業をいう。
- 「衛生植物検疫措置の適用に関する協定」とは、世界貿易機関設立協定附属書一A衛生植物検疫措置の適用に関する協定をいう。
- 「公的企業」とは、締約国が所有し、又は持分の所有を通じて支配している企業をいう。
- 「号」とは、統一システムの関税分類番号の最初の六桁をいう。
- 「領域」とは、各締約国について附属書一-A(締約国別の定義)に定義する意味を有する。
- 「繊維又は繊維製品」とは、附属書四-A(繊維及び繊維製品の品目別原産地規則)に掲げる産品をいう。
- 「貿易関連知的所有権協定」とは、世界貿易機関設立協定附属書一C知的所有権の貿易関連の側面に関する協定をいう。(注)
- 〈注 貿易関連知的所有権協定には、世界貿易機関設立協定に基づいてWTOの加盟国によって決定される貿易関連知的所有権協定の規定の義務の免除であって締約国間で効力を有するものを含む。〉
- 「WTO」とは、世界貿易機関をいう。
- 「世界貿易機関設立協定」とは、千九百九十四年四月十五日にマラケシュで作成された世界貿易機関を設立するマラケシュ協定をいう。
- この協定に別段の定めがある場合を除くほか、この協定の適用上、