独逸国ニ対スル宣戦ノ詔書

天佑ヲ保有シ萬世一系ノ皇祚ヲ踐メル大日本國皇帝ハ忠實勇武ナル汝有衆ニ示ス

朕玆ニ獨逸國ニ對シテ戰ヲ宣ス朕カ陸海軍ハ宜ク力ヲ極メテ戰鬪ノ事ニ從フヘク朕カ百僚有司ハ宜ク職務ニ率循シテ軍國ノ目的ヲ達スルニ勗ムヘシ凡ソ國際條規ノ範圍ニ於テ一切ノ手段ヲ盡シ必ス遺算ナカラムコトヲ期セヨ

朕ハ深ク現時歐洲戰亂ノ殃禍ヲ憂ヒ專ラ局外中立ヲ恪守シ以テ東洋ノ平和ヲ保持スルヲ念トセリ此ノ時ニ方リ獨逸國ノ行動ハ遂ニ朕ノ同盟國タル大不列顚國ヲシテ戰端ヲ開クノ已ムナキニ至ラシメ其ノ租借地タル膠州灣ニ於テモ亦日夜戰備ヲ修メ其ノ艦艇荐ニ東亞ノ海洋ニ出沒シテ帝國及與國ノ通商貿易爲ニ威壓ヲ受ケ極東ノ平和ハ正ニ危殆ニ瀕セリ是ニ於テ朕ノ政府ト大不列顚國皇帝陛下ノ政府トハ相互隔意ナキ協議ヲ遂ケ兩國政府ハ同盟協約ノ豫期セル全般ノ利益ヲ防護スルカ爲必要ナル措置ヲ執ルニ一致シタリ朕ハ此ノ目的ヲ達セムトスルニ當リ尙努メテ平和ノ手段ヲ悉サムコトヲ欲シ先ツ朕ノ政府ヲシテ誠意ヲ以テ獨逸帝國政府ニ勸吿スル所アラシメタリ然レトモ所定ノ期日ニ及フモ朕ノ政府ハ終ニ其ノ應諾ノ囘牒ヲ得ルニ至ラス

朕皇祚ヲ踐テ未タ幾クナラス且今尙皇妣ノ喪ニ居レリ恆ニ平和ニ眷々タルヲ以テシテ而カモ竟ニ戰ヲ宣スルノ已ムヲ得サルニ至ル朕深ク之ヲ憾トス

朕ハ汝有衆ノ忠實勇武ニ倚賴シ速ニ平和ヲ克復シ以テ帝國ノ光榮ヲ宣揚セムコトヲ期ス

御名御璽

大正三年八月二十三日
內閣總理大臣兼
內務大
伯爵 大隈重信
農商務大 子爵 大浦兼武
外務大 男爵 加藤高明
陸軍大 岡市之助
海軍大 八代六郞
大藏大 若槻禮次郞
文部大 法學博士 一木喜德郞
司法大 尾崎行雄
逓信大 武富時敏

この著作物は、日本国の著作権法第10条1項ないし3項により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。(なお、この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により、発行当時においても、著作権の目的となっていませんでした。)


この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。