「拾遺和歌集/巻第十四」の版間の差分

巻十四：恋四

 

00849

 

あさねかみ－われはけつらし－うつくしき－ひとのたまくら－ふれてしものを

 

00850

 

ときのまも－こころはそらに－なるものを－いかてすくしし－むかしなるらむ

 

00851

 

しらなみの－うちしきりつつ－こよひさへ－いかてかひとり－ぬるとかやきみ

 

00852

 

いかにして－けふをくらさむ－こゆるきの－いそきいてても－かひなかりけり

 

00853

 

みなといりの－あしわけをふね－さはりおほみ－わかおもふひとに－あはぬころかな

 

00854

 

いはしろの－のなかにたてる－むすひまつ－こころもとけす－むかしおもへは

 

00855

 

わかやとは－はりまかたにも－あらなくに－あかしもはてて－ひとのゆくらむ

 

00856

 

なみまより－みゆるこしまの－はまひさき－ひさしくなりぬ－きみにあはすて

 

00857

 

ますかかみ－てにとりもちて－あさなあさな－みれともきみに－あくときそなき

 

00858

 

みなひとの－かさにぬふてふ－ありますけ－ありてののちも－あはむとそおもふ

 

00859

 

いかほのや－いかほのぬまの－いかにして－こひしきひとを－いまひとめみむ

 

00860

 

たまかはに－さらすてつくり－さらさらに－むかしのひとの－こひしきやなそ

 

00861

 

みははやく－ならのみやこに－なりにしを－こひしきことの－ふりせさるらむ

 

00862

 

いそのかみ－ふりにしこひの－かみさひて－たたるにわれは－ねきそかねつる

 

00863

 

いかはかり－くるしきものそ－かつらきの－くめちのはしの－なかのたえまは

 

00864

 

かきりなく－おもひなからの－はしはしら－おもひなからに－なかやたえなむ

 

00865

 

なかなかに－いひもはなたて－しなのなる－きそちのはしの－かけたるやなそ

 

00866

 

すきたてる－やとをそひとは－たつねける－こころのまつは－かひなかりけり

 

00867

 

いそのかみ－ふるのやしろの－ゆふたすき－かけてのみやは－こひむとおもひし

 

00868

 

われやうき－ひとやつらきと－ちはやふる－かみてふかみに－とひみてしかな

 

00869

 

すみよしの－あらひとかみに－ちかひても－わするるきみか－こころとそきく

 

00870

 

わすらるる－みをはおもはす－ちかひてし－ひとのいのちの－をしくもあるかな

 

00871

 

なにせむに－いのちをかけて－ちかひけむ－いかはやとおもふ－をりもありけり

 

00872

 

ちりひちの－かすにもあらぬ－われゆゑに－おもひわふらむ－いもかかなしさ

 

00873

 

こひこひて－のちもあはむと－なくさむる－こころしなくは－いのちあらめや

 

00874

 

かくはかり－こひしきものと－しらませは－よそにみるへく－ありけるものを

 

00875

 

なみたかは－のとかにたにも－なかれなむ－こひしきひとの－かけやみゆると

 

00876

 

なみたかは－おつるみなかみ－はやけれは－せきそかねつる－そてのしからみ

 

00877

 

なみたかは－そてのみくつと－なりはてて－こひしきせせに－なかれこそすれ

 

00878

 

ひとしれす－おつるなみたの－つもりつつ－かすかくはかり－なりにけるかな

 

00879

 

かつみつつ－かけはなれゆく－みつのおもに－かくかすならぬ－みをいかにせむ

 

00880

 

さをしかの－つめたにひちぬ－やまかはの－あさましきまて－とはぬきみかな

 

00881

 

あさましや－このしたかけの－いはしみつ－いくそのひとの－かけをみつらむ

 

00882

 

ゆくみつの－あわならはこそ－きえかへり－ひとのふちせを－なかれてもみめ

 

00883

 

つのくにの－ほりえのふかく－おもふとも－われはなにはの－なにとたにみす

 

00884

 

つのくにの－いくたのいけの－いくたひか－つらきこころを－われにみすらむ

 

00885

 

つのくにの－なにはわたりに－つくるなる－こやといはなむ－ゆきてみるへく

 

00886

 

