春秋左氏傳/003 莊公/09

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訓読文

【經】　九年、春、齊人《せいひと》、無知《むち》を殺《ころ》す。公、齊の大夫《たいふ》と蔇《き》に盟《ちか》ふ。夏、公、齊を伐《う》ちて、子糾《しきう》を納《い》る。齊の小白《せうはく》、齊に入《い》る。秋七月丁酉《ていいう》、齊の襄公《じやうこう》を葬《はうむ》る。八月庚申《かうしん》、及齊の師《し》と乾時《かんじ》に戰《たゝか》ふ。我《わ》が師敗績《はいせき》す。九月、齊人、子糾を取《とら》へて之を殺す。冬、洙《しゆ》^[1]を浚《さら》ふ。

【傳】　九年（周ノ莊王十二年）春、雍廩《ようりん》、無知を殺す。
　公、齊の大夫と蔇^[2]に盟ふは、齊に君《きみ》なければなり。
　夏、公、齊を伐ちて、子糾を納る。桓公^[3]莒《きよ》より先《ま》づ入る。秋、（魯ノ）師、齊の師と乾時^[4]に戰ふ。我が師敗績す。公、戎路《じうろ》^[5]を喪《うしな》ひ、傳乘《でんじよう》して歸《かへ》る^[6]。秦子《しんし》・梁子《りやうし》^[7]、公の旗《はた》を以て下道《かだう》に辟《さ》く。是《こゝ》を以て皆《みな》止《とゞ》めらる^[8]。
　鮑叔牙《はうしゆくが》、師を帥《ひき》ゐて、來《きた》り言《い》ひて曰く、『子糾は親《しん》なり。請《こ》ふ君《きみ》之を討《う》て。管仲《くわんちう》^[9]は讎《あだ》なり、請ふ受《う》けて甘心《かんしん》^[10]せん』と。乃《すなは》ち子糾を生竇《せいとう》^[11]に殺す。召忽《せうこつ》、之に死《し》す。管仲、囚《とら》はれんと請ふ。鮑叔《はうしゆく》之を受《う》け、堂阜《だうふ》^[12]に及《およ》びて之を税《と》く^[13]。歸りて以て告《つ》げて曰く、『管夷吾《くわんいご》は高傒《かうけい》よりも治《ち》なり^[14]。相《しやう》たらしめて可《か》なり』と。公^[15]之に從《したが》ふ。

註

1. 洙は水の名。
2. 魯の地。
3. 桓公は即ち小白。
4. 乾時は齊の地。
5. 戎路は兵車。
6. 驛傳に乘りて急ぎて逃げ歸る。
7. 二子は魯君の從者。
8. 齊師を誤らせ、魯君の身に代りて、獲られしなり。
9. 管仲、桓公を射る、故に讐と曰ふ。
10. 甘心とは思ふ存分に之を戮殺せんと欲するをいふ。
11. 魯の地。
12. 堂阜は魯の地。
13. 縛を解く也。
14. 高傒は齊の卿、高敬仲なり。管仲は高傒よりも治國の才に富めり。
15. 公は齊の桓公小白。