「古今和歌集/巻一」の版間の差分

巻一：春上

 

00001

 

としのうちに－はるはきにけり－ひととせを－こそとやいはむ－ことしとやいはむ

 

00002

 

そてひちて－むすひしみつの－こほれるを－はるたつけふの－かせやとくらむ

 

00003

 

はるかすみ－たてるやいつこ－みよしのの－よしののやまに－ゆきはふりつつ

 

00004

 

ゆきのうちに－はるはきにけり－うくひすの－こほれるなみた－いまやとくらむ

 

00005

 

うめかえに－きゐるうくひす－はるかけて－なけともいまた－ゆきはふりつつ

 

00006

 

はるたては－はなとやみらむ－しらゆきの－かかれるえたに－うくひすそなく

 

00007

 

こころさし－ふかくそめてし－をりけれは－きえあへぬゆきの－はなとみゆらむ

 

00008

 

はるのひの－ひかりにあたる－われなれと－かしらのゆきと－なるそわひしき

 

00009

 

かすみたち－このめもはるの－ゆきふれは－はななきさとも－はなそちりける

 

00010

 

はるやとき－はなやおそきと－ききわかむ－うくひすたにも－なかすもあるかな

 

00011

 

はるきぬと－ひとはいへとも－うくひすの－なかぬかきりは－あらしとそおもふ

 

00012

 

たにかせに－とくるこほりの－ひまことに－うちいつるなみや－はるのはつはな

 

00013

 

はなのかを－かせのたよりに－たくへてそ－うくひすさそふ－しるへにはやる

 

00014

 

うくひすの－たによりいつる－こゑなくは－はるくることを－たれかしらまし

 

00015

 

はるたてと－はなもにほはぬ－やまさとは－ものうかるねに－うくひすそなく

 

00016

 

のへちかく－いへゐしせれは－うくひすの－なくなるこゑは－あさなあさなきく

 

00017

 

かすかのは－けふはなやきそ－わかくさの－つまもこもれり－われもこもれり

 

00018

 

かすかのの－とふひののもり－いててみよ－いまいくかありて－わかなつみてむ

 

00019

 

みやまには－まつのゆきたに－きえなくに－みやこはのへの－わかなつみけり

 

00020

 

あつさゆみ－おしてはるさめ－けふふりぬ－あすさへふらは－わかなつみてむ

 

00021

 

きみかため－はるののにいてて－わかなつむ－わかころもてに－ゆきはふりつつ

 

00022

 

かすかのの－わかなつみにや－しろたへの－そてふりはへて－ひとのゆくらむ

 

00023

 

はるのきる－かすみのころも－ぬきをうすみ－やまかせにこそ－みたるへらなれ

 

00024

 

ときはなる－まつのみとりも－はるくれは－いまひとしほの－いろまさりけり

 

00025

 

わかせこか－ころもはるさめ－ふることに－のへのみとりそ－いろまさりける

 

00026

 

あをやきの－いとよりかくる－はるしもそ－みたれてはなの－ほころひにける

 

00027

 

あさみとり－いとよりかけて－しらつゆを－たまにもぬける－はるのやなきか

 

00028

 

ももちとり－さへつるはるは－ものことに－あらたまれとも－われそふりゆく

 

00029

 

をちこちの－たつきもしらぬ－やまなかに－おほつかなくも－よふことりかな

 

00030

 

はるくれは－かりかへるなり－しらくもの－みちゆきふりに－ことやつてまし

 

00031

 

はるかすみ－たつをみすてて－ゆくかりは－はななきさとに－すみやならへる

 

00032

 

をりつれは－そてこそにほへ－うめのはな－ありとやここに－うくひすのなく

 

00033

 

いろよりも－かこそあはれと－おもほゆれ－たかそてふれし－やとのうめそも

 

00034

 

やとちかく－うめのはなうゑし－あちきなく－まつひとのかに－あやまたれけり

 

00035

 

うめのはな－たちよるはかり－ありしより－ひとのとかむる－かにそしみぬる

 

00036

 

うくひすの－かさにぬふといふ－うめのはな－をりてかささむ－おいかくるやと

 

00037

 

よそにのみ－あはれとそみし－うめのはな－あかぬいろかは－をりてなりけり

 

00038

 

きみならて－たれにかみせむ－うめのはな－いろをもかをも－しるひとそしる

 

00039

 

うめのはな－にほふはるへは－くらふやま－やみにこゆれと－しるくそありける

 

00040

 

つきよには－それともみえす－うめのはな－かをたつねてそ－しるへかりける

 

00041

 

はるのよの－やみはあやなし－うめのはな－いろこそみえね－かやはかくるる

 

00042

 

ひとはいさ－こころもしらす－ふるさとは－はなそむかしの－かににほひける

 

00043

 

はることに－なかるるかはを－はなとみて－をられぬみつに－そてやぬれなむ

 

00044

 

としをへて－はなのかかみと－なるみつは－ちりかかるをや－くもるといふらむ

 

00045

 

くるとあくと－めかれぬものを－うめのはな－いつのひとまに－うつろひぬらむ

 

00046

 

うめかかを－そてにうつして－ととめては－はるはすくとも－かたみならまし

 

00047

 

ちるとみて－あるへきものを－うめのはな－うたてにほひの－そてにとまれる

 

00048

 

ちりぬとも－かをたにのこせ－うめのはな－こひしきときの－おもひいてにせむ

 

00049

 

ことしより－はるしりそむる－さくらはな－ちるといふことは－ならはさらなむ

 

00050

 

やまたかみ－ひともすさへぬ－さくらはな－いたくなわひそ－われみはやさむ

 

00051

 

やまさくら－わかみにくれは－はるかすみ－みねにもをにも－たちかくしつつ

 

00052

 

としふれは－よはひはおいぬ－しかはあれと－はなをしみれは－ものおもひもなし

 

00053

 

よのなかに－たえてさくらの－なかりせは－はるのこころは－のとけからまし

 

00054

 

いしはしる－たきなくもかな－さくらはな－たをりてもこむ－みぬひとのため

 

00055

 

みてのみや－ひとにかたらむ－さくらはな－てことにをりて－いへつとにせむ

 

00056

 

みわたせは－やなきさくらを－こきませて－みやこそはるの－にしきなりける

 

00057

 

いろもかも－おなしむかしに－さくらめと－としふるひとそ－あらたまりける

 

00058

 

たれしかも－とめてをりつる－はるかすみ－たちかくすらむ－やまのさくらを

 

00059

 

さくらはな－さきにけらしな－あしひきの－やまのかひより－みゆるしらくも

 

00060

 

みよしのの－やまへにさける－さくらはな－ゆきかとのみそ－あやまたれける

 

00061

 

さくらはな－はるくははれる－としたにも－ひとのこころに－あかれやはせぬ

 

00062

 

あたなりと－なにこそたてれ－さくらはな－としにまれなる－ひともまちけり

 

00063

 

けふこすは－あすはゆきとそ－ふりなまし－きえすはありとも－はなとみましや

 

00064

 

ちりぬれは－こふれとしるし－なきものを－けふこそさくら－をらはをりてめ

 

00065

 

をりとらは－をしけにもあるか－さくらはな－いさやとかりて－ちるまてはみむ

 

00066

 

さくらいろに－ころもはふかく－そめてきむ－はなのちりなむ－のちのかたみに

 

00067

 

わかやとの－はなみかてらに－くるひとは－ちりなむのちそ－こひしかるへき

 

00068