たひひとの－かやかりおほひ－つくるてふ－まろやはひとを－おもひわするる

 

00887

 

なにはひと－あしひたくやは－すすたれと－おのかつまこそ－とこめつらなれ

 

00888

 

すみよしの－きしにおひたる－わすれくさ－みすやあらまし－こひはしぬとも

 

00889

 

やほかゆく－はまのまさこと－わかこひと－いつれまされり－おきつしまもり

 

00890

 

さしなから－ひとのこころを－みくまのの－うらのはまゆふ－いくへなるらむ

 

00891

 

よのひとの－およはぬものは－ふしのねの－くもゐにたかき－おもひなりけり

 

00892

 

わかこひの－あらはにみゆる－ものならは－みやこのふしと－いはれなましを

 

00893

 

あしねはふ－うきはうへこそ－つれなけれ－したはえならす－おもふこころを

 

00894

 

ねぬなはの－くるしかるらむ－ひとよりも－われそますたの－いけるかひなき

 

00895

 

たらちねの－おやのかふこの－まゆこもり－いふせくもあるか－いもにあはすて

 

00896

 

いさやまた－こひてふことも－しらなくに－こやそなるらむ－いこそねられね

 

00897

 

たらちねの－おやのいさめし－うたたねは－おもおもふときの－わさにそありける

 

00898

 

うちとなく－なれもしなまし－たまたれの－たれとしつきを－へたてそめけむ

 

00899

 

うかりける－ふしをはすてて－しらいとの－いまくるひとと－おもひなさなむ

 

00900

 

おもふとて－いとこそひとに－なれさらめ－しかならひてそ－みねはこひしき

 

00901

 

たまくらの－すきまのかせも－さむかりき－みはならはしの－ものにそありける

 

00902

 

ふくかせに－くものはたては－ととむとも－いかかたのまむ－ひとのこころは

 

00903

 

わかくさに－ととめもあへぬ－こまよりも－なつけわひぬる－ひとのこころか

 

00904

 

あふことの－かたかひしたる－みちのくの－こまほしくのみ－おもほゆるかな

 

00905

 

みちのくの－あたちのはらの－しらまゆみ－こころこはくも－みゆるきみかな

 

00906

 

としつきの－ゆくらむかたも－おもほえす－あきのはつかに－ひとのみゆれは

 

00907

 

おもひきや－あひみぬほとの－としつきを－かそふはかりに－ならむものとは

 

00908

 

はるかなる－ほとにもかよふ－こころかな－さりとてひとの－しらぬものゆゑ

 

00909

 

くもゐなる－ひとをはるかに－おもふには－わかこころさへ－そらにこそなれ

 

00910

 

よそにありて－くもゐにみゆる－いもかいへに－はやくいたらむ－あゆめくろこま

 

00911

 

わかかへる－みちのくろこま－こころあらは－きみはこすとも－おのれいななけ

 

00912

 

なけきつつ－ひとりぬるよの－あくるまは－いかにひさしき－ものとかはしる

 

00913

 

なけきこる－ひといるやまの－をののえの－ほとほとしくも－なりにけるかな

 

00914

 

ひとにたに－しらせていりし－おくやまに－こひしさいかて－たつねきつらむ

 

00915

 

かけたえて－おほつかなさの－ますかかみ－みすはわかみの－うさもしられし

 

00916

 

おもひます－ひとしなけれは－ますかかみ－うつれるかけと－ねをのみそなく

 

00917

 

わかそての－ぬるるをひとの－とかめすは－ねをたにやすく－なくへきものを

 

00918

 

かすならぬ－みはたたにたに－おもほえて－いかにせよとか－なかめらるらむ

 

00919

 

ゆめにさへ－ひとのつれなく－みえつれは－ねてもさめても－ものをこそおもへ

 

00920

 

みるゆめの－うつつになるは－よのつねそ－うつつのゆめに－なるそかなしき

 

00921

 

あふことは－ゆめのうちにも－うれしくて－ねさめのこひそ－わひしかりける

 

00922

 

わすれしよ－ゆめとちきりし－ことのはは－うつつにつらき－こころなりけり

 

00923

 

あたらしと－なににいのちを－おもひけむ－わすれはふるく－なりぬへきみを

 

00924