ひとり思ひを枕にかたり。せめて頼みの夢さへも、麻の狭衣うち冴えて、いとど寝られぬ秋の夜の。ふけきぬたの音かときけばな。月ぞ。知らする我が涙。片敷かたしく袖の、千千ちぢに悲しくながめしに、我身わがみの秋はな。さつと妻戸つまど時雨しぐれいやよ。袖の涙の、露の乱れ髪。言ふに言はれぬ我が思ひ。


  • 底本: 今井通郎『生田山田両流 箏唄全解』中、武蔵野書院、1975年。

この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。